私たちのシナリオ
いつも通りの日常が戻ってきた。ララが仲間になったことで、加入の手続きをしたりはあったけど、それ以外は前の穏やかな日常が帰ってきたって感じかな。
私の呪いの痣は、いつの間にか消えていた。あの日の夜、お風呂に入る時に気付いたんだよね。
うっ、今思い出してもあの時の行動は恥ずかしい! 顔から火が出ちゃいそう。
何があったのかって言えば、そのぉ……脱衣所で服を脱ごうとしていた時に気付いたから、驚きと喜びで思わず胸元がはだけた状態のまま、マクロの部屋に向かっちゃったんだよね……。
「マクロ!」
「ミクゥ? 何? 入っていいよ」
すごい勢いで部屋のドアを叩いたら、驚いたよう声が室内から返ってきたっけ。許可を得たからそのまま中に入った私。胸元は、はだけたまま……!
「!? ミクゥ、ちょ……」
「見て! 呪いの痣が消えているの! これって、解呪出来たってことでいいのかなぁ!?」
一気に顔を赤くして慌てるマクロに気付かないまま、私は涙目でそう訴えた。だ、だって、本当に呪いが消えたのかって思ったら嬉しくて安心してどうしようもなかったんだもん!
「ほ、本当に消えたんだよね……? もう、怖い思いをしながら生活しなくて、いいんだよね? うぅ、マクロのおかげだよぉ」
「ミクゥ……」
私がパニックになっていることに気付いてくれたマクロはそのまま私をギュッと抱き締めてくれた。
それからフワリと私の身体に自分の上着をかけてくれながら言ったの。
「よかった。本当に。そう、思うけど……。その、胸元は、隠して。さすがに」
「え? ……あ、ひゃ、ひゃあっ!? ご、ごめっ!!」
あの時の気持ちはもう言葉には言い表せないよ……! 今思い出しても床で転げまわりたくなるくらい恥ずかしいもの!!
しかもあの後、マクロは私の耳元でこう言ったんだ。
「別に僕はいい。よくないのは、ミクゥの方じゃない? 僕に襲われても、知らないから」
「お、襲わ……っ!?」
「しないよ。ああ、もう。そんなに慌てないで。……可愛すぎて本当に襲いそう」
「かわっ……!!」
あの後、どうやってマクロの部屋を出たのかは正直、覚えてない。うぅ、恥ずかしいし、ちょっと悔しいっ!
思い出してはこうして赤面する日々。私、本当にもっと落ち着いた方がいいと思う。
「ミクゥ、お待たせ」
「ひゃいっ!」
そして今日は、私の久しぶりのお掃除のお仕事がある。まだ心配だからってマクロが一緒に行ってくれるんだけど、このように待ち合わせで声をかけられるだけでこれですよ。な、情けない!
「まだ普通に戻ってくれないの」
「だ、だってぇ……」
「虐めすぎたかな。今後は気を付ける。もしくは慣れてもらおうかな」
こんな調子だもん。マクロって色んな意味で容赦がない! 思っていることもストレートに言ってくるから心臓が持たないぃ。
「はぁ、相変わらず仲がいいこと。そろそろ行かないと遅刻するよー?」
「そ、そうだった! 行こう、マクロ!」
「はいはい」
恥ずかしさを誤魔化すために、私はサッサと玄関に向かった。背後からマクロが呆れたように返事しながらついてくる。
けど、きっと困ったように笑っているんだろうな。はぁ、からかわれてばっかりだよ。いつか仕返ししたいんだけどなぁ。何か出来ないかな?
たまには私から勇気を出してみても、いいかな……?
ドアを開ける前に、クルッと後ろを振り向く。マクロがどうしたのかと首を傾げているのを見て、またときめきそうになっちゃうな。ううん、頑張れ私! 勇気を出すんだから。
「あ、あの、マクロ」
心臓が口から飛び出そう。けど、呪いがあった時のような痛みはない。このドキドキはとても心地の良いドキドキだ。よ、よし。
「手を、繋いでもいい、ですか……?」
「!」
い、言ったぞーっ! 自分からちゃんと! 本当は、想いが通じ合ったあの日からずっと、手を繋いで外を歩きたかったんだ。
でも、外を歩くときは今みたいにだいたい仕事の時だし、そうまた長い時間でもないからって遠慮してたんだよね。
だ、だけど。やっぱり……触れたいから。恋って、不思議。どんどん欲張りになっちゃうんだね。
「手だけじゃ、嫌だ」
「え」
グイッと手を引かれて思わずよろけそうになる。そのままマクロが手を引いた方の腕で私の身体を支えて、反対の手は頬に当てられて、それから……唇に、温かくて柔らかな感触がした。
え。え? えええええええっ!?
「今のは、ミクゥが悪い。これでも僕、毎日我慢してるんだよ」
驚いて見上げた先には、真っ赤な顔をしたマクロがいて。
すごくビックリしたし、恥ずかしくてどうにかなっちゃいそうだったけど……。マクロも同じ気持ちでいたんだってことが嬉しくて、幸せで。
「……そんなに、我慢しなくていいよ」
気持ちが溢れてきて、私はマクロにギュッと抱きつきながらそう言った。心臓に当てた耳が、マクロの速い鼓動の音を拾う。
ふふ、それも一緒だったんだね。うん、私だけドキドキするなんて不公平だもの。
「じゃあ、今後は我慢しない」
「うん。嬉しい」
顔を上げると、またマクロの顔が近付いてくる。私はソッと目を閉じて、幸福を受け入れた。
心地の良い陽気の中、私とマクロは手を繋いで歩く。こんな未来が待っているなんて、人生ってわからないな。でもまだ、人生にはもっともっと色んなことが待っている。
大変なこともあるだろうし、悲しくて辛いこともあるよね。その分、嬉しくて幸せなこともきっとあるはず。これから先の未来はもうクレアにもエクトルにもララにもわからない。
だけど、それは普通のことなんだよね。マクロと、そして仲間たちと一緒なら未来がわからなくても楽しみでしかない。
だってこれからは私たちの歩いた道が、私たちだけのシナリオになっていくのだから。
これにて完結です。
お付き合いいただきありがとうございました!!






