ヒント
スライムには惨敗だ。
目が覚めたら多目的トイレだ。
スライムの体液の中でドロドロに溶けたはずの全身のパーツは、おそらく揃っている。
しかし僕弱いな!
スライムに歯が立たないじゃん!
ゴブリンには負け越し。
スライムには惨敗だ、勝ちが見えない。
仕方ない。
勝てる敵を新たに探すか?
『また逃げるんですね』
また女神の声だ。
「あたりまえじゃん。
勝てないよ!」
『それで良いんですか?
あっちがダメだから、こっちに・・・とか』
一瞬考えたけど良いに決まってるじゃん!
お母さんみたいに、それらしく言いやがって!
お母さんが「死ぬかもしれないけど、さっさと行ってこい」なんて良く考えたら言う訳ないじゃんか!
アンタはいかにも『お前のため』みたいに言いながら、結局は店の事しか考えてないバイト先のコンビニ店長か?
『確かにこの世界のために貴方に少しでも成長して欲しいのは確かです。
でも負けた相手に「勝てないからまた今度ね」と最初から引き下がるのはダメでしょ。
どうやっても現時点では勝てない壁になるモンスターも現れるでしょう。
でもこんな序盤も序盤から諦めていて良いんですか?
悔しくないんですか?
「悔しさ」を感じないと貴方は生き返れないんですよ?』
何でスライムと闘わせたがってるんだか、わからない。
『勝てなきゃ普通は他の方法を考えるんですよ。
諦めが良すぎるのが問題なんです。
良いですか?
「悔しい」と思わなきゃ生き返れないんですよ?
つーか、スライム相手にスッパリ諦めるとか、これからが思いやられますよ』
うるせーな。
物理攻撃一切効かないんだから仕方無いじゃん。
スライムを倒せる武器を何か装備出来れば良いけど、僕は『柔道家』みたいで何にも武器は装備出来そうにない。
スライムを殴った時の感覚を思い出す。
アイツ、カチンコチンだった。
魔法が弱点だとしても、今のところ、僕は魔法を使えない。
スライムを投げようにも、どこがスライムの手なのか足なのか、顔なのかわからないから組むのも投げるのも、どうやったら良いかわからない。
「わかったよ、もう少し勝てる方法がないか考えてみるよ・・・」
わかってる。
今は結構スンナリ勝てるほうなんだ。
敵が強くなってきたら「トライ&エラー」を何度も繰り返さなきゃいけないんだろうし、溶かされて痛みを感じない今回はチャンスとも言える。
後で知ったが、僕のチート能力の源は「悔しさ」で、それがないと『経験値三倍』も『死に戻り』も「悔しさ」が必要だ。
だから簡単に諦めちゃいけない。
・・・でもさあ。
殴ったら拳は折れるし、投げようにもどちらが上かすらわからない。
どうやってスライムを倒せば良いかわからないんだよな。
こういうのは定番として魔法で倒すんだろうけど。
スライム倒せって言うなら何かアドバイスくれよ!
『基本的に不干渉でなくてはいけません』
不干渉じゃないクセに!
本当に不干渉だったら、異世界に人を送り込まないだろうが!
『・・・・・』
何か言えよ!
『呆れてるんですよ。
スライムの棲み家の沼のそばには、老人も子供もいます。
そういった戦士でもない、一般人はどうやってスライムのそばで暮らしてるんですかね?』
そんなもん知るかよ。
『確かにスライムに殺される人も毎年数人はいます。
しかし、スライムなんて日本のスズメバチより、大騒ぎになりませんよ?
スズメバチに殺される人がいるのと変わりません』
だから何だよ?
『本当は不干渉じゃなきゃいけないんです。
ですが、今回はアドバイスじゃなくて女神の独り言と思って聞き流してください。
貴方の諦めの早さは異常です。
もし現時点でスライム討伐が無理なら、討伐者に「働いた金はいらない。僕にスライムの討伐の仕方を教えてくれ!」とついて行っても良いはずでしょう?
勝てないと決めつけて、負けた悔しさすら忘れて・・・私は貴方が何回も負けるだろう、と予想してました。
ですが、ここまで敗北を何とも思わなくなるとは思っていませんでした』
女神はため息をつくように半分嘆きながら言う。
人を勝手に異世界に連れてきたクセにその言い草は何だよ?
わかったよ。
この世界の連中に僕の言葉、通じるんだろうな?
『「翻訳スキル」を身に付けるのはレベル10です。
貴方はまだレベル8なので、この世界の言葉が全くわかりません』
ダメじゃねーか!
『だから私はしばらくはゴブリン退治をした方が良い、と言いましたよね?
貴方が勝手に「スライム退治をしたい」と言い出したんです。
私は基本、不干渉です。
貴方が「スライム退治がしたい」と言い出したら、そうですか、としか言えません。
今でも「あちらがダメなら、こちら」という貴方のどうしようもない性格がないなら、ゴブリン退治の方が良いと思いますよ?
でも貴方は負けて、そのままにしておくべきじゃない。
「悔しさ」を忘れてしまったら、貴方は二度と死に戻れない』
「どうすれば良いんだよ!?」
『ヒントは出しました。
この世界の人々は老人も子供もスライムに対抗出来ます。
あとは貴方が「どうすれば良いのか?」考えてください』
どうやってもこのダ女神は答えを教える気がないらしい。




