双子の決意
誰かに恋をしたら、その思いが通じ合わないと、死んでしまう? つ、つまり、私が誰かに恋をしたら、その相手も私に恋をしてもらえない限り死んでしまうってこと!?
「だ、だからあんなに必死で、恋をしちゃダメって言ってたのね……」
愛されし者、つまり適性が一つしかない私のような人は、その呪いを持っていることを気にしている人が多いんだって。デリケートな問題だから、大抵はそれを知ったとしても本人に聞くことはないのだそう。
よほど緊急であったり、仲が良かったりしなきゃ、確かに話しにくいかも。だから、受付という仕事をしているにも関わらず、それを匂わせる反応をしたあの人に対してクレアやエクトルはあんなに怒ったんだ……。
「ミクゥの命がかかってるんだもの。どうしてもうるさくなってしまったのよ。だ、だって! 光の呪いってそれだけじゃなくて生涯その人以外に恋をしないっていうしっ、そうなったら相手はしっかり考えなきゃいけないって! それが幼い頃の気の迷いで決まるなんて恐ろしすぎるじゃない!」
そっか、初恋も命がけってことなのね。確かに、小さい頃の憧れが生涯ただ一人だけに恋をするという、そのたった一人になってしまったらと思うと、ちょっぴり困るかもしれないなぁ。
それは、私が恋をしてないからわからないだけかもしれないけど。
「前世のね、ゲーム内のミクゥは間違いなくあの時のエクトルに一目ぼれしていたの。それからずっと、ミクゥは一途に想い続けていて……。でも、ミクゥはすごく心優しいから、現れたヒロインとも仲良くなって、あまり自分の想いを告げなくて。エクトルルートの時はハッキリしないエクトルが最終的にヒロインを選ぶのよ。あのシーンを見た時は、自分がヒロインになってプレイしてるっていうのにミクゥがかわいそすぎてほんと、こいついくらメインヒーローだからって調子に乗ってんじゃないわよ、って何度呪ったかしれないわ……」
「こ、怖いよクレア。そこはゲームなんだから呪わないであげて……?」
ゲームの話になるとクレアったらすぐに早口になるんだよね。我を忘れるっていうか……! たしかに私たちはクレアの前世のゲームにある世界の住人かもしれないけど、現実なんだからあまり一緒にされても困っちゃう。現に、色々と違っている部分もあるわけだし。
「とにかく! 私はミクゥに死なれたくない。ましてや恋なんてものに巻き込まれて、だなんて絶対に嫌! ヒロインがどのルートにいくのかわからないけど、この際相手が誰であっても、ミクゥが誰かに恋をするのが不安で仕方ないのよ……!」
そっか、だからクレアはこんなに過保護だったんだね。これまでだって、それが嫌だと思ったことはないけど、最近クレアは少し心配性すぎるんじゃないかなって気になっていたところだったから、理由がわかって安心したよ。
街に出て、いろんな人に会ったからこそ、クレアが行き過ぎた心配性だって気付いたわけだけど……。
「で、でもね、クレア。今のところそんな予定も、そんな気持ちにもなったことがないから、あくまでもしもの話ね? もしも、私が誰かに恋をしてしまったら、どうしよう」
とはいえ、やっぱり不安要素ではあるよ。この先、誰にも恋をしない! っていくら私が思っていたとしても、気付かないうちに好きになってたとか、そういうことがあるかもしれないんだもん。このまま一生、誰にも恋をしないままでいるっていうのは、可能なのかなって。
「そうなったら、全力でバックアップをするわ。その恋が絶対に実るように、ね!」
私は、生涯恋をしないように、って方向で考えてたんだけど、クレアからは違う方向からの言葉が出てきてビックリした。だ、だって、あんなに恋をしちゃダメって言ってたのに。
「出来れば恋はしないでほしいけど……でも、恋は落ちるものだって聞くもの。それまでは防ぎようがないでしょ? それなら、その思いをなんとしても成就させたいって思うのは当然じゃない」
「……それがエクトルでも?」
「ううぅぅぅ、私の気持ちとしてはすごく嫌よ? でも、もしもミクゥが恋をしてしまったっていうなら、応援する。だって、ミクゥの命の方が大切だもの!」
そう言いつつも、エクトルはヒロインに恋をされたらそっちに靡くから信用ならないわ、とクレアは眉間にシワを寄せている。
その様子がなんだかおかしくて、自分の呪いを聞いたばかりだっていうのに思わず笑ってしまった。
「クレアったら。わかった。私ももし誰かに恋をしてしまったら、真っ先にクレアに相談するって約束するね」
「ええ、そうしてもらえると嬉しいわ」
クレアがいてくれたら、不思議となんとかなるって思っちゃう。不安なんか吹き飛んじゃうよ。そう言ったら緊張感がなさすぎるって怒られちゃったけど、でも本当なんだもん。
「でも、その代わりにクレアも誰かに恋をしたら私に教えてよ?」
「えっ、私? ないわよ、ぜーったいにない! だってここがリアルだってわかってはいるけど、どうしてもゲームのキャラにしか思えないんだもの」
クレアはそう言って笑うけど、絶対なんてないと思うんだけどなぁ。いつかは、誰かに恋をするかもしれないもの。
「そのゲームに出てこなかった人とかはわからないでしょ? クレアの知ってるゲームよりずっと後の未来のことだってわからないんだから、約束! いつになったとしても、クレアが恋をした時は私に教えることっ!」
「わ、わかったわよ。そこまで気にするぅ?」
「するよ! クレアが私を気にしてくれてるのと同じでしょっ」
しつこく言うことで、ようやくクレアと約束することが出来たよ。本当に、クレアは人のことには察しがいいし突っ走れるのに、自分のことには無頓着なんだから。
作業を再開させながら、クレアのことは私が見てなくっちゃって改めて決意したよ!






