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女になった相棒と行く異世界転生冒険譚  作者: 光月
女になった相棒と行く異世界転生冒険譚
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いざやロクソール


「なあ、シオン。オレは怒ってるんだぞ……?」


 ヴァイスとオルガから依頼の詳細を聞いてからこちらの事情も説明し、急いで旅支度を済ませた後のロクソール行きの道中で、オレはそう切り出した。


「わかってるよ」

「いいや、わかってない。大体、何をどうしたら冒険者を危険に晒すような行為に走れるんだよ。お前の意見が無かったら、今頃オレはソルダルを完全に離れているだろうな」

「わかってるって。ギルドマスターは、俺達なら解決出来るって買ってくれたんだろ? 解決すれば恩が売れるんだから、それで良しとしようぜ」

「んな事はオレだってわかってる。だがな、わかってるのと納得出来るかってのは別だ。オレはな、シオン。ギルド側が意図して冒険者を危険に晒したっていう、その事実が気に食わないんだ」

「それはさっき聞いた。確かに俺だってそれは気に入らないけど、それならそれで、やりようがあるだろ?」


 今となってはローブも着ずに、ソルダルの武具屋で買った白のドレスアーマーに身を包んで、長い金髪を風に遊ばせたシオンが言う。

 まあ、実際のところ、『無理難題を押し付けられた』というのは事実だし、これをギルド本部にでも持ち込めば、ヴァイスをクビにとかくらいは出来るだろう。まあ、そんな上手くいくわけは無いが。

 これはもう何度でも言いたいんだけど、ギルド側が冒険者をわざと危険に晒すなんて、どう考えても頭がイカれてる。

 何の為のギルドだよ、クソッタレ。

 冒険者がいなきゃ運営すら出来ないくせに。


「……また心の中で毒吐いてるだろ、クロウ」

「…………よくわかったな」

「わからいでか。こちとら黒銀のクロウの相棒だっての」


 ふふん、と、ちょっと自慢気な顔をして言うシオンに苦笑で返す。

 その通り名……本当に誰が考えたんだよ。

 だとしたら、何か? シオンは『白金のシオン』にでもなるわけか?


「――まあ、俺はそんな単純な通り名は要らないけど」


 まるでオレの思考を読んでいるかのようなシオンの言葉。

 お前、もしかして『読心術』みたいなスキル持ってない? 気のせいか?


「……ん? どうかしたか、クロウ?」

「……いや。にしても、なんでオルガは来なかったんだろうな?」

「さあ? 案外、実は今回の件は全部嘘で、頭角を現してきた俺達を潰そうとしてたりしてな。まあ、ヴァイスがそんな事をするようには思えないけど」

「なるほど……」

「もしそうだったら、どうする?」

「ロクソールのギルド所属の冒険者を、全員使い物にならなくしてやるさ。脚の1本でも斬り落とせば2度と活動出来ないしな」

「俺の相棒は恐ろしいなぁ……」

「冗談だよ。それより、もっと速く行かないか?」

「徒歩じゃ無理だろ」

「忘れたのか? オレは全ての魔法を使えるんだぜ?」


 この世界における、魔法。

 属性にして、地、水、火、風、雷、氷、樹、光、闇、そして聖。

 これらの属性魔法と呼ばれるものは、普通の人には2種類か3種類までしか適性がなく、4種類で稀代の魔法使いの扱いを受け、5種類で賢者、6種類以上で例外なく魔王と呼ばれるようになる。

 全ての属性に適性があるオレは、魔王と呼ばれる存在なわけだ。


 ちなみに、それらの、いわゆる『属性魔法』とは別に、時空間魔法や召喚魔法、精霊魔法に付与魔法なんかもあるらしい。

 他にも、一部地域に伝わる魔法なんかもあったりして、ひとくちに『魔法』と言っても、属性魔法を始めとして様々あるようだ。


 それはさておき、これは、結局のところ神々が用意したこの身体と、固有スキルである『魔法の素養』によるものだ。

 この『魔法の素養』というスキル、単に魔法の扱いが上手くなるとか、消費魔力が少なくなるとかいう代物ではなく、『全ての属性に適性を得て、なおかつ消費魔力を通常の半分にし、威力を1.5倍にする』とかいう、ふざけたスキルだったのだ。

 ……平和な異世界ライフを返して欲しい。

 このスキルのせいで、おちおち魔法も使えやしない。恨むぞ、八百万の神々よ。


 まあ、ひどいのはそれだけじゃない。

『太陽神の加護』と『神々の加護』は、全ての状態異常に完全な耐性を得て、身体を強靭にし、普通の人間ではどれだけ鍛えたとしても到底辿り着けない領域まで身体能力を押し上げるスキルだった。しかも重複する。


 とはいえ。……そう、とはいえ、だ。

 ここで重要になるのが、固有スキル『制縛の鎖錠』である。

 このスキルに関してはグッジョブと言わざるを得ない。

 その肝心の効果は、『当スキル保有者のスキルや加護、祝福による恩恵を保有者の鍛練の完成度やスキル習熟度によって制限する』というもの。

 早い話が、『努力しなかったら恩恵は得られないから頑張ってね』というスキル。

 いやホント、さすがは神様だよなぁ。

 オレの性格をちゃんと理解してくれてるっていうか、ホント流石だわ。

 まあ、異世界転生していきなり俺TUEEEEも嫌いじゃないんだけど、最低限の自助努力はしないとな。うん。それが人間らしい営みってもんだよ、マジで。


 ともあれ、3ヶ月もあれば武器やスキル、魔法の扱いにも多少は慣れようってもんで、風属性魔法を利用して、自分を含めて3人までなら空中を高速移動させられるようになった。

