愛しいという事
「――猫、起きてるか?」
ユキに安静にして下さいと寝かされて――ついでにユキもベッドに引きずり込んで――から少しして、ドアから軽いノック音がした。
この部屋の持ち主である店主のおっさんの声がドア越しに聞こえる。傷の様子を見に来たのだろう。昨日から迷惑をかけっぱなしだと反省する。
「あぁ、起きてるよ」
「ドア開けていいか?」
「少し待ってくれ」
その声に応えながらユキを抱きしめていた腕を離すと、名残惜しそうにユキはベッドから降りた。
流石にベッドの中で抱きしめあってるところを見られるわけにはいかない。見られたら色々な意味で死にそうな気がする。
傷の確認の為に肌蹴ていた服もきちんと着直して――それを見たユキがとても残念そうな顔をしていたが気にしないようにした。
「もう大丈夫だ」
「おう、邪魔するぞ」
ドアが開けばそこには坊主頭が厳めしいおっさんと、その後ろにはユキの両親がいた。
ユキの両親とはいえ、慣れない人間がいる事に少しだけ緊張してしまう。それを敏感に察知したのか、そっと手を握ってくれるユキの手がありがたかった。
「おはようございます、おじ様。それにお父様、お母様も」
「お、おう、おはよう嬢ちゃん」
「おはよう、俺のお姫様」
「おはよう、私の天使様」
挨拶は大事と言ったユキはその言葉に従う様に部屋を訪れた全員に朝の挨拶をした。
おっさんは私と同じで慣れぬ様に少し照れくさげに。ユキの両親は――にこやかに凄い恥ずかしい事を言っている気がする。
「………お父様、お母様、人前でそれは恥ずかしいです」
(あぁ、やっぱり恥ずかしいんだ…)
真っ赤になって俯いてしまったユキは可愛いが、何となく同情してしまう。
当の本人達は「本当の事だから仕方ない」と平然な顔をしている。これが『溺愛』というものか。
「アイさんもしてください」
「ん……いや、私は」
「挨拶は大事ですよ?」
赤い顔のまま、それを誤魔化す様に私にも挨拶を促してくる。
普段しない事をしろと言われても無性に照れくさい。先程の事も相手がユキだけだったから素直に言えたようなものだ。
それでもユキが握った手を優しく揺らしてくるものだから。何となくしてみようかなと思う私は案外単純なのかもしれない。
「………おはよ、ぅ」
最後は照れくさくて声が小さくなってしまったのは仕方ないと思う。他人にするのは慣れていないのだ、仕方ないといったら仕方ない。
ユキ以外の全員の目が大きく見開いて驚いた様に私を見つめていた。こうなる事はある程度予想していたが、いざそんな目で見られると気まずい。
私みたいな『半魔』に挨拶されても困るだけだとも分かっていたのだ。昨日から困らせてばかりだと心の中で反省し――。
「お、おはようございます、アイさん!!!」
「おはようございます、お怪我は大丈夫ですか!!!」
「うぇ!?お、おう、大丈夫、だけど」
反省しようとして、ベッドとの距離を一気に縮めてきたユキの両親に思わず身を逸らせる。その動きで痛みが走ったがそれどころじゃない。
(な、なんでそんな、嬉しそうな顔してるんだ…?)
