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シナリオなんていらない!〜ライバルキャラの狐っ娘〜  作者: 阿井りいあ
上級ギルド ラナキラ

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愛されし者


「はーっ、到着っと! おいクレア、これ全部キッチンでいいか?」

「ええ、お願い。あとはやっとくから」


 それから、三人でたっくさんの買い物をしてからラナキラに戻ってきたのはお昼過ぎ。途中で昼食に屋台でパンを買って食べたりもしたけど、結構時間がかかっちゃったな。リニはお昼にもお肉を買ってたけど。本当にお肉が好きなんだね……。


 それにしてもたくさん買ったなぁ。それを軽々持ってくれたリニもすごいけど、遠慮なくあれもこれもと買っていくクレアもすごかった。思い切りの良さにリニもお店の人もポカンとしてたもんね。


 品物をしまうのを少し手伝った後、リニはちょっと出かけてくるとまたラナキラを出て行った。帰ってきたばかりなのにまたどこかに行くのかな。元々用事があったのかもしれない。

 そうだとしたら、買い物に付き合わせてしまって悪かったな。荷物を運んでくれてありがとう、リニ! 心の中でお礼を言いつつ背中を見送る。


「じゃあ、私たちは早速仕込みをしちゃいましょ! ミクゥ、手伝ってくれる?」

「もちろんだよ、クレア」


 キッチンに残った私たち二人は、腕まくりをして今夜の準備に取り掛かります。野菜を洗ったり、サラダ用の葉野菜を手でちぎったり、私はクレアに指示されたことをせっせとこなしていく。

 料理の場ではクレアの言うことを聞いて動くのが一番効率がいいんだ! これまでの経験からいって、よかれと思っても勝手な行動をしない方がいいってことを学んでるからね。


「……ねぇ、クレア。今日ね、受付のところでエクトルと一緒に怒ってたでしょ? あれは……なんで? みんなは私の個人的な情報に関わることについて、あの人がわかりやすく反応したからだって言ってた」


 しばらく無言での作業が続いたから、私は思い切ってクレアに聞いてみることにした。今は二人きりだし、聞くチャンスだと思って。

 クレアは一瞬だけピタッと手を止めたけど、すぐに黙って作業を進める。私は続けた。


「みんな理由を知ってるみたいだったの。ねぇ、クレア。私も知りたい。自分のことだもの。お願い、教えて?」


 顔を上げてクレアをジッと見つめる。すると、クレアはしばらくうー、と唸ったかと思うと、すぐに大きなため息を吐いてこちらに目を向けてくれた。困ったような、呆れたような、そんな顔だ。


「んもう、そんな風に言われちゃったら黙っているわけにはいかないじゃない。でも……そうよね。気になるわよね。ミクゥも成長したんだもの。受け止められるわよね」


 そして、クレアは諦めたように眉尻を下げて笑った。成長した、って。クレアと私は同じ年じゃない。前世の記憶がある分、気持ち的にはもっとお姉さんなのかな? しっかりしてるし、それは別にいいけどっ。


「ただし! ショックを受けすぎないでね? ミクゥのことは私が守るって約束するから!」

「う、うん。何を聞かされても平気なように、心構えは出来てるよ!」


 これまでだって、クレアからは突拍子もない話ばかりを聞かされてるんだから。私はギュッと胸の前で拳を握りしめてクレアを見つめた。緊張で尻尾が少し膨らんでしまうのは許してね。


「……ミクゥは、魔法の適正が光だけでしょう? でもね、大体の人は適正は二つ以上持っているのは知ってる?」

「うん、知ってる。みんないいなぁって思ったことがあるもの」


 実は、私以外で適性が一つだけって人に会ったことはないんだよね。それが少し、そう、ほんの少しだけコンプレックスなんだけど。でも、幼い時にクレアが言ってくれた言葉があるから、いつだって立ち直れてきたんだ。


『ミクゥは愛されし者なの。えーっとつまり、それほどミクゥは光に愛されてるってことなのよ。他の適正があったら光がやきもちを妬いちゃうんだわ!』


 あの言葉を思い出すたびに、私は自分の適性が光だけでもよかったなって思える。自信が持てる。全部、クレアのおかげ。


「あのね、適性が一つしかない人っていうのはミクゥ以外にもそこそこいるのよ。そういう人達は愛されし者って呼ばれているわ。その魔法の威力が他の人たちに比べて段違いだからね。ほら、小さい頃にも言ったでしょ? 光に愛されてるって」

「! うん、ちょうど今、同じことを思い出してた」


 私が答えると、そう、と悲しい微笑みを浮かべた。悲しそうではあるけど、優しい眼差し。きっと、ここからが大事なことなんだね。私は軽く頷いてクレアに続きを促した。


「その適正に愛されすぎるとね、実際にやきもちを妬かれてしまうのよ。子どもの時に冗談っぽく話したことは、事実でもあったの。つまり、一つの適正しか持たない人は、その属性によって異なる呪いとも言えるリスクを生まれながらに背負うことになる」


 呪い? そう聞くと、なんだか怖いな……。言葉の響きがなんだか嫌な感じだからかな。

 そっか、だからクレアは幼い頃、やきもちだなんて可愛い言い方をしてくれたんだ。私が怖がらないように。その優しさに気付いたおかげで、不安になった心が少し癒される気がした。


「たとえば、もし私が炎の適正しか持っていなかったら炎の呪いを背負っていたわ。炎の呪いは『激情』。感情が昂るとその身と周囲を炎で包み込んでしまうの。だから、この呪いを持つ人は常に水魔法と結界魔法、または治療魔法が付与された魔道具を身に着けていると聞いたことがあるわ」


 自分の魔力によって生み出した炎だというのに、その炎で包まれると自身にも影響を及ぼして火傷を負うんだって。こ、怖い……!

 だから炎の適正しか持たない人は、幼い頃から冷静でいられるよう心を落ち着ける訓練をするのだそう。そ、そっか。身の危険があるからこそ、呪いって言われるんだね。


「じゃ、じゃあ私の、光の呪いは……?」


 聞くのが怖いけど、ちゃんと知っておかなきゃいけない。ドキドキしながらクレアの言葉を待っていると、クレアは静かな声で教えてくれた。


「光の呪いは『一途』。誰かに恋をした時、その恋が実らないと……文字通り心臓が焦がれて死んでしまうのよ」


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Cross Infinite Worldよりタイトルは「Surviving in Another World as a Villainess Fox Girl!」です!
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