16話 神帝陛下は頭がおかしい。頭おかしいやつは、みんな、神帝陛下のモノマネ。
本日の1話目!
16話 神帝陛下は頭がおかしい。頭おかしいやつは、みんな、神帝陛下のモノマネ。
「トラウマ? ゼノリカの幹部になろうって女が? 俺みたいな雑魚の言葉で?」
はっ、とペンは鼻で笑ってから、
「そんなに心の傷が怖いなら、ゼノリカの幹部候補なんてやめて、ホワイト企業の事務職にでもついてろよ。都合の悪い時だけ女子供を振りかざす方がよっぽど暴力的だぜ、ファッキュー……と、そちらのユズさんがおっしゃっている。俺は思ってないよ、そんなコンプラに引っかかりそうなこと」
と、華麗に、ユズへと責任を転嫁していくペン。
なすりつけられたユズは、どうでもよさそうに、頬杖をついたまま、
「もしかしてだけど……その奇抜な言動って神帝陛下の真似? だとしたらやめた方がいいと思うよ。上の人ら、陛下を茶化すようなマネを死ぬほど嫌うから……まあ、あんたが粛清されようがどうしようが、どうでもいいけど」
「その指摘は、ようするに、『神帝陛下は頭がおかしい。頭おかしいやつは、みんな、神帝陛下のモノマネ』ってほざいているのと同じになるけど大丈夫そう? 俺的には、そっちの方が、だいぶイカつい不敬罪な気がしますけどー」
「……」
ユズはわずかに沈黙し、ため息をひとつ吐いて視線を外した。
それ以上関わる価値はないと判断したように。
――そのとき。
静まりかけた空気を切り裂くように、扉が開いた。
ドナ猊下の入室。
ドナは無駄のない足取りで上座へ向かい、
そのままスっと艶やかに腰を下ろす。
場の主導権を一瞬で掌握してから、
「それでは、試験内容を伝える」
★
ドナの命令に従い、幹部候補たちがやってきた場所は、
『異世界探索部署』が管理している施設だった。
地上階層は簡素で、無駄な装飾は一切ない。
白を基調とした壁面には継ぎ目すら見えず、床は靴音をほとんど吸収する特殊素材で構成されている。
機能性だけを追求した造りでありながら、その奥には、明確に『選ばれた者だけが足を踏み入れられる領域』が存在していた。
案内役として現れたのは、若手職員――ゴーバイ。
年若い男だが、その眼は冷えている。
焦点が合っていないわけではない。
ただ、そこに『個』がない。
余計な感情を切り捨てた、純粋な『機構の一部』のような佇まいだった。
再連メンバーに興味がないのはゼンバイだけの特等席ではなく、ゴーバイもそう。
「おまたせしました。では、こちらへ」
簡潔な一言だけを残し、歩き出す。
振り返りもしない。
四人は無言でそれに続いた。




