二十五話 そろそろダンジョンも終わりだと思いますが……
ケルベロスフィッシュを力を合わせて倒した私達は、水中にポツンとあった扉をくぐり、次の階層へと進みました。
そして現れたのは、普通でしたら生物がほとんど存在できないような殺風景。
「草原、水中、と来て、今度は火山ですか……」
火山と言うか、火山群と言った方が正しいですね。あちらこちらに、見上げると首が疲れるサイズの火山がいくつもあります。その間の谷の部分を進んで行く仕様のようですね。
にしても、草、水、火で御三家そろっちゃいましたよ。ってことは、ここでダンジョンも打ち止めですかね? そうだといいんですけどねぇ……ナノさん達って、ホントに何しだすかわからないですから。警戒しておいて損はないでしょう。
「フィーマさん、体調は大丈夫ですか? 火山だらけですし、暑かったりします?」
火山があるような場所ですので暑そうだなと思い訊いてみると、すでにフィーマさんは汗びっしょりになっていました。
「え、ええ確かに暑いですが、気合いでどうにかなるレベルです!」
「いえあの、辛いなら辛いってハッキリ言ってくださいね?」
あまりムリを重ねると、人間であるフィーマさんは本気で危険です。今の私は暑さも寒さも感じないので、よりフィーマさんの体調は気にしなければ。
普段フィーマさんが住んでいる村は比較的温暖なうえに気温の変化がほとんどない地域なので、暑いのには慣れていないでしょうし。
「シルフさんとノームちゃんは大丈夫ですか? マズいようでしたら実体化を解除してくださいね。私から頼んでおいて、とても申し訳ないのですが」
「わたくしは全然問題ありません! たかだか燃える土程度、我が風で吹き飛ばしてご覧にいれますとも!!」
「マグマを吹き飛ばしたとしても、ここではあまり意味がないと思いますよ……」
なにせ、周り全てがマグマなのですから。例え山一つ吹っ飛ばすことができたとしても、焼け石に水ならぬ、焼け石にそよ風かと。
「お、オイラはちょっと厳しいのですな……毛皮ジャマなのですな……」
言うが早いか、ポムッとかわいらしい音を立ててノームちゃんの実体化が解除されました。私の目にはほとんど変わりませんが、これでフィーマさんには見えなくなってしまったでしょう。
「声については魔法で伝達しますので、会話に支障はないと思います」
「おお、さすがミーシャ様ですな、便利なのですなー。フィっちーはいつも大変ですなー」
「確かに大変なこともありますが、嬉しいこともありますから。どっちがいいとか、そういうのはないとわたしは思います」
フィーマさん、言っていることが大人です。私より大人かもしれません。私の場合はただ他人と感覚がずれているだけですし。それがなんとなーく大人っぽく思われたこともあったのですが、中身普通にガキですからね私。
案外私よりフィーマさんの方が神ポジ向いているのではなどと考えながら歩いていると、ふと妙なことに気が付きました。
すでに扉から一キロは歩いているのですが、魔物が襲って来る気配がまったくしないのです。それどころか、動くものの気配も皆無です。どうも気温は高いようですが、火山が活動しているわけでもないようで……
そう言えば、空は明るいですし天気もいいですね。火山が活動していれば噴火したわけですから、当然火山灰で空が曇るはずなのですが。そんな気配すらもないのです。
気になって近くの岩場の影を魔法で調べてみますと、そこにあったのはなんと魔物らしき死体が無数。一体どころではなく、最低十体はいます。
「みなさん、なにか気づいたことってないですか?」
「どうされました? 突然そのような……」
「んー、シルフさん、ちょっとそこの岩場を見てもらえませんか。それがもっとも手っ取り早いです」
私のお願いを一も二もなく了承したシルフさんはものすごい勢いで岩場を見て来ると、その瞳を驚きでいっぱいにしていました。
「ミーシャ様、これは……」
「ええ、なぜか魔物が死んでいるんです。さっきからなにも襲って来ないのは、そのせいですね」
そう言うと、三人とも不安そうな顔で辺りをきょろきょろと見回し始めました。
「あ、大丈夫です。私達の他に誰がいて、こんなことになったわけではないみたいですから」
「と、言いますと……」
「どうも、熱中症で死んだみたいなんです」
更に詳しく魔法を使った結果、判明した死因がそれでした。岩場で死んでいるのはライガーに牙とか足しまくった見た目の、そうですね、メガライガーとかにしておきましょうか。そのメガライガーなのですが、毛むくじゃらなのです。こんな暑いところに住んでいるにも関わらず。
私がなぜ疑問符を浮かべているのか通じなかったらしく、みなさん首を傾げていました。というか根本的に、熱中症を知らないようです。なので端的に説明してから、話を続けます。
「ええと、それで思い出したことがあるんです。シルフさん、ノームちゃん。あなた方は炎の精霊というものに、会ったことないんですよね?」
「え、ええ。未だ存在していないと思われます」
「オイラも会ったことないですなー」
「ですよね。やはり炎の精霊は存在しないのです。なのにナノさん達は、面白そうとかいう雑な理由で火山フィールドを作ってしまったのでしょう。けれど火の属性を持つ魔物なんていません。そこでなんでもいいからと適当に魔物を連れて来たようですが、環境に合わず死んでしまったのでしょう」
基本的に、ナノさん達大雑把ですからね……そこに気づかなかったんでしょう。つまりここに生きている魔物はほぼいないと思われます。たまたま暑さに強い個体が、もしかしたらいるかもですが。
「つまりここは、真っ直ぐ進めば終わりと言うことで……?」
「フィーマさん、正解ですよ。ええそうです。もしかするとボスくらいはいるかもしれませんが……」
この話をしたおよそ一時間後。私達は干からびた巨大なカエルと、どこかさびしそうにぽつねんとたたずむ扉を見つけたのでした。




