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守銭奴無自覚ブラコン妹と盲目ヤンデレいじめっ子皇女に好かれる極悪中ボスの話  作者: 溝上 良
最終章

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第74話 殺す

 










 ひっじょーに……ひっじょおおに不服ではあるが、俺の姿は王都にあった。

 絶対に戻りたくないし、そもそも戻るつもりもなかったのだが、どうしても俺の目的を達成するにはここに来る必要があった。

 そのため、実はコッソリと侵入したわけだが……案の定パトリシアには悟られてしまった。

 あいつ、目が見えないくせに並の奴らよりはるかに情報を収集できているのはどういう了見なんだ? おかしいだろ。

 そして、当の本人であるパトリシアはこの場にいない。

 準備がどうとか言っていたが、意味が分からん。さっさと解放しろや。

 それで、パトリシアに変わって俺の対応をしているのが、側近であるスイセンである。

 相変わらず乳と態度がでかい奴で、そのでかさのまま大上段から言ってくる。


「ディオニソス様。これ以上、殿下にお近づきにならないでください」


 鋭く俺を睨むのは、今までよこしまな考えでパトリシアに近づく奴が多かったからだろう。

 盲目ということで、どうしても弱者に見えてしまう。

 そんな弱者が、王族という高い地位にいて、しかも見た目も悪くないとなれば、ろくでもない奴らが近づいてくるのも不思議ではない。

 そういうのを跳ねのけてきたのがスイセンである。

 こいつから見たら、俺もそういう風に見えているようだ。節穴だ。

 あまりにも強烈な侮辱に殺してやろうかとも思ったが、ふと冷静にこいつの言葉を考えると、俺はにっこり笑顔になった。


「望むところだ。俺たちの利害は一致しているな!」

「え……?」


 ぽかんと口を開いて俺を見るスイセン。

 しかし、俺は感動していた。

 ここ最近、ようやく俺の支援をしてくれる奴らが現れたのだ。

 王女パトリシアの妹であるニューイリス・レッドフォード。

 王女パトリシアの唯一の側近であるスイセン。

 この二人が、なんと俺からパトリシアを引きはがそうとしてくれているのである。

 なんということだ……。世の中なんてクソだと思っていたが、どうやら光は存在していたらしい。


「お前は俺をパトリシアに近づけたくない。俺はパトリシアに近づきたくない。完璧だ……。一緒に頑張ろう、スイセン!」

「えっと……あれ?」


 ぐっと力強く拳を握ってアピールすれば、汗を垂らしながら狼狽するスイセン。

 どうした。俺たちはすでに鉄の同盟を結んだ。

 今更破棄することはできんぞ。

 しようとしたら殺す。


「あの……そこは抵抗して、私を押しのけてでも殿下に近づこうとするものでは……?」

「お前は今までいったい何を見てきたんだ……? 俺が心から望んでパトリシアの傍にいたことがあったのか……?」


 俺が問いかければ、過去を思い返すように天井を見上げて……ハッとしたようにこっちを見た。


「…………な、ない!」

「そういうことだ。だから、俺は今日帰るな。お前に追い出されたってことにしたら、俺に咎はないだろ。ということで、後は任せた。じゃ」


 シュタッと手を挙げてクールに去ろうとする俺。

 確かに用はあるからここにいるが、できる限りパトリシアには会いたくないのだ。キモイから。

 それならこのスイセンをメッセンジャーに使っても良いと思う。

 ちょうどよかったわ。やったぜ。

 そんな俺に縋り付いて引き留めてくるスイセン。

 おい、さっきまでの塩対応はどうした。

 振られる女が必死に男に食らいついているように見えるぞ。

 まあ、俺たちにそんな甘い空気はまったくなく、ただひたすらに保身しかないわけだが。


「待ってください。私が怒られるじゃないですか」

「今契約しただろ。それくらい頑張れ。じゃ」

「ふぎぎぎぎぎぎぎ! 力、つよ……ッ!?」


 すんごい顔をしながら俺を引き留めようとしているが、力の差が歴然だ。

 確かにスイセンも優れた騎士で王女の護衛を任されるにふさわしい実力を持っているが、俺には遠く及ばない。

 そもそも、ほとんど毎日前線で戦って人を殺しまくっている俺に、敵うわけがなかった。

 ズルズルとスイセンを引きずりながら歩く。


