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三十一話 フィーマさんの住む村に行ってみました 1

 フィーマさんの話を聞いた私は、フィーマさんの住む村――フォスト村までやって来ました。シルフさんはまだ心の準備が出来ていないらしく戻って来ないので、書置きを残して私だけで行くことに。


 前回近くまで来たのですが、その時は中に入ることはなかったので内部の様子は知りません。森の奥深くの盆地にあることだけは知っていますが、それ以上はわからないんですよね。フィーマさんの話にも出て来ませんし。


 ほんのちょっぴりワクテカしながら、フードを目深に被ったフィーマさんの後ろについてフォスト村に入りました。


「まさしくエルフの村! って感じですね……」


 私の勝手なイメージですが、森の樹々を切り倒し過ぎず木の上に家が造られているところなんか、特に。


「って、あら?」


 そこで違和感を覚えました。冷静に考えて見ると、前に見た時はもっとこう、竪穴式住居みたいな感じだったような気がするんですが……


「あの、フィーマさん。私が前に見た時は、もっと違う感じの建物が建ってませんでしたか?」


「それが、昨日の朝起きたらいきなりこうなっておりまして……」


「あー……」


 間違いないです。ナノさんたちの仕業ですねこれは……あの子達、本当に気分で色々やらかしますから。おそらくですが、エルフ化したフィーマさん達を見て『こっちの方が似合う!』ってノリで作ったんでしょうねこの家……


「ていうかよくよく見れば、フィーマさんが着ていらっしゃるその服、初めて見るやつですね?」


「え、ええ。これも枕元にありまして……前の服が消滅しておりまして、これを着るしかなく」


「……製法とかって、わかりますか?」


「それは村の中央に突如として現れた石碑に。すべて絵で説明されておりました」


 配慮はしてるんですね一応……フィーマさん達には、まだ文字は早いと思ったのでしょう。そこの気遣いはできるのに、なぜこうも文明レベルを飛躍的に向上させちゃうんですかねナノさん達は……


「ちなみにですが、なにか実害があったりとかは?」


「そ、そうですね……なんの前触れもなく家がこうなってしまったので、驚く者は多かったですが……こちらの方が前の家より住みやすい上にネズミが来にくいですので、最終的には喜んでおります」


「じゃあ、まあ大丈夫ですかね……」


 あまり甘やかすと後でしっぺ返しが来そうなのであれですけど、まあたまにはいいでしょう、たまには。そう言えば前に教えましたもんね、エルフとかドワーフとか。……まさか、どっかでもうドワーフが生まれてたりしないですよね?


 嫌な予感にため息を吐きたくなりますが、ここで言っても仕方ありません。もしもドワーフの方々を見つけたら、それはそれで興味ありますけど……今はフィーマさん達のことの方が重要です。


「エルフ化について、なにか問題が起こったりとかは?」


「それは――」

「探したぞみなし子!」


 怒鳴るような大声でやって来たのは、フィーマさんと同じように耳が伸びた男性でした。年齢は四十代後半くらいでしょうか。薄い黄緑色の髪と目の、全体的に頭皮の露出が少々高いお方です。


 フィーマさんに向けられた暴言にイラッとしましたが、フィーマさん本人が介入を望んでいないようなので口を挟むのは自重です。今は、まだ。


「そ、村長。いかがなさいましたか」


「いかがもなにもあるか! 全部貴様のせいでこうなったんだぞ!! どうしてくれる!?」


 はい? なんですかそのクレーマーもビックリな言いがかりは。フィーマさんまったく関係ありませんけど?


 村長と呼ばれた男性は、口角泡を飛ばす勢いでフィーマさんを責め立てます。


「お前が最初にそんなちんちくりんな耳になったんだ!! どうせみなし子で生け贄の役もロクにやれないようなお前が、どこぞから怪しい病でも持ち込んだのだろう!!」


「いえ、決してそんなことは……!!」

「黙れ、口答えしていいと誰が言った!! 親にも捨てられたお前のようなゴミクズを、そこまで育ててやったのは誰だ!? えぇ!?」


「……村長、です」


「わかっているなら、お前がどうにかしろ!! そうだ、病ではなく呪いやもしれん。呪いならば最初にかかったお前さえ死ねば、全部解決するに決まって――」

「私の友達をそれ以上愚弄するのであれば、容赦はしませんよゴミジンコ」


「だっ、誰だ!?」


 フィーマさんの後ろにいた私の姿が目に入っていなかったのか、村長は辺りを見回した後、訝しげな目で睨みつけて来やがりました。フィーマさんは青い顔でこちらを見ていましたので、視線で大丈夫ですよと伝えてから村長に向き直ります。


「お初にお目にかかかりますね名ばかり村長とやら。私はミーシャと申します」


「何者だお前!!」


 おやおやまあまあ。本名を名乗っても、私の正体に気が付かないようです。フィーマさんは最初から私がこの世界敵に神だと認識していましたが、この方は名前すら知らないようですね。ま、目の前にいるのが神です、なんて言われてそうそう信じないでしょうから仕方ないかもですが。


 それにフィーマさんと初対面の時のことを考えると、名前は知っていたとしても顔は知らないですか。


「とりあえず、お名前よろしいですか? あなたみたいな人間に、村()だなんて呼びたくないので」


「ば、バカにしてるのかお前!? よかろう名乗ってやろうではないか! おれはこの村を治める、ティックス・ドゥンガだ!」


 名字持ちですか、なるほど。ならあれですね、貴族的なつもりなんですね。こんな小さな村の中で。へー。


 やはり、この村で一番偉い人間のようです。フィーマさんがいつも自分なんか、とか言っていたのは、こいつが原因でしたか。そうですか。


 私達の間でオロオロしっぱなしのフィーマさんには悪いですが、友達をバカにされて黙っていられるほどできた人間じゃないんですよ、私。


 さて、どうしてくれましょうね……?


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