 まあ、この世界の魔法はイメージ……想像力が物を言うらしいから、前世でオタク趣味だったオレには造作もない事だ。

 魔法で飛行するとか、何度想像した事か。


「さて……お姫様。楽しい楽しい、空中遊覧の旅は如何ですか?」

「……なんだよ、その芝居がかった喋り方は」

「ダメか? オレなりに結構頑張ってみたんだけどな」


 まあ、ユーモラスな立場……つまりボケ役は、前世で生粋のツッコミ役だったオレには出来ないんだけど。面白い事なんか言えるかっての。

 そういえば……それが原因で恋人にフラれた事もあったなぁ。

 なにが『出雲くんの話、面白くないの』だよ。

 だったらお前が面白い話してみろっての。それを参考に面白い話してやるから。


 ……まあ、もう前世なんぞどうでもいいか。

 仮に戻りたくても戻れないだろうし。戻れるなら最初から異世界転生なんかしてないだろう。


「それで、どうする?」

「……まあ、徒歩じゃちょっとツラいし、頼んでもいいか?」

「おう。……風よ。我らを乗せて彼の地へとその身を渡せ。【ウインドレイド】」


 詠唱しながら魔力を媒介して風を生み出し、オレとシオンの身体を上空へと舞い上げる。

 実はこの詠唱、なくても魔法自体は発動可能。

 ただ、この世界では、いわゆる『無詠唱』は賢者以上の存在が使う技術で、普通の魔法使いには出来ない……と考えられている為に、オレは無用な騒ぎを避ける為にわざわざ詠唱しているというわけである。

 まあ、『無詠唱』自体はそんなに難しい技術ってわけじゃない。『詠唱』がそもそも想像力の増強として使われているので、それが無くても自分のイメージでしっかりと魔法を使える人は大抵が無詠唱だそうだ。

『ぶっちゃけ無詠唱なんて、いちいち詠唱したり名前言ったりするのが面倒だったからそうしただけで、別に意味はないし凄い技術でもない』と、3週間前に魔法の修練で行き詰まってた頃に来た『神々からの注意書き』に書いてあった。

 ちなみに、無詠唱の第一人者は、面倒臭がりで有名だった魔王級の魔法使いだったそうだ。

 その人は女性で、口癖は『めんどい』、座右の銘は『不労所得』で、名前はヴァイスと言ったらしい。種族はエルフだったとか。

 流石にあのギルドマスターがそれではないと思いたい。会う度、『ああ、めんどくさい……』とか言ってるけど、頼むから別人であって欲しい。


「……相変わらず、凄い魔法だな」

「そうか? これくらいなら、1ヶ月みっちりやれば余裕だろ」

「なあ、相棒」

「なんだよ、改まって」

「これとそのアイテムボックスを利用して、運送業でも始めたらどうだ?」

「……ここじゃない世界なら、それも良いかもな」

「……は?」

「何でもない。オレはお前と冒険者やってるのが好きだよ、シオン」

「……なんだよ、照れるだろ」

「女になったからか? 変な事で照れるようになったな?」

「別にそういうんじゃ……いや、うん。それでいいか」


 いまいち判然としないシオンの言葉に首を傾げつつ、魔力を操作して移動スピードを上げる。

 今のところ時速にして100キロってところか。

 ……冒険者に飽きたら、魔法を使った事業をするのもアリかもな。


「……………」

「……ん? こっち見つめてどうしたんだよ、クロウ? ていうか、魔法の制御はお前しか出来ないんだから、前見て制御しろって!」

「わかってるよ。そう慌てんなって」


 まあ、その時はこの『相棒』に、ちゃーんとついて来て貰わないとな。

 言い出しっぺだし、何より、相棒だし。

 ……シオンが恋人、ね。

 まあ、少なくとも今はそういう感情は無いな。

 女になったばっかだし、当たり前だけど。


「だから前向けってば!」

「わかってる、わかってる」

「わかってねぇよ! だっ、前向けって! 空の魔物にぶつかったらどうすんだよ!」

「はっはっは。何言ってんだ、お前。オレ達は冒険者だぞ? 魔物に出会ったら討伐さ」

「ぶつかったら! 出会ったらじゃなくて事故ったらの話をしたいの!」

「はしゃぐなよ、シオン。空を飛べたのがそんなに嬉しいのか?」

「話聞けよ! 危険性の話をしてんの!」

「大丈夫だって、そんな簡単に――あぶねっ!?」


 進行方向の垂直の方角からやってきた鳥の魔物に危うくぶつかりかけた。

 危ないなあ……。信号とか無いから余計に危ない。

 まあ、前世では、アホなドライバーは信号があっても事故ってたけど。


「言わんこっちゃねえな!? もう、いいからもう、前見とけって……ホントに……」

「ちょっと悪ふざけが過ぎたよ。悪かった」

「もし落ちたら一生恨むからな……」


 現在地上50メートル。

 レベルやステータスの関係で即死はしないだろうが、一生恨まれるのは嫌だ。

 ……よし! 気を引き締めて、いざロクソール!


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