小金をもって押し寄せてくる客どもの様子を見るのが楽しい
がんばってます!
ズレヒゲがレカオシーナ伯爵家にいたころ、外で買い物を済ませたレオナは集会所の中に入ろうとしてドアを開けたまま固まっていた。
昨日までの集会所は簡素な椅子が並ぶだけの舞台兼劇団関係者たち(レオナとリオンも残念ながらそこに含まれていた)が雑魚寝する宿泊場所だった。
しかし集会所のドアを開けた先には、真っ赤な絨毯が敷かれた荘厳なホールになっていたからだ。
ホールは黒・赤・金で整えられており、さながら魔王城のような風格を見せていた。
「ナニコレ!?」
「おう、戻ったか。今日から芝居の客はここに入れることにした。すごいだろう?」
振り返ると、ディセリーナが逆ピースでドヤ顔を決めている。
うざい。
「・・・これなんなの?」
「集会所のドアと、オレの亜空間を魔法的につなげてズレヒゲ劇場を作ったのだ。
昨日のことを反省したからな。小娘どもが大声を出すので防音設備をしっかりさせてた。
もう一つ、席数が20しかないと売り上げが増えないから、席も増やした。これで売上アップ間違いなしだ」
嬉々としたディセリーナが先導して劇場内を案内してくれるのだが、庶民的な金銭感覚のレオナは、この無駄にゴージャスすぎる空間に頭が痛くなってきた。
「何人入るの、これ?」
「1階の特別席が150、2階3階の一般席が合わせて300の合計450だな」
「そんなに客が入るわけないよ!」
レオナは客席の数に驚いた。
シムベナは歴史のある伯爵領都であり、伯爵家をトップとして家臣団である子爵が2~3家、男爵家が4~6家くらいはあるのが普通だ。
さらに準貴族である準男爵や騎士爵家は50家くらいはあるだろう。
それでも観客になりそうな貴族の女性は100人もいない。
普通に考えると1公演でさえ特区別席ですら埋まりそうにない。
「それに公演は1日3回なんでしょう?ぜったいムリムリ」
「まあ心配するな。オレの予想では、1回ズレヒゲの芝居を見た客は、残りの公演のチケットすべてを買うと思ってるからな」
「・・え?おんなじ劇を何度も見る人がいるってこと?そんなのお金の無駄じゃない??」
「それが愛の証なのさ」
するとディセリーナはククク、と小さく笑って右手を挙げ、パチンと指を鳴らした。
するとと暗かった舞台に明かりが灯った。
そこには重厚感のある巨大な紅い緞帳が下がっており「さすらいのペレペケ劇団」と大きな文字で刺繍されている。
その緞帳の豪華さと圧巻さに、レオナはしばらく言葉を失った。
「・・・あんた、こんなものが作れるんだったら、もっと楽にお金儲けできるんじゃないの?」
あきれたようにレオナが尋ねると、ディセリーナはビックリしたような顔をした。
「それがな、我々は下界の経済活動や文化・魔導技術の発展に過度な影響を与えるな、と禁則事項がいろいろあるのだ。
今回みたいに芝居で小銭を稼ぐくらいは姉龍たちも見逃してくれる。
それに右から左にモノを動かして金貨1万枚とか、やったらできるが・・・」
「できるの?」
「できるが、そんなの楽しくないだろう?」
小金をもって押し寄せてくる客どもの様子を見るのが楽しいのだ、と悪い笑顔で楽しそうに語るディセリーナを見てレオナはあきれた。
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