七十八話 やっとクッキング開始ですよ! 2
さて、まず必要な鉄板を作るところから始めなくてはいけないわけですが。問題は鉄がないことです。ていうか大問題ですよねこれ。なので砂鉄から作るしかないのですが、ふむ、何か適当に磁力を操る魔法でも使いましょうか。
砂鉄よ集まれー、と念じてみると、ズオッと音を立てて大量の砂鉄が集まって――
「ひゃうッス!?」
「なんでルナちゃんがくっついてるんです?」
磁力を操る魔法を使ったところ、なぜかルナちゃんがひっついて来ました。
「あのルナちゃん、あなた何か金属って身につけてます?」
「金属ッスか? 見ての通り何もないッスけど……?」
「そうですよねぇ……って、ああそうでした。あなたの見た目は幻影に近いので、元々の姿の時につけていたものはそのままなんですよ。というわけで、死んだ時に身につけていた金属ってあります?」
「死んだ時ッスか……? あ、そう言えばガチャで当たったストラップ付けてたッス!! シークレットだったんスよ、すごくないッスか!?」
「ええすごいですけど、申し訳ありませんがちょっと離れててもらっていいですか?」
ルナちゃんに頼んで十メートルくらい離れてから、再び魔法を発動させます。
「うにゅあッスー!?」
「あ、すみません」
うっかり威力を上げ過ぎたせいで、またルナちゃんまで引き寄せてしまいました。
ううむ、これ思ったより調整難しいですね……強くするのは簡単なのですが、弱くするのってけっこう面倒ですね。
「せ、センパイ、あたしどこまで離れればいいんスか……?」
「なんかすみません……ええとそうですね、一キロくらいですかね?」
「センパイ実はケンカ売ってません!?」
確かに一キロって徒歩で離れるには大変ですね。ルナちゃんテレポート使えませんし。
しょうがないのでルナちゃんにバリアを張ってから、魔法を使いました。幻影の魔法を使ってるので、どこにそのストラップがあるのかわからないんですよね。感触だけで探すの大変ですし。
ようやく砂鉄を集め終わり、超高圧をかけ高熱を発生させて、鉄板へと加工しました。
「……こうして見るとセンパイって、なんでもできるッスよねぇ。センパイ、できないことってないんスか?」
磁力を操る魔法をやめたのでバリアを解除したあと寄って来たルナちゃんが、しみじみとそんなことを言って来ました。
「できないことですか? うーん、そうですねぇ……世界を終焉の炎に包んだりとかはムリですかね」
「例えが物騒すぎないッスか!?」
なんか最初に浮かんだのがこれだったんですよ……私、火はダメですから。熱は感じませんから大丈夫なので、見えなければ扱えるでしょうが。なので実行そのものは可能ですが、実行しようとは思いません。
「でも他に思いつかなかったんですよねぇ。なんかありますかね?」
「それあたしに訊かれても困るんスけど……センパイなんやかんやで半端ないッスよね。さすが女神ッスよね」
「対外的にはそうですけどねぇ……」
私としては、別に女神になった気ないんですよね。より正確に言うならば、女神になろうと思ったわけじゃないんですよ。そのせいか未だに女神と呼ばれると、微妙にもやっとするんですよね。
「まあとにかく、これでお好み焼きができます。ルナちゃん、お好み焼きって焼いたことありますか?」
「ないッス!!」
「ずいぶんと元気な否定が返って来ましたよ……」
さて、となると経験者0ということになります。私はやったことはあるのですが、触れないのでどうにもできません。
口頭だけで一度もやったことがないことをやれと言うのは、いくらなんでもハードル高いですよね……私に実体があると、色々と手っ取り早いのですが。
そこでふと、一つの可能性を思いつきました。
「あの、ルナちゃん。少々身体を借りてもいいですか?」
「へっ!? なんスか!? あたしなにされるんスか!?」
「ああいえ、なにかするわけじゃないです。ただちょっと、憑りつけないかなぁと思いまして」
「センパイいつから悪霊に!?」
「いえあの、悪霊でなくても憑りつける存在はけっこういたと思いますが……」
マンガやアニメでも、割といました。幽霊が生きてる人間の体を乗っ取って、活躍する系。あれは悪霊に限らず、神霊の類はできる方多かった記憶があります。
そのまま説得した結果、しぶしぶではありますがルナちゃんの了承を得ました。
「絶対ッスよ!? 絶対そのまま乗っ取ったりしないでくださいッスね!?」
「そこまで心配しなくても大丈夫ですよ……」
どうもルナちゃん、お化けが苦手らしいです。意外なものがキライですよね。むしろそういう方と友達になりそうなものですが。
ちなみに、私のことは先に吉田さんに聞いていたからセーフだったらしいです。基準がよくわかりません。
とにかく、これでルナちゃんの体を借りられることになりました。シルフさんにめちゃくちゃ反対されましたが、フィーマさんの前例を出したらどうにか引き下がってくれました。
シェイドさんにはミーシャ様のお好きなようにと言われ、ピィアさんはどうでもよさそうでした。
「本当に気をつけてくださいね、ミーシャ様」
「大丈夫ですって、シルフさん。ダメならダメであきらめますから。では行きますよ……一、二の、三!」
えいやっとルナちゃんの身体に飛び込むようにすると、急激に身体が重くなる感触が。
「うわっとっとと!?」
久方ぶりの実体のせいか、若干ふらつきます。ですが問題はないようで、普通に動かすことができました。
「成功したみたいですね……」
実体、ゲットだぜ! みたいなノリで。私は久しぶりの感覚を味わうのでした。




