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守銭奴無自覚ブラコン妹と盲目ヤンデレいじめっ子皇女に好かれる極悪中ボスの話  作者: 溝上 良
最終章

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第75話 邂逅











 パトリシアとスイセンが去って、一人になってからプレイヤーが尋ねてきた。


『どうして? 以前から思っていたけど、君ってオオトリに対する興味ってほとんどなかったような……』


 まあな。ぶっちゃけ、どうでもいい存在というか、そもそも眼中にない存在だったな。

 そいつが幸せになろうが不幸になろうが、まったく興味がわかない。

 今後もこちらからかかわることは、一生なかったと思う。


『え、じゃあなんで……?』

「それはわたくしの方から説明しますわ!」


 バーン! とやかましく扉を開いて部屋に飛び込んできた女。

 つい先ほど部屋に入ってきたパトリシアとはまったく騒々しさが異なる。

 そして、これが俺の血縁である。終わりだよ……。

 飛び込んできた女を把握して、プレイヤーは嫌そうに声を漏らした。


『うわっ、ダイアナ……』

「なんでそんな露骨に嫌そうな声を出しますの……?」


 愕然とする実妹、ダイアナ・ホーエンガンプ。

 相変わらず手入れが大変そうなふわふわの黒髪を揺らしている。

 まあ、自分で手入れするより、使用人にやらせていることの方が多いんだけど。

 理解できないといった顔をしているので、俺が優しく教えてやる。


「そりゃお前……分かるだろ?」

「訳の分からない生命体に嫌われるようなこと、分かりませんわ……」


 ……まあ、それはそう。

 結局、このプレイヤーを名乗る存在が何なのか、さっぱり分からん。

 と言っても、理解もしたくないんだけどな。

 早く死んでほしいだけ。


『それで、理由って?』


 プレイヤーに問われて、ダイアナは困った顔を見せる。

 面白いぞ、その顔。


「いや、それが……わたくしの元に、やたらとそのオオトリとかいうへんてこ男から接触を図る動きが来ていまして……」

『接触?』

「手紙や使者はまだしも、さすがに直接来られるとわたくしもキモイですわ……」


 はあ、と深いため息をはくダイアナ。

 凄いよな、オオトリって。

 そこまでダイアナに迫った男、いないぞ?

 あのホーエンガンプ家の娘で、相当に悪名高いし。

 よくもまあ直接会いに行くことができたものだ。怖いものなしか?


『ち、ちなみに、どういう用件なの?』

「途中から面倒くさすぎて見ないようにしていましたが、なんか自分のものになれとか、お兄さまを一緒に殺そうとか、そんなのばかりでしたわ。きついですわ……」

『えぇ……?』


 唖然とした様子のプレイヤー。

 ちなみに、俺はそんなに。

 殺すとか言われるの、日常茶飯事だし。

 さすがに最近は減ったけどな。それ言ったやつ、だいたい殺したから。


『そ、その誘いには乗らなかったんだね?』

「もちろんですわ! 理由もないのにお兄さまを殺すはずありませんわ!」

『理由があったら殺すの……?』


 こいつはやるぞ。

 兄である俺が太鼓判を押してやる。


「それに、あなたは分かっていないかもしれませんが、お兄さまが生み出すお金はそれはもう凄いのですわ。お金を見てゲヘゲヘしたいわたくしとしては、絶対に殺しませんわ!」

『そうだ……。度が過ぎた守銭奴だった、この人……』


 スリスリと俺の腕に抱き着いてほおずりをするダイアナ。

 柔らかく温かな感触が伝わってくるが、こいつの場合は女という武器を利用しようとしているわけではない。

 そんなに賢くないし、そういうのは面倒くさいからしたくないと思っている。

 単純に、俺を通して大量のお金を見て、それにほおずりしているだけだ。怖すぎる。


「しかし、どうしてまたこいつに言い寄るんだ……?」

「それはもう、わたくしのこの美しさが!」


 資金距離でキラキラとした目を向けてくるダイアナ。

 ……まあ、確かに見た目は良い。

 母が母だからな。その遺伝だろう。

 父? 知りませんなぁ……。


「見た目以外カスだぞ、こいつ……」

「お兄さま……?」


 愕然とするダイアナ。

 お前の内面は本当にドクズだぞ。俺が引くくらい。


「あと、ちょくちょくいやがらせをされてるんだよな。オオトリの影響を受けたバカ貴族や商人から。いい加減鬱陶しいから、潰すことにした」

「わたくしのことは!?」

「てめえで何とかしろ」


 グイグイとアピールしてくるダイアナの顔面を手で鷲掴みにし、押しのける。

 ふぎゃーっと悲鳴を上げているが知らん。

 そう、オオトリはどうにもこざかしいというか、自分から表立って明確に敵対して攻撃を仕掛けてくるようなことはしていない。

 代わりに、自分が誑し込んだ奴を俺に敵対させ、攻撃させている。

 もちろん、その誑し込まれた奴も本気で潰しにかかられたら困るから、いやがらせ程度のものだ。

 ただ、うっとうしい。だから殺すのだ。


「ということで、オオトリを殺す」

『……原作主人公って、そんなことしてたっけ……?』


 あまりにも陰湿な行為をするため、プレイヤーは困惑しているようだった。

 こいつの知っているオオトリと、今のオオトリって違うのか……?

