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第2話 男の憧れ!異世界ハーレム

「ちっ……。ん? 『異世界で憧れのハーレム体験』……また怪しいエロ漫画の広告か?」


奥田は自室でエロサイトを巡回中にポップアップした広告に目を留めた。


普段なら即座にバツボタンを押すところだが、その日はなんとなくクリックしてしまった。

画面に表示されたのは、どこか妙に作り込まれた旅行会社のサイトだった。


「凝ってるな……。ハーレムツアー、これか」


画面をスクロールすると、アンケートと膨大な利用規約が現れた。

支払いはクレジットカードで旅行当日決済。

当日までキャンセル無料。


「まあ、どうせよくあるジョークサイトだろ。GWも暇だし、ギャグのつもりで申し込んでみるか」


奥田は、アンケートの希望能力欄に『魅了の魔眼』、要望欄に『異世界ハーレムで童貞卒業』と適当に入力した。

その下にある長い利用規約は一文字も読まずに、「同意する」にチェックを入れた…。



そして、申し込んだ旅行当日。


そんな悪ふざけなどすっかり忘れていた奥田が、カップラーメンをすすっていると、突如として室内に眩い光が満ちた。


「本日はアザール観光をご利用いただき、ありがとうございます。奥田様、お迎えに参りました」


光の中から現れたのは、バスガイドのような格好をした美しい金髪の女性だった。


「うおっ!? あんた誰だ!?」


「私はガイドのミーエルです。今回のツアー内容はこちらになります」


ミーエルはにこやかな笑顔を絶やさないまま、手元にパッとパンフレットを取り出した。


【ツアー名】男の憧れ!異世界ハーレム


【お客様】奥田様 25歳・フリーター


【付与能力】魅了の魔眼(回数制限:3回まで)


【ご要望】異世界ハーレムで童貞卒業


【旅行日程】

1日目:『ハーレムの館』に宿泊

2〜4日目:終日自由行動(ハーレムの館宿泊)

5日目:アザールから現世へ、現世解散


「奥田様、どうぞ良い旅を!」


「えっ、ちょっ、待っ――」


引き止める声も虚しく、奥田の身体は再び激しい光に包まれた。



次に目を開けた瞬間、奥田の目に映ったのは異国情緒あふれる賑やかな街の喧騒だった。


「本当に、異世界に来ちまった……!」


「奥田様、こちらへどうぞ。これから4日間滞在される『ハーレムの館』へご案内いたします」


呆然とする奥田の前に、先ほどのガイド・ミーエルが旗を持って立っている。


彼女の後についていくと、酒場や宿屋がひしめき合う、少し治安の悪そうな歓楽街へと入っていった。その一角に、一際大きく、豪華な装飾が施された建物がそびえ立っている。


ミーエルが大きな木製の扉を開くと、そこには――。


「お待ちしてました〜ご主人様〜」


エルフ、獣人、人間の美少女など、あらゆる種族の美女たちが、露出度の高い衣装を身にまとってズラリと待ち構えていた。


「うおおおおおおっ! 最高かよ!!」


「今回は最高級ハーレムコースでのご予約ですので、滞在中は女性たちのNG項目以外、何をしていただいても大丈夫ですよ」


「……え? あ、そうなんだ。じゃあ、皆さんプロってこと? ってことは、この『魅了の魔眼』って能力、使う必要ない?」


「はい。能力付与はあくまで奥田様のご要望でしたので、支給させていただきました」


「まあ、細かいことはいいか! ひゃっほー!!」


奥田は理性を投げ捨て、着ていた服をその場に脱ぎ散らかすと、美女たちの胸へとダイブした。


「奥田様、1人では絶対に外へ出歩かないようお願いいたしますね。もし街へ出たい時は、服を着て私をお呼びください。それでは、お楽しみくださいませ」


ミーエルは服を回収し、笑顔で扉を閉めた。


【1日目】

美女たちに囲まれ、天国のような時間を過ごす。


「女の子の身体柔らけ〜、気持ちいい〜!」


女性の身体を堪能し、童貞も捨てた。


「あれ?意外と動くの難しいな……。」


が、今まで女性経験がなかった奥田は、思ったほど回数がこなせないことを知った。


【2日目】

それなりに楽しむものの、早くも体力の限界を迎える。

女性たちに「素敵!」「最高!」と言われても、彼女達がプロだと言うことが頭をよぎる。

裸の女性も見慣れて、ハーレムの館の光景に少し飽き始める。


【3日目】

耐えかねた奥田は、服を着てミーエルを呼び出した。


「何か御用ですか、奥田様」


「あのさ、せっかく異世界に来たんだから、街の中を見てみたいんだけど」


「追加料金を頂ければ、街の観光ガイドも可能ですよ」


ミーエルが笑顔で提示した端末に、奥田は仕方なくクレジットカードをピッと決済した。


こうして始まった街の観光。


「このエリアは、アザールでも珍しい多種族が共生する街です。ハーレムの館の女性たちはプロですので安心です。ですが規約にもございます通り、異種族と交流される際は十分にお気をつけくださいね。さて、これから向かうのは、女神を祀る礼拝所です。礼拝所というのは――」


(ちぇっ、ただの観光もつまらんな……)


奥田は、熱心に解説するミーエルの後ろ姿を、いやらしい視線で見つめた。


(よく見たら、このガイドが一番の美人じゃん。せっかく能力を貰ったんだ、ここで使わなきゃ損だろ!)