頭の中が困惑でいっぱいになる。私を見つめる二人は嬉しそうな笑みを浮かべてキラキラとした目で見てくるし、何がどうしてこうなってるのかまるで分らない。
助けを求める様にユキを見ると、ユキも困ったような笑みを浮かべていた。それでも、その笑みに悪い感情は入っていない様だったから、少しだけ緊張で強張った体を緩める。
「お父様、お母様、アイさんがびっくりしてますよ」
「あ、あぁ、すいませんつい!!!あ、俺はレティシアの父親のカインといいます」
「レティシアの母のレイラです。レティから話を聞いたんです。本当にお世話になりっぱなしだったようで…ご無事で良かった」
「いや、私はそんな……ユ…レ、レティシア、何話したんだ?」
「森から連れ帰ってもらった事とか、夜に話し相手になってもらったりとか、熱を出したときの事とか色々掻い摘んで話しました」
「お、おう、そうか…」
両親の態度から見ると、多分差支えのない部分だけ話したのだろう。少しだけ安心する。色々とユキにやらかしているのでそれがバレたらタダでは済まない気がする。
罪悪感で胃がちくちくと痛む様な錯覚を覚えながらも曖昧に頷いた。今はあまり深く考えないようにしたい。まだキスしかしてません。それだけでも十分危ういとは思うが。
「レティを末永く、宜しくお願いします」
「レティシアは大事な娘なんです。大切にしてくださいね」
――前言撤回、既に色々と手遅れな気がする。ユキの両親は笑顔の中でも目だけはすごい真剣だ。こわい。ユキと両親のまわりに包囲網的な何かが見える気がする。こわい。
じっとりと背中に嫌な汗をかいているのが分かる。悪意は感じないのに何故か追いつめられている気がする。こわい。
「レティシア、本当に掻い摘んで話したのか…?」
「はい、掻い摘んで将来を共にしたいヒトだと言いました」
「掻い摘み過ぎじゃないか!?」
「嫌でした?」
ぐっと言葉に詰まる。その言葉と顔はずるい。悲しそうに目を伏せるのはずるい。あとユキの両親は真顔で此方を見ないでください怖いです。
軽く息を吐いて気持ちを落ち着ける。別に私も嫌なわけじゃないのだ。むしろ望むところではあるのだが。
「……私よりも、レティシアの親としてはどうなんだよ」
私の言葉に目の前のカインとレイラはきょとんとした顔で顔を見合わせる。いや、そんな顔されても困ると言うか。
ユキはまだ12歳だし、私と歳が13も離れている。しかも女同士。極めつけに私は『半魔』である。愛する娘に望ましい相手ではないと自覚はあるのだが。
「レティに話を聞いた限りだと本当にお世話になったようですし。父親としては下手な男につかまるよりはレティを大切にしてくれるヒトの方がいいので」
「それにあんな魔物を倒せるぐらい強いのならレティに何があっても守ってもらえそうですしね」
「いや、女同士とか半魔とかは…」
「ソレは娘の気持ち以上に重要な事ではありませんので」
「お、おう…」
かなり重要な事の様な気がするが、完全に言い切ってしまったレイラに何も言えなくなる。
色々と言いたいこともあるのだが下手に突っ込んでユキと会えなくなるのも困るし、どうしようかと迷って視線を彷徨わせていると複雑そうな顔をしているおっさんと目があった。
目があったことで更に苦虫を噛み潰した様な、何処となく寂しさを感じさせるような、そんな複雑な顔をされた。どうしてそんな顔をされるのか分からない。
「猫…お前、こんな小さな子に…俺はてっきり妹みたいな感じだと思ったんだが…」
「いや、ちが、やめろ!地味に心に突き刺さる事を言うのは止めろ!」
心臓に釘的な何かを刺された気がする。凄い痛い。自業自得の様な気がするが痛い。
この状況がなんかもう辛い。何でこんなことになってしまったのか。大半は自分のせいなのは分かってはいるのだけど。
辛すぎて布団の中に完全に隠れて閉じこもってしまう。何も解決になってはいないけれど逃げ場が欲しい。暗い布団の中は落ち着く。
「もう!みんなアイさんをあんまり苛めないで下さい!意外と繊細なんですから!」
(意外とってなんだ意外とって…)
「でも、レティのお相手って事は俺達の娘も同然なんだから仲良くしたいじゃないか!」
「そうよ、まずはもっとお近づきになりたいわ!レティが独り占めなんてずるいじゃない!」
(娘同然って…私が?いやいやいや、仲良くとか独り占めとか以前に私は『半魔』だぞ、なんでそんな、娘とか、そんな馬鹿な…)
「嬢ちゃん、本気で猫と連れ添っていこうってのか?嬢ちゃんはまだ子供だから憧れみたいなもんがあるかもしれねぇが…こいつが『半魔』で、しかも女ってことがどういう事かよく分かってんのか?」
「おじ様、わたしは子供だからとか、憧れとか、性別だとか、そんなもの昨日両親から腐るほど言われました。その上でわたしはハッキリとアイさんの事が好きで、傍にいたい、守りたいと言っています。それができなければ家を出るつもりでいました」
「って、何言ってんだ!?家を出るって、お前っ…~~!!!」
思わず布団から飛び起きて、激痛に呻く。ユキが怒った様に安静にして下さいと言っているがそんな場合じゃない。
「ユ…レ、ティシア、お前もしかしてそんな脅しみたいなこと言って、私を認めさせたわけじゃないよな?」
「………」
何も答えない事に若干の苛つきを感じる。真顔になってしまったユキに鋭い視線を向けると、気まずげに伏せてしまった。
何でそんな顔をする。何で何も答えない。なんで、なんで。
(私はユキの枷になるつもりなんてないのに!)
