第105話 ムラサキさんに別れの挨拶をしよう
クロムさんは、昨日話した通り、再度、ジーンに
冒険の依頼と報酬の話をかわした。
本人は、入り口まで、見送りにきたそうだったが、
来た時よりも並んでるシスターさんをみて、
諦めたようだ。
「お世話になりました」
「また、いつでも、寄ってください。
こちらに来ていただければ、後はなんとかしますから」
僕らは、別れの挨拶をすますと、一礼して部屋をでた。
クロムさんは、ミカンちゃんを呼び寄せて、
一言二言いうと、こちらに向けて軽く手を振っっている。
僕も、同じように手をふっていると、
駆け足で、ミカンちゃんが、向かってきた。
どうやら、そのままおいて行かれると思ったみたいだ。
教会をでると、ホテルのときのように、
ミカンちゃんを先頭にたち、表通りをあるきはじめた。
進むごとに人通りは多くなり、進みにくくなると、裏通りへと抜けて行った。
裏通りは、流石にすいていたが、
しばらくすると、徐々に冒険者が増えて行った。
ギルドが近づいてきた証拠だ。
ギルドに到着すると、ぼくらは、外でまち、
ミカンちゃんは、姉を呼びに中に向かっていった。
入り口の方は、数日前にきたときよりも、喧噪としてた。
祭りが一昨日よりも近くなったせいなのかもしれない。
直ぐに、二人が仲良く戻ってきた。
「りいなさん、ジーンさん、おはようございます。
もう、出発するんですって、
寂しいです。
また、きてくださいね。」
僕と、ジーンの手を握ると、ムラサキさんは、涙を浮かべている、
どちらかというと、ジーンの方を多く見ているのは、
気のせいではないだろう。
こちらを向きなおすと、
「そうそう、リイナさんが、依頼してくれたデッドリースパイダーは、
退治されました。」
「思った以上に、早く退治できてよかったです」
手を離しながら、話をした。
「ただですね、あの後、他に同種が3匹も出てきましてね、
パーティ同士で、いざこざがあって、
ちょっとギルド内の雰囲気がよくないんです。」
「みんな同じくだもらえたんじゃないんですか?」
「規定どおり、最初の一組だけです、
あとは、通常の魔玉値段での買取りで、
銀貨8~10枚くらいですね。
最初のデッドリーの魔玉の方が小さくて、値段が安かったのに、
金貨一枚もらったのが、
さらにもめる原因になりまして・・
リイナさんは、悪くないんですよ」
「すみません、面倒事を呼んだ感じになりまして・・・」
僕は、体すぼめるしかなかった。
「危険の芽は、早いうちにつめたので、
ギルド職員の中では、ありがたいって思われてますよ。
それに、バジリスクの退治も。
あの時、確実に倒せそうなパーティは、
いませんでしたからね。」
そういうと、バックから大銀貨二枚だして、
手渡した。
「こちらが、バジリスクを倒したギルド内での報酬です。
すこし、色がついてます。早いうちだったので、
早期ボーナスみたいなものです。」
「ありがたく、受け取ります」
「あの時、私と一緒に石になった、冒険者さんは?」
「ばつが悪かったのか、
昨日のうちに、魔王のいるダンジョンに向かうって言って、
パーティで、旅立ったとのことです。
ギルドからも、パーティの人数分の銀貨は提示したって
言ってましたね。」
「あの人がいなかったら、
ぼくは、生きていなかったから、
報酬の半分をあげたかったな。」
「そうですか、きっと、またどっかで会いますよ」
「では、そろそろ、出発します」
「はい、お元気で。
また、立ち寄ってくださいね。
その時は、職員になってますから。
ジーンさんも、是非、またきて、お話しましょう」
そういって、ジーンの手を握り締めている。
「そうですわね、またですわ、ムラサキ」
ぼくと、ジーンは、手をふりながら、離れて行った。
ムラサキさんの目には、涙がたまっているように見えたが、
流すとところまでは、
見ないまま、出発することにした。




