78話 ちょっとイヤかもー
78話 ちょっとイヤかもー
強大な敵を倒すためには絶対に莫大な戦闘力が必須。
才能のないセンが今と同じぐらいにまで戦闘力を上げるためには、
絶対に、同じだけの時間をかけないといけない。
もちろん、『戦闘思考力』は『記憶』が軸になるため、『武の真髄を理解するための時間』は省略される。
だが、『理解している武の極致』を『魂魄へ血肉化』させるためには、どんなに短く見積もっても、1垓7000京年以上は必要。
つまり、このカギを使ってしまえば最後、
『今と同じ強さ』にもっていくまでに、
――また2垓年前後の時間を必要とする。
「あ、それはキツいかも……イヤかもー」
『大雨が降っているのに自転車で学校に行かなければいけない時』ぐらいのテンションでそうつぶやくセン。
声に感情がほぼ乗っていない。
ボケているのか、ガチなのか、いまいち判断がつかない。
センは、頭をぼりぼりかきながら、
コンマ数秒、あれこれ考えてから、
――ユズに、
「お前さぁ……もし、日本にいたころの……ガキの頃の環境がマシだったら、そこまで病んでいなかったって思う?」
「……そんなの……知らない……ただ……」
「ただ?」
「日本にいたころの『糞みたいな環境』以外で産まれた時は……ここまで『悪意で一杯の人間』じゃなかった……それだけは……覚えてる……細かいことは忘れたけど……」
フラグメントの奥にしまい込まれた記憶は断片的で曖昧……
『昨夜みた夢の記憶』ぐらいもやもやしている。
それでも、『自分が盛大に壊れていたか、そうじゃないか』の大体の把握ぐらいは出来なくもない。
「んー……まあ、それは俺もそう思うぜ。転生したお前は別に普通のガキだったし、別の因子をもった大一アルファのクズノハユズも、性格は悪そうだったが、悪魔には見えなかった……環境で人は変わる……そうだよなぁ……そうなんだよなぁ……」
センは腕を組んで、うんうんと、頭を悩ます。
「正直、お前のことはどうでもいいっちゃどうでもいいが……」
天を仰いで、虚空を見つめたまま、
「……そうだな……うまいことやれば……無駄に死なせちまった連中をどうにかできるかもしれねぇし……配下連中からの過剰評価とかもどうにかできるかもな。……クソ面倒くさいのは間違いないが……メリットも大きい。……アリだな……かなりの『ナシより』ではあるが……ぎり、アリだな……」
メリットとデメリットを丁寧に査定した上で、
センは、
「よーし、いいだろう。やったろうやないかいっ」
「は?」
「だいぶ面倒くさい旅路になるが……まあ、いいさ」
覚悟を決めると、センは、
『記憶』以外の『必死に積み重ねてきた自分の全て』に、
「……ヒーロー見参」
それはもう、あっさりと別れを告げて、
……遠い、遠い、遠い旅に出た。
キチ〇イ!!
――キチ〇イと断じるにいささかの躊躇も必要としない極限の愚行!!!




