パンツ
よし、裸で帰るか。
スパーン。
「な、何すんねん!」と僕。
「いや、何か変な事を考えてる気がして・・・。
それより何で関西弁?」と嶺花様。
大体『追い詰められた選択』にこちらの願う選択肢がある訳がない。
まぁ、スカートで帰るしかないんだろう。
ジャージがあれば、それが着替えとして一番良いんだろうけど、どうも女子高生というのは制服姿もオシャレの一部らしい。
ジャージがオシャレなら街中でジャージ姿でも問題ないんだが、ウチの高校のジャージの上下はオッサン、オバハンが農作業姿でしかない。
すると『ジャージの上は羽織るけど下は制服』という訳のわからないジャスティスが産まれがちだ。
僕が通っている高校はLGBTQへの配慮がある程度あって、女子がズボンを履いていても特に問題はない。
年に何人かはズボン姿の女の子を見る。
だから多分明確に言われてはないが、スカートを男が履いても悪くはない・・・いや、悪いか。
その光景を予測してみると、スカートを履いている男の子がポツンと仲間はずれにされそうだ。
だが、別に今のところ女の子がズボンをはいていても問題ない。
変でもない。
ふと思う。
僕は日本に戻ってきて普通に生活するのが当面の目標だ。
はたしてこの『女扱い』は『普通の生活』なんだろうか?
でもゴブリンに思いきり殴られて死ぬ生活よりは幾分マシかも知れない。
何より人との会話が出来る社会というのが魅力的だ。
異世界ではひたすら1人なのだ。
まぁ、会話出来るかわりに恋い焦がれていた相手と会話する事になって、告白する前に脈が全くないことを知るんだが。
しかも好きな女の子の惚れてる男は僕の親友の『正喜』。
僕は一つの重要な事を見逃していた。
僕は『美の女神』の眷族。
乳は全くないがそれ以外の造形は『美の化身』だった。
僕は嶺花様を「美しい」と思っているが、僕と嶺花様は男子人気を二分しているらしい。
自分じゃ全くわからない。
自分は見えないから。
そして背丈が凄い縮んだ。
男子柔道部の団体戦じゃ『副将』か『大将』
体重はそんなにはなかったけれど、背丈は180cmに迫っていた。
『正喜』は185cmを越えていたけれど。
自分の姿、形はまだ鏡で確認していない。
見るのも怖い。
実際には男だったときの面影は残していたが、僕は「別人になっていたらイヤだな」と思っていた。
大体棒も玉も無くなった時点で、そこまで勘は悪くない。
「あぁ、男じゃなくなっちゃったんだな」と。
身長も20cm以上縮んだ。
コレで『元のままだ』なんて感じるほど鈍感じゃない。
僕はボロカスに言われながら着替える。
男モノのボクサーパンツを出した時
「彼氏の?自慢?」と蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
「そんなんじゃないって!」と慌てながら僕。
実際、男だった時のボクサーパンツはサイズ的に緩すぎてズルズルと落ちてきた。
普通にユニクロとか行くじゃん?
いくらボクサーパンツが伸縮性に富んでいても、メンズのLLサイズをレディースのMサイズが適正の人が履いていたらズルズルと落ちてくる。
後から考えてみると、『女神の配慮』なのか持ち物全ては女性モノに切り替わっていた。
何で男モノのパンツが一枚だけバッグに残っていたのか?
これこそが『女神の深い配慮』だったのだ。
「男モノを着たい。
勝手に切り替えてるんじゃねえ!」
『わかりました。
だったら男時代に履いていたパンツを履いてみなさい』
履ける訳もなくズリ落ちてくる。
膝まで男モノのパンツをズリ下ろしながら、僕は半ベソをかく。
「ホラ!
私の着替えの予備のパンツが新品だから履きなさい!」と嶺花様。
「あ、ありがとうございます・・・」
嶺花様のパンツを僕は履いている・・・あ、新品だった。
嶺花様のパンツは『ショーツ』と呼ばれるモノらしい。
僕はてっきり『パンティー』って呼ばれていると思い込んでた。
「あの男モノのパンツだけど・・・正喜くんのモノじゃないわよね!?」何か嶺花様に言われてしまった。
何で僕が正喜のパンツを大事に持ってなきゃいけないんだよ?