 まあ、殺すけど。











(ついに……ついにこの時が来た……!)


 嬉々として顔を輝かせながら歩くのは、整った顔立ちのセイヤ・オオトリだった。

 彼が喜び勇んで歩いている理由は、その場所から推察できるだろう。

 ここは、王城……ではないが、それをかなりミニマム化した立派な邸宅であった。

 貴族や大商人なら住むことができそうだが、今回オオトリが目的としている人は……彼を招いた人は、その程度の人間ではない。


(ようやく、パトリシア王女からお誘いをいただいた!)


 そう、オオトリを呼んだのは、あの王女パトリシア・レッドフォードである。

 盲目の王女だが、その見目はとても美しい。

 加えて、聡明で雰囲気も柔らかく、お近づきになりたい存在だ。

 そんな彼女は、なぜかあの悍ましい殺戮皇と親しくしていて、よく歯噛みしたものだったが……。

 ついに報われるときが来たのだ。


「オオトリ殿、お待ちしておりました。こちらへ」

「はい!」


 確か、王女の側近であるスイセンという女に案内される。

 そこは、王城の謁見の間ほど立派なものではないが、客人をもてなすための応接間であった。

 その部屋にいたのは、オオトリが求めていた人だった。


「殿下!!」

「相変わらずお元気ですね」


 振り返ってオオトリと正対するのは、パトリシア王女その人だった。

 喜びのためどうしても声が大きくなる彼に比べ、パトリシアのそれはひどく小さく、そして冷たかった。


「今回はご足労いただいて申し訳ありません」

「いえ、とんでもない。殿下のためなら、僕はどこまでも行きます!」

「それは嬉しいですね」


 本当にそう思っているのか怪しくなるほど空虚な声音だったが、興奮しているオオトリは気づかない。


「それで、どういった用件でしょうか? 僕が警告していた、ディオニソス・ホーエンガンプのことでしょうか?」

「はい、そうですね」

「ようやくお分かりいただけましたか。あの悍ましい、人の形をした悪魔。やることなすこと残虐で、蛮族そのものです。あれが貴族ということが恐ろしい。僕のような正義の味方が、倒さないといけない存在です」


 パトリシアが同意してくれたため、饒舌に話してしまう。

 憎い男のことを同じく嫌ってくれる人がいれば、悪口に拍車がかかるのも仕方のないことだった。


「そんな魔の手から、殿下やあいつの妹を救いたい。その一心で、ここまで来たんです!」

「そうですか」


 オオトリの言葉を受けて、静かにパトリシアは口を開いた。


「――――――正直、不快ですね」

「え……?」


 不快……? どういう意味だ……?

 理解できなかったオオトリは、目を白黒とさせる。

 そんな彼のことを差し置き、パトリシアはスイセンに話しかける。


「私は目が見えませんが、それでよかったと久方ぶりに思いました。見えていたら、物でも投げつけていたかもしれません。スイセンはどうですか?」

「……気分はよくありません」

「そうですか。その言葉を聞けば、なおさらですね」

「え、え……? 殿下……? あ、あの……」


 想定していなかった反応に、オオトリははっきりと狼狽える。

 助けを求めるようにフラフラと手を伸ばすが、パトリシアはそれを拒絶するように言葉を発する。


「ああ、申し訳ありません。こちらが呼んだのですから、できる限り我慢しようと思っていたのですが……。少々その汚い声を聴くのもしんどくなってきました。ですので、お願いしますね?」


 そして、彼女はその男の名を呼んだ。


「――――――ディオニソス様」

「おう、ありがとな」

「なっ……!?」


 のそりと部屋に入ってきたのは、オオトリが最も嫌悪し、見たくない男だった。


「よう、セイヤ・オオトリ。お前の望んでいた男が、目の前に来たぞ?」


 殺戮皇ディオニソス・ホーエンガンプ。

 その男が、好戦的な笑みを浮かべて入ってきたのだった。



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下記のURLや書影から飛べるので、ぜひご覧ください。


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第11話

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『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第8話

https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1007531


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第7話

https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1013137

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