4話 たすけて。
4話 たすけて。
「バーチャの必殺技『バーチャル・ディメンション・クラッシュ』……どういう技か覚えているか?」
「対象が辿り得た無数の可能性世界線のうち、『実在する過去の一つ』に強制介入し、その世界で確定した因果を現実へ収束させる技」
仮に、Aに対して『バーチャル・ディメンション・クラッシュ』を使用し、『2年前のA』の前に、高級腕時計を落とすとする。
そして、Aが高級腕時計を拾ってネコババしたとする。
その過去を『確定』させた場合、その出来事は『元から起きていた事実』として扱われるため、
バーチャル・ディメンション・クラッシュを受ける前のAは『腕時計をつけていなかった』のに、
受けた後のAは『腕時計をつけている』という状態になる。
当然、こんな事をすれば無数の『パラドックス』や『バタフライエフェクト』が発生する。
だが、この技はそういう『矛盾』を強制的に抑えつける特質も併せ持つ。
「バーチャは、センエースに勝てないと判断した結果、当然のように、自身の最高奥義である『バーチャル・ディメンション・クラッシュ』を使用した。ありとあらゆる可能性を試し、どうにかセンエースを殺そうとした……が、結果として『どうあがいてもセンエースを殺すことはできない』と理解した」
「無理だろうね。バーチャごときじゃ、センくんは殺せない」
「その結果、バーチャは『ならばせめて、最も大きなダメージを与えたい』という感情論の帰結に至った」
「その気持ちは分からないでもないけれどね」
「その結論こそが……『せんおにいちゃん、たすけて』だ」
「……えっと……それって、もしかして、つまり、本来の世界線だと、ユズは転生していないけど、バーチャル・ディメンション・クラッシュでムリヤリ、ユズを転生させて、センくんの前でバグに殺させて、センくんを呪うようにさせた……ってこと?」
「これが最もセンエースに精神的ダメージを与えられる……と、バーチャは判断した」
「……へー……あー……まー、でも……確かに、それが一番ダメージを与えられるかもね。いま、色々と考えてみたけど、ユズを使った方法以上の嫌がらせは……パっとは思いつかない」
「クズノハユズの悪意や邪気は全世界最高クラス。ただし、丁寧に磨かなければ咲かない『大器晩成型』の花。センエースの中で『どうして自分だけ助けてくれないの?』と2垓年かけて磨かれた彼女の『邪気』は、相当な次元に達している。その悪人レベルは、ある意味で貴様を……悪の王である『蝉原勇吾』をも超えている」
「俺と彼女は方向性が違うから、比べようがないとは思うけれどね。野球選手とサッカー選手を比べるようなもの」




