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六十三話 シンデレラスワンさんの話を聞いてみましょう

 シンデレラスワンを追いかけウンディーネさんのいる泉まで飛ぶと、まだ遠いですがそれらしき物体が空を飛んでいるのが見えました。


「急に来てしまって申し訳ありません」


「いえ全然構いませんよ。それにうちもあんな大物見たことあらへんから、なんなんやろと思うとったところですし」


 ウンディーネさんの座標を元に瞬間移動して来たため、すぐ目の前に出現できました。シルフさんがいるとウンディーネさんの細かい座標がわかるので、瞬間移動する時は便利です。これができるということは、別の精霊さんの座標を元にも飛べるでしょう。その方の詳しい座標がわかれば、ですが。


「とりあえず、なにかあってもルナちゃんはシンデレラスワンに向かってしゃべらないでくださいね。話がややこしくなりそうですから」


「センパイあたしに対して厳しくないッスか!?」


「いえ普通ですよ。とにかくお願いしますね。もし余計なことをしゃべらないことができれば、後で魔法を詳しく教えてあげますから」


「わかりました黙るッス!!」


 これで少しは話が進むといいんですけど、と思っていると、空を見上げていたシルフさんがこんなことを言い出しました。


「いっそのこと、一度動きを止めてみますか? 声をかけたところで、早すぎて会話は困難でしょう。それ以前に、会話が成立するかどうかが未知数ではありますが」


「言われてみればそうですね……」


 ここまで来たはいいものの、それからどうするかまったく考えていませんでした。とりあえず正体を確かめようかな、くらいは思っていましたが、具体的な案はなにもないです。一応私、ある程度知能の高い生物とは話が通じるっぽいですが、確定ではないんですよね。


 ここまで来て自主的に降りてくれる……こともありえなくはないでしょうけど、動物にそれは期待しすぎですかね。


「シルフさん、あのシンデレラスワンが墜落しないように動きを止めることは可能ですか?」


「お安い御用です」


「ではこの辺りまで来ても着陸の姿勢を見せない場合は、強引に地上に下ろしてください。ただし、傷はつけないようにお願いします」


「了解しました!」


 やる気のあるシルフさんの返事を聞き、安心した私は相当のスピードで突っ込んで来るのを眺めることにしました。


 シルフさんに任せておけば大丈夫でしょう。それに最悪ダメでも、ここにはクロノスくんもいます。うまくすれば時間が止まりますから、その間にどうにかします。


 シンデレラスワンがちょうど頭上に差し掛かった瞬間、ピタリと動きが止まりました。


「ミーシャ様、今です!」


「了解しました」


 ここは私の本体の近くなので、けっこうな高さまで上がれます。九十メートルは上がれそうですので、ギリギリ届くでしょう。


 私はふわりと浮くと、空中でもがいているシンデレラスワンに話しかけてみました。


「こんにちは、シンデレラスワンさん。少々お話よろしいでしょうか」


 通じるといいんですけどねと思いながら話しかけてみると、もがいていたシンデレラスワンがキッとこちらをにらんで来ました。


「わらわになにか用かの?」


「あ、しゃべれるんですね。話が早くて助かります」


 会話が成立しなかった場合、どうするか考えてませんでしたからね。場合によっては、なにか新しい魔法を開発しなくてはいけませんでしたしょう。


「私この近くで世界樹をやっています、ミーシャと申します。ちょっとお聞きしたいことがありまして、お時間よろしいですか?」


「いいも悪いも、このような手段で足止めをしておいて、よく言えたものだの。わらわに選択肢などないのではないかの?」


「それについては申し訳なく思ってます。こうでもしないと、話ができなかったもので」


 しばらくジト目で私を見ていたシンデレラスワンさんでしたが、盛大にため息を吐いてあきらめたように口を開きました。


「ふん、よかろう、わらわは心が広いからの、話してやらんこともない。その代わり真下に着地するからの、この魔法解いてもらえるかの?」


「ええ、わかりました」


 下にいるシルフさんに合図を送ると、シンデレラスワンさんは一度身震いをしました。これで自由を取り戻したようで、不自然な角度で下へと降りて行きます。まさか直線で真下に降りられるとは、いったいどういうカラクリなんでしょう?


 普通の生物では絶対にできない挙動で下へ降りたシンデレラスワンさんは、なんの反動も見せずに優雅に着地しました。


「それで? わらわに訊きたいこととはなんぞや?」


「ええ、シンデレラスワンさんに訊きたいことはですね、」

「そもそも、その呼び方はなんぞ? わらわにも名前があるのだがの」


 上から目線で言うシンデレラスワンさんのセリフに、シルフさんがイラッとしたのがハッキリわかりました。シルフさん、地味に短気な時がありますからね……


「え、ええと、ではあなたの名前を教えていただいても?」


「ああよいとも。おぬしははしっかりと先に名乗りをあげたからのう。わらわの名前はピィアという。覚えておけよ、ミーシャとやら」


 ビキビキィッとシルフさんの額に青筋が……!! そ、そこまで怒らなくて大丈夫ですよ? 私まったく怒ってませんから大丈夫ですから!!


「教えてくださって、ありがとうございます。それでピィアさんに質問なのですが、シェイドという名前に心当たりはありますか?」


「……」


 シェイドさんの名前が出た瞬間、微かに顔が引きつったように見えました。相手は人間じゃないですし口元はクチバシですから断言はできませんが、少なくともポジティブな反応でないことだけは間違いありません。


「ピィアさん?」


「悪いが、わらわは用事を思い出したのだ。もう会うこともないだろうの」

「え、ちょっ」


 私が止めるも取り合わず、ピィアさんは弾丸のような初速で真上に浮かぶと、さらにスピードを上げて飛び去ろうとしています。


「ああもう! シルフさん、この場の全員飛ばすことは可能ですか!?」


「数分しか持ちませんが、それでよければ!!」


「それでお願いします!! 私も補助をしますので!! すみませんウンディーネさん、お邪魔しました!!」


「後でなにかあったら、うちにも教えてくださいねー!」


 ウンディーネさんの声に辛うじてうなずきを返し、それからシルフさんが高速で魔法を組み上げ私がそれを補助する形で、なんとかピィアさんを追いかけたのでした。


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