興奮(2)
予想外の展開を迎えたカズキ。
いったい2人の会話の方向性はどこへとぶっ飛んでいくのか!?
そろそろ3章もクライマックスです。
お楽しみください!
「…………………………………………っかぁッ…! ゲホッぐぉほぁッ!!」
息をするのを忘れて口を開き切っていた俺は、なんだかよく分からない羽虫が喉に入ってきて咳込む。
「だ、大丈夫ですか!?」
「あ゛、う、うん……」
い、いったい今のは……。
「い、今、ワキを見せてたよね……?」
「はい、お見せしてましたが……」
「…………」
「…………」
えっ!? それだけ!? そして黙るの!?
俺もいったい何から聞いたらいいのかわからないんだけど!!
「カズキさん」
「はっ、はいぃっ!!」
「それで、どうでしたか? さっきのでも興奮されましたか……?」
「………………え~?」
それ、俺どういう反応するのが正解なのかなぁ……。
「あの、単純にびっくりしたよ……」
「そ、そうですか……何か間違えていたのでしょうか……?」
ちょっぴり残念そうな顔をするニーナちゃん、なぜだ。
そんな俺の不思議そうな顔を見て、ニーナちゃんが説明を始めた。
「私、男性とあまり関りを持って生きてこなくて……だからちょっと興味があったんです」
「それはさっき聞いたけど、興味って言うのは?」
「普通に執事とかはいましたから、喋ったことがないとかそういうことではないんです。でも同年代の男性と少なくとも触れ合ったことはなかったもので、男性が女性のどういうところを好むとかは知識として持っていても体験をしたことがないので実感を持てていなかったんです」
「ははぁ。だから男が興奮したところを見てみたかったと?」
「……はい。すみません、大分勝手でしたね……でも、胸とかお尻とかはそのまま見せるわけにはいかないじゃないですか。でもカズキさんはワキで興奮すると言っていたので、つい……」
まぁ路上でおっぱいポロリさせたり、スカート捲し上げたりはできないから、袖口引っ張って見せられるだけワキの方がハードルは低いか。
再びモジモジし始めるニーナちゃんを目の前に俺はようやく落ち着きを取り戻せた。
目の前の男知らずのお嬢様の目的が分かったからな。
「わかったよ……ニーナちゃん、もう一度ワキを見せてくれ」
「えっ……!? その、それって……」
「ああ、俺でよければいくらでも興奮するよ。任せてくれ!」
「は、はい……! ありがとうございます、それでは……」
そう言うとニーナちゃんは再び袖口をひっぱりワキを見せる。
……おわかりいただけただろうか、袖口をひっぱるニーナちゃんの手が当たった『お胸』がたわんでいる。しかしちゃんとメインのワキも見ているぞ。服が薄く作った影の奥に見えるワキは、明るい光の元で見えるソレより、見ていることへの背徳感が混じってよっぽどーー
「っ!!」
俺は長い人生では慣れた、『ソコ』の痛みに身を屈める。
いてて……今日はジーンズを履いてきていたから、とても窮屈なことになっている。
「ど、どうしましたか……?」
「あ、あぁ、なんでもな……」
ん? 待てよ? なんでもないじゃダメなのか。
ニーナちゃんのためには、ここは素直になっとかなきゃいけない部分だな。
「えっと、興奮しました」
「ホントですか!? ど、どのようにですか!?」
かなり嬉しそうに、無邪気に尋ねるニーナちゃん。
でも、どのようにって、言われてもなぁ。
「……えっと? そ、それも言わなきゃダメ……?」
「聞いてはマズいことだったのでしょうか……?」
むしろ聞かれたとしても、男から言っては社会的にマズいことなんじゃないでしょうか……
「とりあえず、男ってのはね、興奮すると女の子に言えないような興奮の仕方をしてしまうんだよ……」
「な、なるほど……! 勉強になりました!!」
ご、誤魔化せた……のか? まぁこれ以上掘り下げたくはない話題だから、もう放置しよう。
「それでさ、ニーナちゃん。俺の頼みなんだけどさ……」
「ああ、はい。ワキでおにぎりを、ってやつですね。べ、別にカズキさんの頼みというのであれば、私は構いません……カズキさんにはご迷惑をおかけしましたし……」
照れながら俺の方を見て、OKしてくれる。
「ホントに……!? ありがとう!!」
いやっほい!! ニーナちゃんのワキおにぎりを食べれるってよ!! 最高の気分だ!
喜びのあまり飛び跳ねたいくらいだ!!
……って、本当の目的を忘れてた。今日のメインの頼みは俺個人のものではなかった。
「あのさ……、頼みたいことはそれだけじゃないんだよね」
「えっと、なんでしょうか……?」
もう回り道はしないで、本音で頼んでしまおう!!