『スイセンってこんな面白キャラだったっけ……? パトリシアが死んだときに後を追って殉死するような、凄くきりっとしたキャラだったのに……』


 パトリシアって大概死んでるんじゃなかったか?

 じゃあ、スイセンの死ぬ確率ってかなり高かったんだな。

 そんなことを考えていた時だった。

 ガチャリと扉を開けて入ってきたのは、盲目の王女パトリシアであった。

 目が見えないはずなのに、こいつは的確に自分の周りで何が起こっているのかを把握している。

 俺たちにうっすらと笑みを浮かべて問いかけてきた。


「何をされているのですか?」

「ああ。ちょうど今、スイセンに追い出されることになったんだ。というわけで、もう二度とお前と会うことはできん。悪いな。でも、全部スイセンのせいだから」

「そうですか。では、スイセン。私の魔法の実験台になるか、私を全力で応援してディオニソス様に近づけるか、どっちが良いですか?」


 スイセンは俺から手を離し、スッと立ち上がるとさらっと口を開いた。


「私は殿下の側近。殿下の考えることを実行することこそが使命。当然、全力で応援します」

「嬉しいですね」

『すっごい手のひら返し』


 そうだよな。契約破棄だよな。

 あとで何とかしてスイセンを殺さなきゃ……。

 まあ、こいつの魔法の実験台なんて、9割9分死ぬしな……。


『……え? パトリシアって、そんな危険な魔法、使えたっけ?』


 お前、知らないの?

 こいつの魔法、マジで凶悪だぞ。俺が言うんだから、相当なものだ。

 だから、護衛がスイセン一人しかいないんだよ。

 まあ、盲目ということで他の王族から良い感情を向けられていないというのもあるが……。

 やはり、身体のハンデを抱えていると、政略結婚とかも難しいようだ。

 本来なら国や王族の立場を確保するために、他国の王族や国内の大貴族とかと結婚させるのだろうが、それができないから軽んじられる。

 だから、護衛も少ないのだろうが……。

 それ以上に、こいつ自身が強すぎて、護衛なんていらないから、こんな少人数で王族が行動しているんだよ。


『なん、だと……?』

「よかったですね、ディオニソス様。私の夫になれば、なんとスイセンまでついてきますよ。見ての通り、とんでもなく下品なおっぱいも持っています」

「ッ!?」


 何やら知らないうちに話がついたようで、パトリシアがそんなことを言ってくる。

 スイセンの胸をベチンと叩きながら。

 お前、何してんの……?

 パトリシアの言う通り大きく実ったそれは柔らかそうに揺れるが……。


「いや、いらない……」

「それは普通に腹立たしいのですが……」


 だってお前……。

 一時の快楽を得るために、パトリシアとスイセンが呪いの装備としてついてくるんだろ?

 地獄だろ……。わりに合わないわ……。


「ところで、あの計画のことですが……」


 パトリシアが気を取り直すように言ってくる。

 計画というのは、ここに用があるといっていた要因そのものだ。

 パトリシアは窺うようにこちらに顔を向けてくる。


「そろそろでよろしいですか?」

「ああ、いいぞ。そろそろ鬱陶しいと思っていたんだ」


 首を傾げているスイセンと、その時は脳内でクソみたいないびきをかいてくれていたプレイヤーが不思議そうにしているので、改めて口にする。


「セイヤ・オオトリを殺す」

『えぇっ!?』



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下記のURLや書影から飛べるので、ぜひご覧ください。


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第11話

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『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第8話

https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1007531


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第7話

https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1013137

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