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俺が好きなのどっちなの!? 『生ワキ』それとも『あの娘』だけ!?  作者: カプサイシン
1章 『恋』ってなぁに?
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出し物(2)

 9月。これから秋になるとは信じられないほどに気温の下がらない中、既に11月に行われる大学の学園祭は本格的に動き出していた。

 もちろん実行委員ともなればもっと早くから活動を行っているのだろうが、屋台を出す側の人間としてはこれからが本番だ。去年はあまり誰も訪れなさそうな教室の隅っこしか抽選で当たらなかったのだが、今年は違う。


 大学の中庭にある広場の壁際で食べ物を提供することのできる屋台を出すことができるようになったのだ。


 我が百人一首研究サークルの年齢は、1歳と3ヶ月くらいで部員5名(内幽霊部員2名)の超弱小サークルなのだが、全てのサークルに対して平等の確率で場所を決めることができる抽選というシステムは何と素晴らしいものか。

 そしてうちの大学で大当たりだと言われる場所が、大学中庭の屋台スペースである。

 中庭は3つの講義棟と図書館に囲まれた場所であり、普段も学園祭当日も最も人通りの多いエリアなのだ。


 さて普通文科系のサークルは、漫研だったら創作漫画を売ったり似顔絵の速描きをしたり、将棋サークルとかだったら景品有りの詰将棋クイズを出したりなど、自分のフィールドで出し物を行うものなんだろうが、俺たち百人一首サークルは違う。去年は漫才だったし、今年は屋台で何か食べ物を売るつもりだ。食べ物と言っても百人一首に関係することでは一切ない。

 サークル会長たる俺自身が百人一首の内の1首すら諳んじることができないくらい興味が無いのだから!


 ……もちろん、威張ることではないんだが。


 サークルを発足させた理由は単純に3人でゆったりと自由にできるスペースが欲しかったからにすぎない。高校時代はそれぞれが所属する教室があったから私物を置き放題でよかったけど、大学からは明確なクラス分けなんてされないからサークルとして部室をもらわない限り物理的な自分たちの居場所なんてできなかった。


 そんなことを大学の他の友人に話していて、他のサークルに入ればいいじゃないかと言われたこともあったが、それは少し嫌だった。

 それは、俺が大学で新しい出会いを期待する一方で、高校から続いた『3人』としての仲をこれからも『維持』していきたいと願っていたからだ。

 だからこそサークルとして確立させたこと自体に意味はあるものの、名前や活動にはさっぱり意味を持たせていないので、出し物に関しての方向性には全くこだわりがない。

 

 そして、今俺が抱えている問題はそれゆえに発生したものだった。

 サークルとしての方向性が全くないから、そんな大当たりのスペースでいったい何の出し物をするべきなのか、ということだ。




 大学1階の自動ドアが開き、外へと踏み出した体の周りから冷涼としたエアコンの風は失われて、代わりとばかりに蒸したぬるい空気がべっとりとまとわりつく。

 陽が真昼よりかは少し西へと落ちているから日差しはそれ程キツくない。

 2人が部室を去ってからほどなく、俺も帰るために駅を目指した。1人であんな狭い部室でアイディアを捻り出そうとしたって無駄だと考えたのだ。


 アイディアというのは『出さなければいけない』というストレス下よりも、リラックスしている時の方が閃きやすいと聞いたことがある。


 とりあえず最寄りの駅までの道として、綺麗に舗装がしてある並木道を使うことにする。自然が豊かだと心が落ち着くからな。

 

 歩きながら、あれも違うこれも違うと学園祭の出し物に思考を巡らせる。

 屋台を出せるとなったこの大舞台、今回こそ俺はアイア達を見返したい。

 高校時代の通算3年、そして大学1年目を合わせた計4年間。1つだってアイツらより活躍できたことはなかった。そういった事実に少し劣等感を覚えたりしているからこそ、今回の働きで自身の存在感を猛烈アピールしたい気持ちがある。


 ただ正面からぶつかっていったとしても、結局アイアや覇太郎には敵いそうもないから。


「斬新なアイディアを出さねば」


 アイアや覇太郎にも言われたが、俺が目一杯活躍のできそうなフィールドに持ち込まなければ意味がないが、ただ俺は料理なんてしたこともない。

 だからこそ、俺にもできるお手軽さでなおかつ他のサークルの出し物よりも目を引き、そして稼げるような出し物を提案しなければならない。その準備と当日の営業で音頭をとってこそ、俺は初めてアイアや覇太郎に比肩できる友人として、胸を張ることができるんじゃなかろうか。


 高校1年の頃から数えて通算5年目の正直だ。今回のような最大のチャンスをふいにしては、今後のチャンスだッて掴めないに決まっている。


「さぁて、斬新で革新的なアイディアを出してアイツらを驚かしてやろう!!」


 そうして夕陽の差す並木道を背中に気合いを漲らせて歩いていった。

学園祭……皆さまは何をしましたでしょうか?

私は高校生の頃はかき氷、大学生の頃はチュロスやってました。

あんまり斬新さとか考え過ぎなくても、屋台っていうだけでお客様はいっぱい来てた気がします。

カズキはちょっと考え過ぎな青年なのかも……

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