「実はさ、学園祭でも握って欲しいんだよね、ワキおにぎり」
「え、えぇっ!? カズキさん以外の方も食べるんですか!?」
さすがにこれは予想外だったのだろう、ニーナちゃんは躊躇した様子を見せた。
でもここで引き下がっちゃいけない!
「うん。他の男どもの夢を叶えると思って、お願い!! 頼むよ!!」
ニーナちゃんは「う~ん…………」と顎に手をやってしばらく考え、おずおずと質問する。
「思ったんですけ、ワキでおにぎりを作るって、実際汚くないですか……? それに、カズキさん以外の男性は本当に好きなんでしょうか……?」
あ、そこで汚いからって疑問が出てくるのか。
あれ? 俺はその汚いかもしれないの食べてもいいや、的な感じに思われてるのか? まぁ、食べたいと言ったのは俺だけども。
後、俺個人としては直で生ワキに握られたおにぎりでも全然OKなんだけども。というかむしろそっちの方が……ゲフンゲフン。
「ああ、それは覇太郎との議論で全て解決済みだ。あと、ワキ好きは特殊性癖ではないという結論が出ている」
そうして俺は隠すこともなくなったので、昨日の覇太郎との会話を全てニーナちゃんに打ち明けた。
「既にそこまで掘り下げた議論を済ませているんですね……なんというか、行動的? ですね」
「うん。男は欲求に忠実な生き物だからね。目的を見定めたらやることは早いと思うよ」
「でもやっぱり、他の男の人に自分がそうやって作ったものを食べられるのって、結構恥ずかしくって……」
うーん、やっぱり女の子にしてみればハードル高いよな……。
ここで過去の衝突事件のことを蒸し返して、無理やりお願いすることはできるけど、そんな事するほど非道な人間にはなりたくないしな。
なにか妙案はないものか……。
そうこう俺が考えていると、ニーナちゃんが先に口を開く。
「か、カズキさんには私がワキで握ったおにぎりを差し上げますから、屋台で出すのは普通におにぎりじゃダメでしょうか」
やっぱり俺にはいいのか……。とことんニーナちゃんにとって自分という存在はぞんざいに扱って問題ないと思われているのだと実感する。
まぁぞんざいに扱われるのはむしろご褒美だったりするからそれでもいいんだけ……ゲフンゲフン。
今は自分の性癖に思いを馳せるのではなく、ニーナちゃんに人前でワキおにぎりを作る恥ずかしさを乗り越えてもらうための説得をするのを優先させなければ!
「ニーナちゃん、思い浮かべてくれ。多くのむさ苦しい男どもがニーナちゃんのワキに見惚れる場面を。絶景を脳裏に焼き付けんと限界以上に目を見開いて、鼻息荒くワキを凝視する男どもを!!」
「ぎ、凝視…………」
ニーナちゃんは虚空へと視線を漂わせて、その場面を空へと思い描き始めた。
「みんなが、息を切らして、私のワキへと視線を……?」
「そうだ。きっとワキだけじゃないだろう。おにぎりを握る度に揺れ、そして寄せられる胸にも多くの目線が釘付けになるに違いない」
俺の補足に対して、よほど鮮明に頭の中で場面を描写しているのか、ニーナちゃんの息も次第に速くなる。
「む、胸も……? 脚も、背中も、お腹も、お、お尻も……?」
「そうだ。君の全てに男は魅力を感じ、興奮するだろう。俺だけじゃない、全ての男たちはニーナちゃんの虜となるんだ!!」
ニーナちゃんの男に対する興味を利用させてもらうようで悪いが、恥ずかしさを超えてもらうにはこれしかない。
恥ずかしい以上に『興奮した男性の姿を見たい』という好奇心に俺は訴えに訴えかけることにした。
そしてその効果は抜群だった。
「……ふへへへ……」
「……? ニーナちゃん……?」
「い、いえ……。わかりました、 衛生的にも男性的にも、全く問題がなさそうなので……私、全力で協力しますね……?」
返答を聞いて最初に感じたのは違和感。
先ほどまでの清涼さを感じさせる女性からはおよそ想像もできない、『ナニカ』が俺を襲う。
ぶるりっ、と。俺は背筋を震わせた。
これはーー『怖気』?
「そ、そっか!! ありがとう!!」
どこか色々と間違えた気がするし、開けてはいけない扉を開いたような気もするけど、とりあえず説得には成功した……んだよな……?
これで残すはアイアだけだ。覇太郎とニーナちゃんの後押しがあれば、きっと上手く納得してもらえるだろう。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
何かが目覚めた風なニーナ。
人の性癖は何に刺激されて目覚めるのか分かりませんからね……
私がワキ好きになったのは何でだろうか……
決して美少女に挟まれたことがあるとかじゃないんだけれどな……
次回で3章が多分終わります!
お楽しみに!




