ミッションA オークとの戦い4
ナツメグ隊長が現場の指揮を執る。
深夜、闇に紛れて、宿営地から邪神像を音を立てないように偵察部隊のみで運び出し、黄の洞窟近くに置く。
朝になり、見回りのオークによって邪神像が発見された。邪神像について、いろいろ調べたが、中に入っているものが小麦粉と酒であると講和の貢物だと解釈され洞窟内に持ち込まれた。
「人間どもも貢物とはいい心がけブヒッ。我らオークに恐れおののいているブヒッ。この酒味見したけど度数が高くていい感じブヒッ。この小麦粉も上等でうまいもんが作れそうだブヒッ」
何も知らないオークたちは自分たちが優位に立っていると誤解し、のん気に浮かれていた。
洞窟内で特殊な小麦粉は邪神像の小さな無数の穴からばら撒かれ、空気中に拡散した。邪神像の台から燃焼性の高い酒が少しずつ滴り落ちる。マリーの作戦の条件は揃いつつある。
オークキングに邪神像を見せる直前になって内蔵されていた自動発火装置が作動した。
ドッ! ゴーン!
洞窟内に破裂音が響き渡る。凄まじい勢いの炎が洞窟内にある可燃物に次々と引火してゆく。あたり一面は火の海で地獄絵図である。オークたちは必死で火の手から逃れるべく走り回っている。
その頃、マリーたちの兵は洞窟近くの森に伏せていた。
「いよいよね! 調子こいている豚どもをシバキに行くわよ。思いっきり大暴れしてきなさい。でも、みんな死ぬんじゃないわよ。必ず生きて帰って来るんだからね! みんなで宿営地に帰るまでが任務よ」
マリーが兵士たちを鼓舞していると、ナツメグ隊長が偵察から戻ってきた。
「作戦は上出来と言ったところでしょうか。洞窟内は火の海です。豚どもは大部分が丸焦げです。ただ、オークキングには逃げられました。隠し通路から落ち延びたようです」
マリーのそばにいたバジル中尉が口を挟む。
「隠し通路らしきものは、もうすでに発見しました。ここからそれほど離れていません」
「私の部隊の三分の一をそっちに回すわ。残りはナツメグ隊長が指揮して洞窟正面に向かって頂戴」
黄の洞窟からだいぶ離れた森の中にある大きな岩が動いた。岩の下には穴があり、隠し通路の出口になっていた。そこからオークたちが出てくる。
「まさか貢物が地獄の火炎とは何たる失態。一族の多くの者を失った。これでは捲土重来とはいくまいな」
オークキングは自らの不甲斐無さを嘆いている。お供の部下たちも十数名である。落ち延びたところで、再起を図るには厳しいものがあった。
森の茂みに隠れていたマリーの部隊は完全武装で隠し通路の出口を包囲していた。
「待ってたわよ。豚の王様。たっぷりかわいがってあげようかと思ったけど、やっぱり目障りだから今すぐ消えてくれないかしら。一瞬で葬ってあげるわ」
大砲と小銃の集中砲火でオーク・キングは魔法を唱えることも得意の金棒を振り回すこともできず、消滅した。
「うーん、ちょっとエグかったかしら。でも、気にしないことにしましょう…」