72話 コスト。
72話 コスト。
「じょ、冗談じゃない……なんで、こんな……」
涙が浮かび、絶望が心を包み込んだところで、
「――うぷっ」
ユズは、急に血を吐きだした。
「は? え……な、なにが……なに、コレ……ぅえっ」
「おっ、あいつら、やるねぇ。……俺の圧迫面接で『お前の心にスキができたから』とはいえ……存在値210京の怪物に自力で『抵抗』していやがる。すげぇな。原初の世界で、『似たようなことを体験した経験値がある』とはいえ……これだけ、しっかりと応用対策が出来るとは。やっぱ、あいつら優秀だ。俺なんかより、よっぽど高性能。もはや、腹が立ってきたレベル。なんで、あいつらばっかり優秀で、俺はこんなにも残念なんだ。ナメるなよ、ちくしょう」
「いったい、なにが……なぜ……ぐふっ」
「平たく言えば、スペシャルを過信して安易に使い過ぎってこと。何にだって『コスト』はあるもんだ。100円でフェラーリは買えねぇし、買えちゃいけねぇ。大金持ち以外が維持できる車じゃねぇから」
大きなメリットには、相応のデメリットが付随するもの。
「お前の『クイーン・ジャイアニズム』のデメリットは……『奪った相手の全部を背負う必要がある』ってとこだな。厄介なことに、俺の配下たちは、俺に対して、異常過ぎる忠誠心を抱いている。その『ヤンデレな重荷』も、お前は背負わないといけない」
「ぐ……ぅう」
「……アダムたちは、クイーン・ジャイアニズムの性質に気づいた。だから、お前の中で、俺に対する感情を暴走させて、『俺を攻撃するぐらいなら死ぬ』って『負荷』を、お前にかけているってこと。意気揚々としゃべっておきながらなんだが……文章にするとだいぶキモいなぁ。あいつら、マジでやべぇ」
「き、気持ち悪い……あんたに対して、妙な感情が湧いてくる、キモい、いやぁああっ」
ゴキブリを見た時の婦女子みたいな悲鳴をあげる彼女に対し、
センは、腕を組み、ウンウンと頷きながら、
「心中お察しするぜ。あ、ちなみに、俺の初期プラチナスペシャル『無限転生』も、効果はすごいが、その分だけ厄介なコストがあったんだぜ」
それは、『どんなに頑張っても完全には死ねない』というデメリット。
他にも、『絶対に不老不死になれない』とか、『他の世界に転移できない』とか。
それらの『ちょっとした絶望』に苦しめられた時期が、センエースにもありました。
今となっては懐かしい想い出。
「ぅう……くそ、くそ、くそぉおお! ムカつくぅう! あの男に復讐したい!! アタシの想いに応えてよ、『ネメシス・エヴァンジェリン』!! アタシの復讐心が風化しない限り、勝ち筋が残るんだろぉお!」




