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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
次兄の帰還と伯母上そして師匠 の巻

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八百六 志七郎、和洋折衷を楽しみ欲望ぶち撒ける事

「と言う訳で、予定よりも三日早く納品出来る事に成ったって訳かい。まぁ早く済めば此方も早く出れるし早い分ニャァ文句はねぇさね」


 猫達の情報網(ネットワーク)を通して紗蘭に納品準備が整った事を連絡した翌日、彼女は山程の銅鑼焼きを手土産にして昼過ぎ位にやって来た。


吉八(きっぱち)の奴も此方での暮らしにも慣れたみたいで安心したよ。アレで一応は国の頭だった男だからねぇ。此方で何の後ろ盾も無く安い長屋住まいで商売しながら暮らすなんざぁ無理だと思ったんだけど……思ったより上手くやってたさね」


 自分で持って来た銅鑼焼きをパクりと齧りながらそう言う紗蘭の言葉に依れば、この銅鑼焼きはタイガードラゴンランドの元領主だった虎獣人の吉八が焼いた物だと言う。


 なんでも此方の世界に来る際に持って居た幾つかの宝石を売り払った銭を元手に、小麦粉や小豆に牛乳等の食材を買い集め、凝乳(クリーム)入りの銅鑼焼きを商う屋台を出したらしい。


 夏場には茶店であいすくりん(アイスクリーム)が食べられている様に、此方の世界の江戸は乳製品に対する忌避感と言うのは余り無く、猪山屋敷(うち)の風呂場にもよく冷えた牛乳が常備されている程である。


 そんな中で和の甘味(スイーツ)の代表格の一つで有る銅鑼焼きに、洋の甘味最大の武器とも言える凝乳を合わせた此れは、珍しい物流行り物が大好きな江戸っ子達に見事な迄に突き刺さり、毎日焼いたら焼いた分だけ売り上げる……そんな状態に成っているらしい。


 話を聞きながら俺も一つ食ってみたのだが、中に入っている凝乳は所謂生凝乳を泡立てた物では無く、牛酪(バター)に卵と砂糖を加えて泡立てた牛酪凝乳だった。


 前世(まえ)の世界でも、親父が未だ若い頃には牛酪凝乳の(ケーキ)が主流だったと聞いた事が有るが、冷蔵庫が広く一般に普及していた俺の子供の頃にはほぼ其れ等は生凝乳の糕に駆逐されて居たと言う様な話を聞いた覚えが有る。


 泡立てた生凝乳は常温下では然程長い時間その状態を維持出来ず簡単に溶けてしまうが、牛酪凝乳は生凝乳に比べある程度の気温に耐える事が出来る為、冷蔵庫や個体化二酸化炭素(ドライアイス)が無くとも持ち帰り食べる事が出来たのだそうだ。


 また牛酪凝乳は当然と言えば当然の事ながら生凝乳に比べるとどうしても脂っ濃く、其れが沢山塗られた糕を多く食べると、甘い物が大好きな若い女性でも胸焼けがする……と言う様な事も多かったらしい。


 しかし生凝乳の糕ならば、幾らでも食べられる……と言う様な人々も居た様で、牛酪凝乳の糕に比べて生凝乳の糕の方が圧倒的に数が出たのだと言う様な話を聞いた覚えが有る。


 とは言え前の世界の日本でも、牛酪凝乳が完全に消滅したと言う訳では無い、北の大地にある大学に二度目の進学をした友人が、彼の地から戻る度に買ってきてくれた御土産のお菓子が牛酪凝乳と干し葡萄を乾蒸餅(クッキー)で挟んだ物だったのだ。


 牛酪凝乳の糕自体は食べた事は無いが、俺が命を落とす前にも敢えて其れを売りにして居る洋菓子屋は有ったと聞いている、そう言う店は大体は親父や爺さん辺りの若い頃に牛酪凝乳の糕を食べ慣れた人が懐かしむ為に買う……と言う様な話だった筈である。


 若い人も普段食べて慣れている生凝乳の物とは違う味わいの糕が逆に新鮮だ、と買っていく者も居ると言う様な話は聞いた事が有るが、残念ながら俺の行動圏内には其れを扱う店は無かったのだ。


 とは言え牛酪凝乳が使われた菓子自体は上記した通り食べた事が有ったので、餡こと一緒に其れが使われている事に気が付けたのである。


 とそんな銅鑼焼きを食べていて気が付いたのだが、黄金色の菓子も其れに類似する菓子ならば向こうの世界にも有り、其れは大概の場合餡こか凝乳の最低でも二択、場合に依っては更に色々な味が有った物だが、此方の世界では餡こ一択なんだよな。


 たい焼きも有っても不思議は無い気がするんだけれども……見かけた記憶は無いし、多分未だ此方の世界に持ち込まれていない物なんだろう。


 とは言え、そうした物を俺が商う積りは無い、内政(チート)で俺Tueeee! は他に稼ぐ当てが無いならば兎も角、今の俺の様に生活に余裕が有る者がやるべき事じゃぁ無いと思うのだ。


 ……まぁ後からノートPCに入ってるだろう卵凝乳(カスタードクリーム)調理手順レシピを睦姉上に見せて、作って貰うのは有りだよな?


