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俺が好きなのどっちなの!? 『生ワキ』それとも『あの娘』だけ!?  作者: カプサイシン
3章 男を突き動かす原動力。それはロマンとエクスタシー
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男を動かした情熱

全てのプランが崩壊し放心するカズキの耳を打つ、ニーナの言葉。

カズキは告げられたその事実に驚き、同時に心の薪に火がつきます。


やたらと抽象的な前書きにしてみました! 詳しくは本文をお楽しみください!

「あ、あの……? カズキさん……? 大丈夫ですか……?」


 俺は全てのプランが崩壊したと悟り、放心してしまっていた。

 いったいどうすればいいんだ……。

 このままじゃ学園祭には本当にただのおにぎりを出す羽目になってしまう。


 俺の顔の前で手を上下に動かして、『もしもーし』とやっているニーナちゃんを置いてきぼりに、俺はまとまりのない思考の海を沈んでいた。その海はとても深く、暗かった。鉛のような気持ちを抱えて、ただただ重力に任せる他ない。もはや沈む感覚すらおぼろげで、世界から上下が失われていく。


 ーー俺は、海面を明るく照らしていた『ワキ』という名の太陽を完全見失ってしまったのだ。


 もう、目を瞑ってしまおうか……。

 光の届かない深海の底で、目を開ける意味もないだろう。

 現実の俺はそのまま目を閉じようとしたが、その時、ニーナちゃんが何気なく始めていた話が耳に入ってきて、覚醒した。


「ーー今、なんて?」

「えっ? ああ、ちゃんと聞いてたんですね。目の焦点が合ってなくて体も脱力し切っていたんで、(なか)ばぬいぐるみに話しかけている感覚に近かったんですが」

「ああ、ごめん……。それで、なんて?」


「はい。だから元の世界に帰るためのアイテムの修理目途が立ったので、学園祭が終わったら帰ろうかと」


 その言葉に、周りの学生たちの喧騒が掻き消えたかのように感じられた。

 今耳にしたことが信じられなくて、問い返す。


「か、帰る……って?」


 ニーナちゃんは不思議そうな顔をして、自然な様子を崩さない。


「自分の世界に帰るんですよ。書置きをしてきたとはいえ、きっと城のみんなが心配していると思いますし、これ以上アイアちゃんのお宅にお世話になるのもご迷惑でしょうから」


 帰る、この子は今、元の世界へ帰ると言った。


 いや、なんら不自然な言葉ではない。元々暮らしていた場所に戻るだけなのだから。

 しかし、それにとてつもないショックを受けている自分がいた。


 ニーナちゃんにもう会えなくなってしまうんだと考えると胸が痛む。

 衝撃の出会いを果たしてまだ3日だったが、お互い充分に仲良くなれていたし、俺個人としては銀髪巨乳というカテゴリの美少女にお近づきになれたことをとても喜んでいた。


 しかし決してそれだけじゃない。


 だってニーナちゃんとの出会いがなかったら、俺の中に眠っていたワキに対する情熱との出会いはなかった。

 彼女のワキに惹かれて、彼女のワキを感じたいと願った自分はいなかった。

 今の俺を変えた全てはニーナちゃんをキッカケにしていたんだから。


 それでも、いつかは帰る日がくるかもしれないと頭の隅で考えてはいた。


 しかし、早すぎる。


 ラノベとかアニメとかだったら、『元の世界には戻らない』とか『魔力切れしちゃったからもうちょっとだけこの世界にいることにしよう』とかそういう展開で、なし崩し的に何か月も何年もこの世界に逗留(とうりゅう)するものなのに。


 すると、だ。このまま学園祭のチャンスを逃すと、俺はニーナちゃんのワキを拝まずに、そしてその温もりを改めて感じる事もないままにお別れの日を迎えてしまうことになる。

 米の位置によっては豊満な胸が当たりつつ、色白のスベスベワキに握られる夢のおにぎりを食べるチャンスを永遠に逃がしてしまうのだ。


 彼女の胸を見て、素晴らしいと思った。

 彼女のワキを見て、挟まれたいと思った。

 そして合法的にそれを叶える全ての男の夢が詰まったと言っても過言ではない、ワキおにぎりのアイディアを閃いたのに。

 このまま諦めて、本当に俺はそれでいいのか…………?


「あのぅ……カズキさん? またボーっとしてらっしゃるのですか……?」


 ニーナちゃんが俺の顔を覗き込んでくる。

 フワリと香り立つシャンプーの匂いに、俺を上目で見るアクアマリン色をした綺麗な眼。

 さらりと俺の手に銀の長い髪が垂れて当る。


 色っぽい。


 そしてその顔は、きっとこれから俺が見るどんな人間だって敵わないと思わせるのに充分な美貌だった。

 そんな奇跡のような出会いを俺はふいにしていいのか………………?

