運命
運命は決まっている。
いや、決まっている場合が多い。
運命を覆す事は難しい。
覆すには大きなエネルギーが必要なのだ。
『決まっている』といっても、運命を堕落させるのは簡単だ。
例えば『サラリーマン』になるのが運命の男がいる、とする。
その男が『もう働きたくない!外に出たくない!』と『サラリーマン』ではなく『ひきこもり』になるのはそう難しい事ではない。
だが『努力で結果を良いように変える』のが難しい。
何が言いたいのか?
僕の性別は変わっても『メシマズ』なのは変わらないようだ。
そして妹の作る料理は相変わらず美味しかった。
どうやら『作るのは妹、片付けるのは僕』というルールが出来ているようだ。
無難なルールが知らない間に出来ている。
良く考えたら、僕は異世界での料理も無理なんじゃなかろうか?
僕が食べたキノコは本当に『毒キノコ』だったんだろうか?
僕が料理したから『猛毒』に変化したんじゃなかろうか?
・・・いやいや、ただ焼いただけで『猛毒』になる訳がない。
どうにか皿を数枚割っただけで、食事のかたずけは終わる。
特に問題はない。
食べ終わった食器は毎回屋根裏に仕舞う、というのが如何せん面倒だ。
これで間違いはないと思うが。
僕の食器の片付けを妹がハラハラしながら見ていた。
「私が片付けもやれば良いんだけど、いつかはお姉ちゃんも一人暮らししなきゃいけない事もあるだろうし・・・」との事。
あまりにも過保護な妹を「テレビでも見てな」ととなりの部屋へ追い出す。
片付けぐらい僕にだって出来るよ。
ホラ、お椀は床の下。食器は屋根裏だよね。
箸はベランダのプランターに植えるんだよね。
傍目には台所は綺麗に片付いた。
ちょっと食器が行方不明になっただけだ。
それだってベランダを少し探せば、プランターに箸やスプーンやフォークが規則的に植えてあり、特に何の問題はない。
それより風呂だ、風呂。
異世界から帰ってきて、闇バイトのアジトに行って、何かそのままファミレスのバイトに行ったからな。
休憩してる暇もなかった。
ゆっくり風呂に入って休みたい。
このまま寝て、明日の朝にシャワーを浴びる、という手もあるけど、そうしたら明日無茶苦茶忙しくなりそうだしね。
やっぱり、男の入浴と女の入浴は違うんだろうし。
「それじゃ、先に風呂入って来るねー!」と僕。
「あー!ズルい!」と妹。
何が『ズルい』のか、その時の僕にはわからなかった。
女性の入浴は30分、1時間ぐらい平気でかかるらしい。
つまり女性の家族がいる人は待たなきゃいけない。
女の家族がいる男だって、待たなきゃいけないけど、僕はだいたい部活の後はシャワーを浴びて、風呂はそれでだいたい終わりだったから、妹と風呂の順番で揉めることは滅多になかった。
だから妹に『ズルい』と言われても「何か言ってるぞ」ぐらいにしか思ってなかった。
だが、僕は全く考えていなかった。
妹と険悪だった僕は、すこし揉めただけでも僕と妹は距離を取った。
だが、僕が女体化した今、妹と僕は『妹の中では』険悪じゃない。
だから僕が勝手に先に風呂に入ったら、妹は先に風呂に入った僕を追いかけて風呂に突入してくる。
有り得ないだろう?
例えば兄と弟を想像して欲しい。
当たり前だが『兄弟』というヤツだ。
性別が同じでも一緒に風呂に入るか?
『姉妹』だって同じだろう。
風呂というのはプライベートスペース。
一人で色々と考えをかためたり、整理したり、といった場所でもある。
銭湯、旅館、寮、温泉などの大浴場で見知らぬ人らと並んで入浴する事もある。
「恥ずかしい」とかそういう事じゃない。
一人での入浴はそれだけ贅沢なのだ。
「誰かと一緒に入浴したい」などと考える場合が少ない、少ないはずなのだ。
なのに・・・。
「まったく!
先に入らないでよ!
一緒に入ろうと思ったのに!」と妹。
そちらに視線をやると、そこにはスッポンポンの妹が。
妹と一緒に風呂に入ったのは妹が二年生の時だ。
あの時と比べると妹は体つきが大人になった、と思う。
比べて僕の体つきはどうだ?
その時の妹と比べたら身長は30cmぐらい高い。
僕の身長は平均よりかなり低いが、体つきが子供のそれとは違う。
胸に全く凹凸がないだけだ。
僕と比べて妹は身長も胸も育っている。
ゴチャゴチャと言ったが、結局何が言いたいといえば『高校生の姉妹が同じ風呂に入るのは変だろ?』という事だ。
ましてや、僕自身は自分を女だとは思えてないし。
ウダウダと言ったが、結局何が言いたいかというと、妹は僕の裸を全く意識してない。
で、僕は妹の裸を意識しまくっている。
「おい!
おっぱいだぞ!
揺れてるぞ!」と。
しょうがないじゃん。
肉眼で女性の裸を見たのは初めてだったんだから。
妹にエロスは感じない。
妹も肉親だから?同性だから?