 前世の俺は餡こ派では有ったが、偶には変化球的に卵凝乳や猪口齢糖(チョコレート)のたい焼きも食べたく成って買う事も有ったのだ。


 ちなみに猪口齢糖はこの江戸でも渡来品を扱う高級菓子の見世なんかで買う事は出来るのだが、板猪口一枚で四十文(約千円)と言う強気な値付けを見ると、向こうの世界の便利屋(コンビニ)でも十分の一位の値段だよなぁ……と思ってしまい買って食べる気は失せていた。


「んで坊主。あっしは受け取る(もん)は受け取ったし、この茶を飲み終えたら早速向こうの世界へ旅立つ積りなんだが、向こうから買ってきて欲しい物とか(なん)か有るなら今なら未だ聞くよ? つか其の為に手間賃の支払いをお前さん経由にしてるんだろ?」


 凝乳銅鑼焼きを四つ程ペロリと平らげて、番茶を美味そうにズズッと啜った紗蘭がそんな言葉を口にする。


「ああ、うん。色々と頼もうと思ってる物は有るんだ。俺自身の物もそうだけど、此方で知り合った向こうの世界の奴も欲しい物があるらしくてな。纏めたメモが有るから其れをそのまんま持ってって貰えば良いな」


 そう言って一旦立ち上がり、管太郎と一緒に纏めた向こうから買ってきて欲しい物一覧(リスト)を文机に取りに行く。


 俺と管太郎が共通して欲しいと思った物の代表が腕時計だ、此方の世界にも機械式時計は存在するし販売もして居るが、腕時計の様に身につけられる様な小さな物は無い。


 しかもその値段はべらぼうと言って良い程の高級品で、火元国でも比較的裕福な部類に入る猪河家(うち)ですら、執務室と食堂を兼ねた大広間に一つ、客人を迎える為の応接間に一つ、江戸と国許の屋敷に其々有るだけなので、全て合計で四つしか無い代物なのだ。


 一応、猪山藩の伝手と援助で管太郎の成吉思汗屋にも壁掛け時計を一つ買って付けたが、其れだって飾り気の無い比較的安いとされている物ですら一つで五両(約50万円)もしたので有る。


 まぁ向こうの世界の腕時計だって良い物を買おうと思えば、その程度の値では収まらない物も沢山有る事は知っている。


 実際、前世の俺が普段着けていた物だって、暴力団ヤクザを相手にする捜査四課(マル暴)と言う所属柄、暴力団()に舐められない様に、其れ相応にお高い部類の腕時計だったのだ。


 けれども今回俺が欲しいと思っているのは、其処までの高級時計では無く、もっと実用的な秒時計(ストップウォッチ)機能の付いた、走行用腕時計(ランニングウォッチ)と言う奴で有る。


 此れも恐らく高級品を見れば天井知らずの値段が付く世界なんだろうが、其処まで高い物が欲しいとは思って居ない。


 欲を言えば上記の二つの機能以外に太陽光(ソーラー)発電機能が有れば、電池交換と言う此方の世界では割とどうしようも無い手間に悩まされる事が無く成るので嬉しいが、四百文(約一万円)以内で物が無いならばその機能は諦めても良いと思っている位だ。


 頑丈が売りの某有名腕時計ならば倍は出しても良いが、多分型落ち品とかならそれ位の額面で十分な物が買えるとは思うがね。


 ちなみに管太郎が欲しいと言ってるのは、秒時計機能は無しで太陽光発電機能が付いた数字表記式デジタル時計だ。


 今は店内の壁掛け時計を見て伝票に大体の時間を書いて、其処から食べ放題の時間制限を出しているのだが、席の位置に依っては時計が見辛い時が有るので、腕時計が欲しいのだそうである。


 その他にも缶詰のカレー粉とか、不銹鋼(ステンレス)製の珈琲道具一式とか、此方の世界で買おうと思うととんでもない値段がするが、向こうならば然程でも無く荷物としても大きくは無い様な品々を幾つか発注し、


「あと……此れは紗蘭が此方に輸入する荷物に余裕が有ればで良いが……赤白青の高良(コーラ)も出来るだけ買って来てくれ! この間、京の都で飲ませて貰った奴も良いが普通の奴も恋しいんだよ本当に!」


 溜まりに溜まった欲望も一緒にぶち撒ける……が、


「馬鹿言うんじゃぇよ。飲み物見たいな嵩張る上に重い物そう簡単に運べる訳が無ぇだろ? どうしても欲しけりゃ商隊猫(キャラバンキャッツ)が行き来する様に成ってから個別に発注するんだね。まぁ向こうの世界の百倍の値は覚悟するんだね」


 等と言う、無情な言葉が返って来たのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ペプ○マンを自作召喚獣計画の始まりであった
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