顧問
「よう、おっす!」
朝、教室に入って行く時に僕は友達達に声をかける。
「は、はい!」
訳がわからない。
何で他人行儀なんだよ?
ちょっと傷つくじゃんか・・・。
「なんだよ、アイツら?」って正喜に聞こうにも、正喜との席は端と端と言っても問題ないくらい離れている。
女体化して僕は女子の中でも低身長になった。
だから僕は人生ではじめて教卓の真ん前の席になった。
誰の黒板を見る視線にも邪魔にならない。
反対に正喜は窓際の一番後ろの席だ。
そこは正喜より背が高かった男だった時の僕の席だったはずだが、実際に今座ったら前が何も見えないだろうから仕方がない。
僕はブツブツ言いながら正喜に『お前の席はアソコだろうが』と言われた教卓の前に腰を下ろす。
教卓の真ん前の席の周りも人間関係があるようだ。
教卓の前は女子ばかりだ。
背丈が低い子らが揃っているのだから当たり前といえば当たり前だが。
「ライチちゃん、おはよう」背の低い文学少女風が僕に声をかけてくる。
誰だ?マジで知らない。
地味な異性の子って、記憶してる?
どうやら僕が知らないところで、いくらか常識が変化してるらしい。
しかし困った。
僕がこの子を知らない、という事は問題あるようだ。
記憶を総動員する。
・背が低い。
・メガネをかけている。
・運動神経は多分、よくなさそうだ。
・文学少女風。
なんとなく脳裏に少女の名前が思い浮かぶ。
『如月未緒』
うん、間違いない。
やっぱり僕だって、クラスメイトの名前ぐらい覚えてるんだよ。
「おはよ、如月さん!」と僕。
「え?
『如月』?
誰?」女の子は激しく瞬きしている。
どうやら彼女は『如月』ではないらしい。
まぁ、クラスメイトの名前を覚えるのは別の機会にしよう。
だって明日、僕は異世界へもう一回旅立たなきゃいけないし。
異世界に戻る前にやらなきゃいけない事は山ほどあるはずだ。
食材の調達とか。
『クラスメイトの名前を記憶する事』が優先されるなんて有り得ない。
そんな事を考えていると、担任が教室に入って来た。
担任は単純明快な男だった。
・ロリコン
・武道大学卒でスパルタ
・男女柔道部顧問
・どこからでもキレるからあだ名は『マジックカット』、キレ方に法則性がない上にキレないときにはとことんキレない。
男だった時の僕と相性が悪かったせいか僕を目の敵にしていたが、女体化して背が低くて、胸が全く膨らんでいない僕にホレている節がある事を僕はまだ知らない。




