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突然ですが私は、いま、妹の婚約者に迫られています。
「可愛いロティ、よく顔を見せて」
はい、ロティは我が妹ながら可愛いです。私もそう思います。
けれど困ったことに、私はロティではないのです。
更に困ったことに私達は傍から見ると、ロティとその婚約者アイザック様そのもの。
そう、なにも問題はないのです。私の気持ち以外は。
どうやら私は今、妹の身体で妹の婚約者に迫られているようです。
改めまして、私の名はドロシー。
身体は妹のシャーロット・バートンですが、魂?の私はドロシー・バートン。バートン伯爵家の長女です。
いえ、もしかすると「長女でした」と言うのが正しいのかも知れません。
私、つまりドロシーの身体が、生きているのか死んでいるのか、分からないのです。
気がつくと先程の、妹の婚約者アイザック・フロックハート様が隣に座り、迫られている最中でした。
驚きました。
妹とアイザック様はとても仲良しで、アイザック様はそれはそれは妹を溺愛しているのです。
そんな彼が私に迫ってくるなんて、とても信じられないことでした。
しかし、アイザック様が私のことを妹シャーロットの愛称で呼んだことや、チラリと目に映る自分の手や髪の毛そして着ている服に、私は違和感を覚えたのです。
「あああの、アイザック様⋯、わ、私⋯その、お化粧直しに⋯⋯」
「ひどいなロティ、アイザック様だなんて。いつものようにイジーって呼んでよ」
そう言ってさり気なく手を握られてしまいました。
何と鮮やか、そして優しく握られているはずなのに、どうした事でしょう。手が抜けません。
気のせいでしょうか、逃さないぞと言う無言の圧を感じます。
愛称で呼べば抜けるのでしょうか。抜けてくださいませ。
「⋯イ、イジー⋯⋯」
聞こえるか聞こえないかギリギリの声量で何とか愛称でお呼びしますと、なんとも満面の笑みのアイザック様!!
お顔が良いお方は、お耳も良いのですね。
因みに、アイザック様はプラチナブロンドにサファイアの瞳をもち、とても整った綺麗なお顔立ちをされています。
そんな訳ですから、とにかくまぶしいのです。
少し⋯、いえ、かなり離れて頂きたいです。
そして私のお化粧直し要望は、有無を言わさず却下された模様です。
手が、抜けません。
「…そ、それでは飲み物を!!私、喉が渇いたので冷たい飲み物を頂きたいです⋯っ」
前もって分かっていたかの様に、間髪入れずグラスに注がれた飲み物が出てきました。
もう深くは考えません。
それより大事なことがあるのです。
私はすぐさま自分の顔を確認しました。
水面に映る顔も、グラスに映る顔も、妹シャーロットのものです。
「!!!」
驚いてグラスを落としそうになり、アイザック様にグラスも身体も支えて頂いてしまう。
「ああ⋯大丈夫かい、ロティ?まだお姉さんのことで気持ちが落ち着かないのだろう?」
支えて頂いて申し訳ないですが、近いのです。アイザック様。
それはさておき、私のことで気持ちが落ち着かない、とは⋯?
⋯⋯⋯⋯つまり、そういうことでしょうか。
「姉、の⋯?」
「そうだよ、お姉さんのことは残念だったね。僕に出来ることは何でも協力するから。ロティが犯人を見つけて復讐したいと言うなら、我がフロックハート家の全総力を使って⋯」
「ま、待ってください!⋯⋯は、犯⋯人⋯⋯?」
想像を上回る衝撃的な言葉に、頭を殴られた感覚に陥ります。
犯人と言うのはどう言うことでしょう。
私が死んだことは間違いない様です。
犯人?
私は殺された?
誰に???
「そう。ロティは犯人、見つけたい?」
「見つけたいです!!」
思わず私は即答しました。
私を殺した犯人を探す、それが正しい行為かは分かりません。
見つけてどうするのか、どうしたいのか、それすらも分かりません。
けれど、アイザック様は私の答えに満足気な笑みで返してくださいます。
それだけで、この選択は間違いではないと思う事が出来ます。
もしかしたら私は、その為に妹に乗り移ったのでしょうか?
そう言えばロティの魂はどこに行ったのでしょう??
追い出してしまったのでしょうか?それとも眠っているのでしょうか?
私が無事に犯人を見つけ、私の魂が救われ天に召されたら、ロティの魂が戻ってくるのでしょうか?
一刻も早く犯人を見つけて、ロティに身体を返さなくてはいけません。
それはそうと、先程からまたアイザック様との距離が近いのです。居た堪れません。
ごめんなさいロティ、早く身体を返しますから。
犯人を見つけるまで身体をお借りしますね。




