第66話 紹介のやり方がキモイ
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プレイヤーの不快な声が、頭の中でキンキンと響く。
マジでうるせえ! ぶっ殺すぞ!
『母上!? 嘘でしょ!? こんなに若いなんてことがあるの!?』
俺の怒りも完全に無視して、プレイヤーが大はしゃぎしている。
人の母親を性的な目で見てんじゃねえよ、殺すぞ。
『あ、それは大丈夫。僕の対象にはならないから。女はクソ』
だから、たまに訳の分からない闇を見せてくるのは止めろや。
何なんだ、こいつの女に対するやたらと高いヘイトは……。
まあ、俺のことを救いたいとか訳の分からないことを言っている時点で、まともじゃないことは分かっているんだが。
……そもそも、こいつの生態が謎だった。本当、何なんだこいつは。
「おかえりなさい、ディオニソス、ダイアナ。あなたたちのことが心配で、ずっと待っていましたよ」
ニコニコと笑って俺たちを出迎えるのは、俺たちの実母である、ユーフィリア・ホーエンガンプである。
空よりも青い色のサラサラの髪は長い。手入れは大変だと言っていた。
ダイアナもそうだが、じゃあなんで短くしないんだと言えば、大ひんしゅくを買った。もう二度と言わない。
今も楽しそうに笑っているからだろうが、整った顔立ちは柔和な性格の印象を与える。
結構笑っていることが多いからだろうか、プレイヤーが若く見えるというのもうなずける。
『あと、おっぱいもでかいね!』
お前マジで死ねよ。
怒鳴りつけたくなるが、どうやらプレイヤーの声が聞こえるのは限定されるらしい。
ダイアナは聞こえても、母上は聞こえていないようだ。
ならば、ここで叫んだら頭の心配をされてしまうので、それを避けるために母上の前ではおかしなことは避けなければ……。
「ああ、ありがとうございま……」
そう言葉を続けようとすると、俺の唇に人差し指をのせてくる母上。
……普通に止めてくれないかな?
母上だったら、別に言葉を遮られても殺さないし……。
『別の領民なら?』
殺す。舐めてんのか。
そんなことを考えている俺に対して、母上はめっと叱ってくる。
「ディオニソス。公の場では今のように格好よく、しっかりと対応していただく必要はありますが、今はプライベートの場です。敬語なんて堅苦しいことはしなくていいんですよ」
「え? あ、いや、まあそうですけど……」
プライベートと言っても、使用人がいるんだが……。
もちろん、ホーエンガンプ家に雇われている時点で、こいつらもかなり優秀な部類だ。
ここで見聞きしたことをぺちゃくちゃ他人に話すバカはいない。
いたとしても、そいつと話した相手を殺すということは、知っているだろうしな。
とはいえ、ある程度しっかりした対応が必要だと思うのだが……。
「ディオニソス。わたくしを泣かせたいのですか? 息子に塩対応されて大泣きする母が見たいと?」
「……分かった」
嫌だよ……。そんな母親見て喜べない……。
他の人間なら、誰かが悲しみに暮れて泣いているのを見るのは好きなんだけど……。
「それでいいのです。ダイアナも分かりましたね?」
「えぇっ!? わたくしはこの言葉遣いなんですけれど!?」
「ああ、そうでしたね。では、それ以外のことで親愛の気持ちを見せてもらいましょう。ほら、ギューッとしましょう、ギューッと」
「え、えーと……」
両腕を広げて迎え入れる準備が万端の母上に対して、困ったように俺を見るダイアナ。
俺を見ても助け船は出さないぞ。
お前が恥ずかしい思いをするだけだからな。
俺にデメリットがまるでない。
うじうじとして渋っているダイアナを見て、母上が小さく呟いた。
「……横領禁止にしないといけないでしょうか?」
「お母様! 会いたかったですわ!」
「ああ、ダイアナ! わたくしもです!」
『わあ。二人のおっぱいが凄いことになってる』
ひしっと熱く抱きしめ合う二人。
感動的な再会のように見えるが、脅されている内容がひどすぎる……。
そして、プレイヤーの頭もひどい。
誰か早く殺してくれないかな?
というか、実体を目の前に持ってきてくれたら、俺が殺すんだけど。どう?
『……キャラ濃い……濃くない?』
知らねえよ。俺の母親、この人しかいないんだもん。
そんな俺に対し、母上はニコニコと笑いかけてくる。
「さあさ、二人とも中に入ってください。そして、二人の武勇伝をわたくしに聞かせてくださいね。母はそれが楽しみで楽しみで、ずっと待っていました」
……ちなみに、これは罠である。
母上と話を始めると、本当に長い。昼から夜になる。
ぶっちゃけ、疲れる。
そういうことは家族であるがゆえにすでに把握していることなので、とりあえず生贄をささげることにした。
「ああ。それはダイアナがしっかりと話す」
「!?」
話を聞いて、役目でしょ。
「ダメです。ディオニソスも、わたくしにちゃんと話さないと泣きますよ」
「……分かった」
逃げられなかった。
母上に泣かれても嬉しくないし……。
俺とダイアナは肩を落として、家の中に入っていくのであった。
『こんな弱弱しいディオニソスなんて見たくない!』
◆
ホーエンガンプ家の中を歩く。
……腕に抱き着いてくる母上を引きずりながら。
何だろう……。普通にやめてほしい……。
さすがに家族だから、殺すという選択肢はないし……。
とりあえず、ズルズルと母上を引きずりながら歩いていると……。
廊下で深く頭を下げる、小さいメイドが立っていた。
その隣では、イケメン執事のエギスの姿もあった。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「ああ」
『あぁっ!? この子は……!』
スッと顔を上げたメイドを見て、プレイヤーが驚いた声を出した。
『原作で最期までディオニソスに付き従ったロリっ子メイド、グレイじゃないか!』
紹介のやり方がキモイ……。
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『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第7話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1007534
『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第8話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1007531
『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第6話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1005446
『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第37話
https://unicorn.comic-ryu.jp/13772/
『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第10話
https://magcomi.com/episode/12207421983410855800




