第19話 ギャツりん・カーター
ごめんなさい!!! 予定より3時間強遅れてしまいました!!!
理由…理由ですか!? お恥ずかしい事に、明確な理由はなく、気づいたらもうこんな時間だったんです……そ、そんなことってお嬢様もありますよね!? ね!??
この愚行を!!!大目に見て! 水に流してください!!! よろしくお願いします!!!
めちゃくちゃ早く目が覚めた。今は朝?3時45分。いつもより2時間以上早く起きてる。
「はぁ…学校行きたくねぇな。。。」
ベットから体を起こし、いつも通学に使うバックバックを見る。今日はA担だから1〜4限か…アメリカ文学と生物だりぃな。。。ああ。でも、どうした?とか思われたくない。心配も不安もそういった事、一切気づかれたくない……じゃぁやっぱり学校行かなきゃ。
先週から今日までで3日も休んでるし、これ以上適当な理由で休み続けたら…最悪母さんの元まで電話が掛かってきちゃうかもしれない。。。それだけは避けたかった。
俺は、膝を抱えてじっと朝まで待機することにした。
せっかく早起きできたんだし…こんな体勢で何もせず時間を潰すのは無駄だと頭ではわかってる。それに、やっておいた方がいい事や、やるべき事がいくつかあるのは知ってる。でも、やる気がわかないんだ。体は元気なはずなのに気力がない。。。だから何もすることができなかった。ちゃんと、日が登ってきたら動き出すからさ…それまでちょっとだけじっとさせて欲しい。本当にごめんなさい。。。
今のうちに俺は、精一杯泣いておいた。日中の涙を枯らすかの様に…なるべく声を殺して涙を流した。
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顔を洗って髪を適当にセットする。服も着替えて学校行く準備もバッチリ。
冷蔵庫の中を適当に開ける。そろそろ卵使い切るか…あ。待って?俺今めっちゃフレンチトースト食いたいかも。材料足りてる。それにシナモンパウダーもまだ残ってたはず……甘いものそんな得意じゃない母さんには悪いけど、俺はミルクと卵とシナモンでできた液体にパンを浸しておくことにした。
その後も適当に作って適当に食べて適当に挨拶し、適当に言葉を交わす。
適当に歩き適当に会話し適当に登校する…適当に、、、
「「私はアメリカ合衆国の国旗に忠誠を誓います。その旗が象徴する共和国(アメリカ)に、神の下で一つに結ばれた分かつことのできない国__」」
あ。俺、いつも…なぁなぁっちゃぁなぁなぁだけれど、一応ちゃんと立って、国旗見つめて手を胸に当てて「忠誠の誓い」言えてたのに…今日は、やっぱり人を…2人も殺しているからか、言葉が詰まって上手く言えなかった。母さんとやノアとは普通に話せてたのに……急に話し方を忘れてしまったかの様に声が出ない……どうしたんだよ…俺。。。
「「すべての人に自由と正義がある国に忠誠を誓います」」」
忠誠の誓いが…特にこの最後の”自由と正義がある国に”って部分がこんなにも響いてくる日がくるなんて夢にも思わなかった。
そう言えば、ザミエル…自由は「誰かが決めた選択の上に成り立ってる」って言ってたな。
他者からの解放だと信じたがるけど実際は、誰かが負った制約の上に自分の選択が成り立っているにすぎない…って。
色々考えながら席に着く。1限のアメリカ文学が始まる。内容は『グレート・ギャツビー』
ストーカーみたいな男の話だ。先生が授業を進める。
「前回読んだチャプターの確認だ。『彼は緑の灯を見ていた。それがどんな遠くにあっても…』ここ、誰か解説できるか?……アリンソン」
「はい。ギャツビーは夢の象徴として“自由”を信じた。でも、結局その自由は幻想だったんです」
「うっ…あっ」
声が漏れ、ペンを落とした。先生や一部生徒が俺の方を見る。視線が痛い……
気にしないそぶりを見せるかの様に俺は落としたペンを拾う。
「おい大丈夫か?エイデン」
「…はい」
「じゃぁ。エイデン、お前に聞こう。ギャツビーの“夢”は正しかったと思うか?」
”正しかったか?”という問いで昨日の…俺が、ヴィクター・オルティスを脅迫して殺害した事件を思い出す。正しかった…そう思いたいだけかもしれないな。俺……
まだ手の中にあるボールペンが揺れてカタカタと音を立てる。前を向き直すのも怖くて、俺は俯いたまま返答を返した。
「…………はい」
喉が震え、ただ返事をするだけなのに数秒もかかってしまった。
この問いが怖い。俺自身の事を問われてる気がして……すごく怖かった。
さっきもそうだ。"自由"は幻想……じゃあ、俺が信じた「正義」は何だった?
ノアを救ったつもりで、結局……救えたのか?自由になれたのか???
俺は……
『彼は長い旅を経てこの青い芝生に辿り着いた。その夢はすぐそこにあるように思えて、手を伸ばせば掴めそうだった__』
教科書のここの一節を指でなぞる。
ギャツビーの様に、、、俺だけが地獄に沈んでいくだけなんじゃ……
俺は何か見てはいけない様なものを見てしまった気がした。
視界が揺らぐ。息が止まりそうになる。机の足を右手でぎゅっと掴んでなんとか耐え忍んだ。
(ああ、なんでこんなこと考えてるんだ。これはただの小説だろ。俺の話じゃない……)
そう。俺の話じゃないんだ……大丈夫。朝、ノアちゃんと笑ってただろ?普通に会話できたし、俺も今だって……ちゃんとできてる。だから、大丈夫。。。大丈夫なんだ…。
この、ギャツビーが頭から離れられなくて2〜4限の記憶がない。
昼はノアから避けるかの様に…いや。実際避けてるか。だって俺ノアのロッカーに、
「ごめん。昼やることあるから今日一緒に食えないわ。あとでノート見せて」ってメモ貼って来てるわけだしさ……
久々にカフェテリアに行かずに適当に外で食べた。とても天気がいい。日差しが強く暗い影を落とす。
__「逃げ場などない」と言われている様だった。
次回更新:2025年6月18日(水) 7時頃予定!
『__だからこそ我々は漕ぎ続けるのだ。流れに逆らって、小舟のように、絶えず過去へと押し戻されながら』ってねw
どうでもいいけれど、ようやっと心が動いたフレンチトーストも「適当に」で流されてかわいそうだなと思いました。