 そんなの……


 そんなことーー


「ーー諦められるわけないだろうッ!!!!!!」


 俺は立ち上がり、そう叫んでいた。

 目の前のニーナちゃんはとてもびっくりした様子で、また周りでお喋りに興じていた学生たちも一斉に押し黙る。

 しかし今の俺にはそんな周りの空気なんて読んでいる心の余裕はなかった。


「ニーナちゃん!!!!!!」


「はっ、はい!?」


「俺はキミを諦められない!!」


「は、はい……へっ? はぁッ!?」


 ニーナちゃんは俺の突然の言葉に驚き困惑した様子で後ろに身を退こうとするが、俺はその手を掴み引き寄せる。


「ふぇっ!?」


「キミにワキで押しつぶされた時から、俺は変わってしまった!!」

「へっ? へっ!? てっ、手をっ!! そ、それにワキっ!? いったいなんのーー」


「キミを見た時、とても綺麗だと思った! そしてビキニアーマーの姿を見て、その抜群のスタイルの良さを見て、すごく、すごく興奮してしまった!!」

「こ、興奮……!? えぇッ!?」


「豊満な胸の谷間に、スベスベなお腹、すらっと伸びた白い脚……そして時折チラリと見せる淫靡(いんび)なワキ。その全てに出会って俺は感動したッ!!」

「ちょ、ちょっと待って!! こ、こんな所でそんな事大きな声で言わないでっ!!」


「いいや、言わせてくれ!!」


 ガシッ!! っと今度は両手でニーナちゃんの手を握って、俺はありったけの思いをぶつける。


「俺はキミのワキをもっと知りたい!! キミがワキで握ったおにぎりを食べたいんだッ!!」




 人生で初めての熱い告白だった。俺の言葉が止んで、辺りを静寂が包んだ。

 ニーナちゃんは俺を見つめたまま言葉が出てこない様子で、心なしか顔が赤い。

 そこで俺はハッと我に返る。

 ……しまった。

 こんな人前で大きな声を出してしまったからか、注目されている。

 俺も今更ながら年甲斐もなく公共の場で叫んでしまって恥ずかしくなる。


「あ、あのぅ……」

「な! 何かな!? ニーナちゃん……」


 ニーナちゃんはとても恥ずかしそうにモジモジと、俺の顔と手を交互に見ながら口を開く。


「そ、その……手を……」

「ああ! ごめん!!」


 ずっと手を握りっぱなしだった! すぐに放したけど、勝手に触れてしまって嫌だったかな……。


「い、いえこちらこそすみません……私、その……男性に触れられたことが今までなくて……」

「えっ!? そうだったの!? それは本当にごめん! ごめんなさい! 俺、そういうとこ全然気を遣えてなくて、考えることもできてなくて……」


 ニーナちゃんは再び顔を赤らめて下を向いてしまう。

 ああ、またやっちまった。

 昨日もアイアに『気が回らない』と注意されたばかりだというのに。

 これじゃむしろ心証を悪化させてしまったんじゃないか?


 そんな気まずい時間が少し流れると、今度は突然カフェテリアの入り口付近がザワつく。

 その中心にいる男子学生が何故かこっちを指差しているけど……


「警備員さんあそこです! あそこの席で、興奮した男が美少女に無理やり迫っているんです!!」


 えっ!? 警備員さんが入り口からこちらに向かってくる!!

 いったいどうして!?


「……カズキさんっ!!」

「えっ!? えぇ!?」


 ニーナちゃんが俺の腕を掴んで入り口とは反対に走り出した。


「コラッ!! 待ちなさい!!」


 後ろから警備員さんと思われる人の声がかかるけど、ニーナちゃんは振り向かなかった。

 俺もニーナちゃんの走る後を彼女に引っ張られながら走る。

『男性に触れられたことが今までなくて……』と言ったニーナちゃんの声が頭の中で思い返される。

 俺は自分の腕に目をやり、その腕がしっかりと掴まれていることを確認した。

 走っていて顔は見えないけど、ニーナちゃんの顔はまだ赤いようだ。


 俺の顔は赤くなっていないだろうけど、美少女に恥ずかしがられながら手を引かれる状況に、何だかよく分からない感情が胸に詰まって鼓動がおかしくなっているのを感じていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!


カズキを突き動かす情熱、いかがでしたでしょうか。

しかし、『真似、ダメ絶対』

普通の女の子相手にやったら確実に『右のおてて』と『左のおてて』がごっつんこしてパンダ車に乗せられます。

もしお近くに一般人と疎遠そうな王女様がいらっしゃっる場合のみ、お試しください。


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