新作の魔道具
「あ、そうそう。それならこの新作あげるよ」
そろそろ次の場所へ、と思ったところでキーファが何かを差し出しながら私たちを引き留めた。金色に輝く腕輪に緑色の石が埋め込まれたそれはとっても綺麗。
「ブレスレット?」
「そう。ほら、自分とお、そ、ろ、い!」
エクトルの言葉に答えながら、キーファは自身の腕を見せてきた。彼の腕には同じデザインで色違いの腕輪が嵌められている。キーファのは黄緑の土台に黄色い石が埋め込まれているみたい。
「……気持ち悪い」
「エクトルは冗談が通じないなぁ。ははは! 自分だってお揃いにするなら可愛い女の子とがいいよ!」
本気で嫌そうに顔を歪めたエクトルだったけど、ブレスレットは受け取っていた。もしかして、魔道具なのかな?
「今度はどんな魔道具なんだ? 感情が昂ると虹色に光るやつ? それともボタン一つで瞬時に甲高い音がなるヤツ?」
「それは前にあげたやつだろー? あれもなかなかの力作だったねぇ。覚えていてくれて嬉しいよ」
半眼になりながら聞くエクトルに、キーファは嬉しそうに何度も頷いている。虹色に光る? 甲高い音? それってどんな場面で使うんだろう。作ってしまうのはすごいんだけど。
「今回のはすごいよー?」
キーファはふふふ、と微笑みながら人差し指を立てた。それを見てリニが、いつも同じこと言ってんだぜあいつ、と耳打ちしてくる。な、なるほど? それはつまり、自分の作品に自信があるってことだよね!
「何とこのブレスレット、離れた場所にいる相手と話せる機能がついてるんだ! 名付けて『離れていても話せる魔道具』!」
「毎度毎度、名付ける気ないでしょ」
た、たしかにマクロの言う通り、ネーミングはそのままだね……でも、離れてる相手と話せるなんて、すごい道具じゃない? 特殊なそういう魔術を使える人は出来るって聞いたことがあるけど、魔道具なら誰でも使えるっていうのがすごい!
「ま、まじで!? うっそ、キーファ、久しぶりのヒットだぞ、これは!」
「何を言ってるんだよエクトル。自分の作るものはいつでもヒット商品だから」
エクトルが大興奮してる。やっぱりすごい道具だってことだよね? クレアが小声で、通信機能はどの程度なのかしら、なんて呟いてる。ってことは、前世にはそういう道具があったってことかな。以前から思ってたけど、クレアの前世の世界は、たくさんの便利な道具があって本当にすごいな。生き物じゃないのに走れる乗り物とか、空飛ぶ乗り物とか聞いた時はすっごくびっくりしたもん。
「これはまだ試作品。だから試しに使ってみてよ。今はエクトルのと自分のだけが話せるようになってる。そのうち仲間分も作って、指定された相手だけ話せるようにしたりとか出来るようにするつもり」
「それはすごい、まじですごい。ちなみに、範囲は?」
「使用者の魔力次第だね。エクトルならここから隣街とか、周辺の森くらいならいけるんじゃない? でも自分がそんなに魔力がないから、せいぜいこの街中くらいってとこかな」
「なるほど、会話する相手の中で一番魔力の少ない人に合わせた範囲になるってことか」
基本的には魔力を使った道具になるから、どうしても少ない方に合わせる必要があるんだよ、とキーファは言う。十分すぎるほど便利な魔道具だと思う。
「でも、随分用意がいい。僕たちが勧誘にくるって前提で、作ってた?」
「当然さ、マクロ。ただ、人数がわからなかったからね。今日知れたし、これから作るよ」
最初から仲間になるつもりで準備しててくれたんだ。寝る間も惜しんで……!? 驚いていると、寝る間も惜しんで没頭するのはいつものことだよ、とキャンディスが教えてくれた。あー、でもそれはわかる気がする。
「あの、でも、程々にね? キーファ、本当にいつか倒れちゃうよ? それに、キャンディスに心配かけすぎちゃダメだよ?」
いつものことだからって、今日も明日も大丈夫とは限らないもんね。いくらキャンディスが世話を焼いてくれてるからって、それに甘えてちゃダメだと思う!
「そうね。キーファ。貴方はもっとしっかりすべきだと思うわ。大丈夫だなんて言葉に保証なんかついてないもの。いつか倒れた時に、一番心配して迷惑がかかるのが誰か、しっかり認識したら?」
「クレア、だったよね? 今初めて自分と会話したっていうのに容赦ないなー。強気な女の子もいいね」
「話を逸らすんじゃないわよっ」
クレアの言葉は正論なんだけど、どうしても言い方がきつくなっちゃうんだよね。でもそれをははは、と笑って聞けるキーファは大人だな、なんて思うな。きっと、言われた言葉の意味も伝わってるはず。
「ごめんごめん。なかなか耳に痛い言葉だったからつい。肝に銘じるよ。キャンディスも、いつもありがとうね」
ほら、やっぱり伝わってた。少しだけ眉尻を下げて頬を掻く様子はを見てたらわかるもん。それを素直に聞き入れる柔軟さも持ってるみたいだね。話を振られたキャンディスはちょっぴり顔を赤くしている。
「わ、わかればいいよ。でもどうせ、同じこと繰り返すんでしょ」
「んー、善処はするって。本当に」
「はぁ、本人だって夢中になることを止められないんだもんねー。ただ、キャンが止めたらすぐに言うことを聞くようにして!」
「わかったよ。キャンディスがしっかり者で助かるなー」
この二人は信頼関係が出来上がってるんだね。なら、これ以上何も言うことはないかな? クレアと目配せしながら、私たちはふふっと笑い合った。






