28話 ボーナスステージ。
28話 ボーナスステージ。
指先が、わずかに震えた。
恐怖ではない。
純粋な、昂揚。
(このまま強化して、仮に強化値『100%(2倍)』まで上がったら……それだけで『3垓』になるのか? ……1000パーまで鍛えたら……『16垓』以上……っ)
桁が跳ねる。
階段を上がる成長ではなく、エレベーターによる飛躍。
跳ね踊る倍率の螺旋。
(……やっべ。わくわくすっぞ)
口元が、抑えきれずに歪む。
視線は、腕輪に固定されたまま。
(携帯ドラゴンですら加算強化だったのに、ここにきて『さらなる乗算強化』とか、いいんすか?!)
思考の奥で、笑いが漏れる。
脳裏に、これまでの強化構造が展開される。
原初の世界で手に入れた『携帯ドラゴン』。
間違いなく、破格だった。
存在値を爆発的に押し上げる装備。
だが。
――それでも、加算。
どれだけ強くなろうと、『足し算』の枠からは出ない。
既存の強化の上に、さらに積み重なるだけ。
しかし。
アザトライザーは違う。
(……今後は、『強化バフ+携帯ドラゴン』×『アザトライザー』……っ)
ペンは、ゆっくりと息を吐いた。
肺の奥に溜まっていた熱を、静かに押し出す。
視線を、腕輪から外す。
そして、ほんのわずかに笑った。
――世界の『上限』が、またひとつ外れた。
アサが続けて、
「この世界にいる間、存在値は100以上にならないけど、アザトライザーの乗算効果だけはそのまま乗るからね。仮に存在値100の者が10%のアザトライザーを装備していた場合、その人の存在値は実質110ってこと。表記上は100のままだけれどね」
と丁寧に仕様を説明してから、
「説明は以上。それじゃあ、もろもろ頑張って」
軽やかで、どこか無責任にすら聞こえる声が、場の空気を断ち切った。
次の瞬間、アサの姿は、まるで最初から存在しなかったかのように、音もなく掻き消えていた。
残された空間には、アサの残滓すら感じられず、ただ不自然な静寂だけが漂っている。
その場に取り残されたペンたちは、反射的に周囲へと視線を走らせた。
誰一人として口を開かない。
靴底が地面をわずかに擦る音すら、やけに大きく感じられる。
異常事態に対する本能的な警戒が、全員の身体を強張らせていた。
だが、その緊張も長くは続かなかった。
ペンが、頭をかきながら、
「……だいぶおかしなことになったな……」
そこでペンは肩の力を抜き、構えていた身体をわずかに緩める。
その変化は伝播するように広がり、周囲の面々もまた、ぎこちなく戦闘態勢を解いていった。
張り詰めていた空気が、少しだけ弛緩する。