奥田はミーエルの背中に向かって、目をカッと見開き、脳内で念じた。


(魅了の魔眼、発動……!)


だが、何も起きない。ミーエルは平然と歩いている。


(おかしいな……もう一度。これでも食らえ、そりゃっ!)


「……奥田様。女神の加護がございますので、私には一切効果がございませんよ」


ミーエルがくるりと振り返った。その顔はいつも通りにこやかだったが、目の奥だけが一切笑っていない。


「ヒッ……す、すみません……」


「まだ美女とのお戯れが足りないようですので、大人しくハーレムの館に戻りましょうね」


奥田は有無を言わさぬ力で首根っこを掴まれ、ズルズルと館へ引きずり戻された。



【4日目】

(完全に飽きた……。館の子たちもいいけど、やっぱり、街の素人の子をこの手で落としてみたい!)


窓の外を歩く女性を眺めながら奥田は、ゴクリと唾を飲み込んだ。


(昼間だし、ちょっとそこら辺を歩くだけなら、一人でも平気だろ)


奥田はミーエルに内緒で、ハーレムの館をこっそり抜け出した。


ウキウキしながら異世界の街を歩いていると、路地裏から何やら甘い匂いが漂ってきた。

匂いがする場所を見ると、背中から透き通った妖精のような羽を生やし、抜群のプロポーションを持つ美女が佇んでいた。


(うおっ、ハーレムの館にもいない超レアな種族じゃん! よし、あの子に決めた!)


魅了の魔眼は、ミーエルで2回無駄打ちしている。

奥田は美女に近づくと、最後の力を込めて目を見開いた。


「えいっ! 魅了の魔眼!」


すると、美女はトロンとした虚ろな目になり、奥田の元へふらふらと近づくと、その豊かな胸で彼を優しく抱きしめた。


「うひょー! 効いた! ……ん? あれ?」


抱きつかれた、と思った次の瞬間。美女の背中の羽が激しく羽ばたき、奥田の身体を抱えたまま、上空へと飛び上がった。


「おい! ちょっと待て! どこに連れて行く気だ!?」


美女が向かった先は、街の境界線のすぐ外側にある、薄暗い不気味な森の中だった。


着地した場所には――なんと、その美女とまったく同じ容姿の女性が何十人もいた。


「お、おおお……!? これこそ、俺が本当に求めていたハーレム……!」


奥田が興奮に震えていると、目の前の美女が、彼の唇にそっと口づけを交わした。


「……んぐっ!? っあ……!?」


離れる美女の口元からは、細く長い針のような舌が覗いた。

直後、全身に激しい痺れが走り、指一本動かせない。


身動きひとつ取れなくなった奥田を見て、周囲の女たちは狂気じみた笑みを浮かべた。

そして服を一斉に引き裂き、群がっていく。


(あ……が……ちがう、俺が求めてたのは、こういうんじゃ……)


恐怖の中、奥田の意識は暗転した。



【5日目(最終日)】

「ハーレムの館にいらっしゃらないので、もしかしてとは思いましたが……」


森の奥深く。ミーエルは、巨大な蜂の巣のような泥の塊の前に立っていた。


その巣の中心には、全身をガチガチに固められ、無数の小さなイモムシに皮膚を這い回られている、変わり果てた奥田の姿があった。


「こちらの種族『クイーンビー』は、フェロモンで他種族の雄を誘い出します。そして、気に入った場合、その雄を麻痺させ、自分たちの幼虫を育てるための『生きた苗床(巣)』にするのです。ですから、異種族との交流には気を付けて、とあれほど申し上げたのに……。クイーンビーを現世に持ち込むわけにはいきませんから、現世には帰せませんね……。」


ミーエルは手帳の「奥田様」の欄にバツ印をつけると、パチンと手帳を閉じた。


そして、カメラ目線でニコリとビジネススマイルを浮かべる。


「今回も残念ながらご満足いただけませんでしたが、アザール観光では皆様の理想に寄り添う様々なプランをご用意しております。

なお、異種族との無断接触に関する免責事項は、利用規約第18条に明記されておりますので、事前にご確認くださいませ。

それでは、またのご利用を心よりお待ちしております」

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