アンジェラ
私はそのままリニとマクロの腕を掴みながらエクトルとクレアの後ろを着いていく。時々リニがもう離してくれても……とか言ってきたり、マクロが無言で振り払おうをしたけど、私は笑顔でそれを阻止したよ。だってこれはお仕置きみたいなものだもん。二人は本当に場所も時も弁えずに言い争うから、これは私なりの怒りの表れなんだ。
振り払おうと思えば多分、簡単だとは思う。けど私がにっこりと笑顔を向けただけですぐに諦めるから、私の意図もちゃんと伝わってるんじゃないかな。そうですよー。ちゃんと反省してくださーい。とりあえず、居酒屋さんまではこのまま行くからねっ。
「……大人しい顔して、怒らせちゃまずいタイプっぽいよな、ミクゥって」
「おい、黙れ馬鹿頭」
コソコソと私の頭上でやり取りしてるけど聞こえてるよっ。まったくもう。
「くっそ、羨ましい。ミクゥちゃんと腕組むとかお前ら後で覚えとけよ」
「え、怒られたいとかエクトル、マゾなの? 引くわ」
「ガチなトーンで言わないでくれ、クレア。さすがに凹むしそもそも違うから」
前方ではクレアとエクトルが会話してるけど、そっちはあんまりよく聞こえなかった。ケンカしてないといいけど……。
とりあえず、このまま気まずい雰囲気の中歩き続けるのは私的にも気まずいので、リニとマクロには話を振ることにした。聞きたいこともあるしね。
「あの、アンジェラってどんな人なの? フリーの冒険者って聞いたからきっとすごい実力者なんだなっていうのはわかるんだけど」
そう、さっきのキーファとキャンディスの時も、詳しいことまでは聞いてなかったから戸惑ったんだよね。話を聞くより実際会ってみた方が早いっていうのはわかるんだけど……やっぱり事前に聞いておきたいと思って。
質問にはリニが答えてくれた。私に掴まれてない方の手で赤い髪を掻き上げながら目線を斜め上に向けている。
「んー、アンジェラはなんつーか、クールなんだよなー。ちょっとつり目で一見とっつきにくそうな印象があんだけど、飯のことになると目が輝いたりして意外と扱いやすいんだ。あと背が高い。エクトルと同じくらいじゃねーかな」
背の高い女剣士さん、か。クールでとっつきにくそうな印象、って聞くと構えちゃうけど、ご飯が好きって聞くと親近感が湧くかも。仲良くなれるかな? クレアの美味しい料理についてしっかりアピールしなきゃ。
「物言いとかもサバサバしてて男勝りなとこもあるな。ま、女の身で男ばっかの中に入って活躍してたらそうなるのもわからなくもねーけどな」
「……冒険者って、やっぱり男の人が多い?」
「まぁな。でも女も結構いるぞ? 魔法の扱いが上手いのは女の方だったりするし。けど、アンジェラは剣士だ。すげぇヤツだよ、あいつ」
たしかに、女の人で剣士として活躍してるのはすごいと思う。女でも、ここまで出来るんだって励みになる人は多そう。同じ努力をした時、どうしても身体の作りからいって男の人の方が有利になるもんね。種族にもよると思うけど……。
なんにせよ、すごく努力したのは間違いない。やっぱりすごい人なんだ。仲間として私が釣り合うかが心配になる。だって私なんて出来ること、少ないもの。
「おい、もう居酒屋につく。いい加減、離せ」
「え、あ、ごめんね。マクロ」
ふと顔を上げると、たしかに少し離れたところに居酒屋さんの看板が見えてきた。慌てて手を離すと、マクロはパッと腕を自分の方に引き寄せて軽くさすっている。そ、そんなに嫌だったのかな。ちょっと申し訳なかったかな……でもここにくるまで黙ってされるがままにしてたし、反省してた、とか? うーん、マクロは表情もあんまり変わらないから読めないな。嫌われるのもやだし、気を付けよう。
スタスタと歩くスピードをあげたマクロの背を見ながら、私は反省しつつ居酒屋の入り口を通り抜けた。
「お、いるじゃん! おーい、アンジェラ!」
中に入ると同時に、リニがキョロキョロと辺りを見回し、すぐに目的の人物を見つけ出した。リニは背が高いからこういう人の多い場所でも探すの得意そうだな。
大きく手を振りながら呼び掛けたその声に、一人の女性が振り返ったのがわかった。その姿を一目見た瞬間、すぐにその人だっていうのがわかったよ。呼びかけに振り返らなくてもわかったかも。だって、すごく目立っていたから。
サラリとした長い水色の髪をポニーテールにした長身の女性は凛とした佇まいで、なんというかオーラみたいなものを感じる。圧倒的な存在感、っていうのかな……強者の風格があるっていうか。え、こんなにすごい人が仲間になるの? まだ決まってないけど。
「なんだ、依頼か?」
呼ばれた女性、アンジェラは真っ直ぐこちらに向かってやってきた。どことなく親しげな素振りで、顔見知りなんだなっていうのがよくわかる。近くで見るとたしかに大きい。でもスラッとしていてスタイルが良くて……。
「かっこいい……」
「ん?」
あっ、声に出てた! 慌てて両手で口を塞ぐも、もう遅い。こちらに視線をよこしたアンジェラは私を見つめ、わずかに目を細めた。うっ、美人さんだぁ……!






