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第5章:3人の思い出

ホテルの部屋に入ると、晶子はすぐに振り返って言った。

「しっちゃん、ちょっとの間だけ部屋を空けてくれる?

日本って、なんでこんなに花粉が多いの! シャワー浴びたいの」


「じゃあ、デッキでタバコでも吸ってくるよ」


「しっちゃん、タバコ吸っているの。今日だけは許してあげる、

これからは禁煙を覚悟してね」


彼女はそう言って、軽く笑った。

その笑顔に、どこか懐かしさと、少しの照れが混じっていた。


滋昭はホテルのデッキに出て、宝塚の街並みを

見下ろした。

夕暮れの光が街を柔らかく包み、遠くの山々が

静かに影を落としている。

夕暮れの街並みに、記憶の断片がそっと重なっていった。


ミッチは、中学の時から明るくて、強くて、

いつもみんなの中心にいた。

そんな彼女に惹かれていた。


シュートが病でなくなる時、ミッチを託された。


彼女は何事もなかったように、振る舞っていたが、

彼女の心の中にはシュートが生きている事は

確かだった。


本気で彼女の心に踏み込めば、シュートの代わりに

なれただろうか?

いや、彼女やシュートの思い出を踏みにじってまで、

自分の想いをとげる事は自分自身許せなかった。

だから、そばで見守ることを決心した。


のりっぺは、まっすぐで、不器用だった。

言葉よりも行動で気持ちを伝えるタイプで、

時にそれが空回りしていたけれど、

そこが彼女らしかった。


告白されたとき、僕は何も言えなかった。

ミッチが好きだったから。

高校時代はマネージャーとして、支えてくれた。

彼女の気持ちに気づかないふりをしていたかも

しれない。


アッコに嫉妬していじめていた事は、全ての意味で

僕のせいだった。

今日、ラジオから流れてきた彼女の話をアッコと二人で聞いた。

アッコと幸せになる事が、のりっぺの想いに答える事と。


そして、アッコ。

アルバム委員に選ばれたとき、彼女の名前を聞いて、

正直気が重かった。クールで近寄りがたい印象が

あったし、ミッチやのりっぺのようなタイプとは

まったく違うと思っていたからだ。


でも、実際に話してみると、

彼女はクールなんかじゃなかった。

ただ、少しおとなしくて、でも時折見せる素直な一面が、

心を和ませた。


何よりも印象的だったのは、彼女の瞳だった。

瞳の表情が豊かで、まっすぐで、どこか透明で、

見つめられると心が自然に開いていくような気がした。

ミッチを忘れるほど惹かれて行った。


ある日、その瞳がふと虚ろになった。

あんなに仲の良かったのりっぺと、

うまくいっていないようだった。いじめられていた。

残り少ない高校生活。

彼女を守るため、彼女との距離を、

少しずつ置くことを約束した。

彼女は、何が起きたのかわからなかったのだろう。

ただ、じっと僕を見つめるだけだった。


それ以来、今日までずっと会えなかった。

でも今、ようやく取り戻せる事ができた。


今、隣にはアッコがいる。

あの頃の少女ではなく、時を経て、大人びた彼女が。

これから失っていた時間を取り戻していく。

アッコと二人で。

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