私という存在がどういう目で見られてるかなんてわかりきっている事だ。その存在の傍にいる事はその目で同じように見られるという事だ。
そんな事わかりきっていた筈なのに。だから昨日はユキを突き放したはずなのに。ユキの気持ちが嬉しくて、傍にいてくれることが幸せで、傍にいたい気持ちが強くて、つい受け入れてしまった。
「私は、お前の両親に無理に認めてもらおうなんて思ってない。レティシアの事を一番考えてるのはその二人だ。お前が傍にいるべきなのもその二人なんだよ」
ユキが一瞬悲しげな色を瞳に宿した。それでも言葉は止められない。
母が亡くなったことで親がいない寂しさを知っている。爺さんの傍にいたから、あの人の子がいなくなった故の寂しさを何度も思い知らされた。
愛する少女に、愛する少女の両親に、そんな寂しさを感じさせる事なんて許せない。
「子供一人に何ができる!両親に愛されて生きる方が幸せだろ!何で『半魔』なんかと一緒にいようとするんだ!わざわざしないでいい苦労をしようとするな!」
「その苦労をさせないために私達がいるんですよ」
潤んだ瞳で私を見ているユキの肩を優しく抱きながら、レイラは優しく微笑んだ。その顔は母親だからかユキの優しい微笑みにそっくりで。
徐にカインが私に近づいて、その手で確りと私の手を握るものだから驚きに体が強張る。しかしその手の温かさはユキに手を握ってもらった時とそっくりで。
「その言葉は俺達がもう既にレティに言った言葉です。それでもレティは何度も貴女の事を話してくれました。貴女への気持ちを正直に話してくれました。正直、親としては嫉妬してしまうほど、娘は貴女と生きる事を真剣に考えていました」
「レティがこんなに私達以外のヒトに心を向ける事なんて今までになかったんですよ。何時の頃からか、他人に全く関わらなくなってしまって…いえ、今考えれば、あの子は『悪魔の子』の事を知ってから他人にかかわる事を怖がっていたのかも知れません。優しい子だから、迷惑がかかるかも、なんて思っていたのかもしれません」
カインが、レイラが、私の手を確りと握ったその手が、私の事を確りと見つめる目が何処までも優しい。何でそんな目で私なんかを見る事が出来るのかわからない。
私は『半魔』だ、禁忌の子だ、忌み嫌われるべき存在だ。その存在を受け入れても苦労するだけなのに。
「滅多に頼み事も、我儘も言わないあの子が貴女の事に対しては一歩も退かなかったんです。そんな娘の真剣な願いを、想いを踏み躙る親になんて俺達はなりたくないんですよ」
「アイさんは今、レティの事を考えて怒ってくれました。それはちゃんと娘の将来も幸せも考えてくれたんでしょう?そんな貴女だから娘も傍にいてほしいのだと分かりました」
ユキの肩を抱いていたレイラが近づくと、今度は私の肩を抱くように触れた。優しい手。温かい腕。何となく母を思い出して懐かしくなるなんて恥ずかしい事だ。
それを見たユキがわたしもなんて飛びついてくるから痛みと息苦しさで言葉が詰まる。決して泣きそうになったとかじゃない。嬉しいなんて思っていない。
「アイさんが半魔だとか、そんなの関係ない。私達は貴女というヒトだからレティの傍にいてほしい、私達と仲よくしてほしいと思ったんです」
「娘のことも、アイさんの事もまだまだ分からない事だらけで情けない親かもしれませんが、これから知っていきたいし理解していきたい。愛する『娘達』を守りたいと思っています」
レイラの言葉に、カインの言葉に、ユキは嬉しそうに微笑んでわたしを見つめてくる。両親とそっくりの優しい眼差しに目が逸らせなくて。ユキの手が私の目元を拭った事で私が泣いているのだと今更気付いた。
(ああ、本当にこの二人はユキの『親』なんだ…)
心の奥まで踏み込んでくる強引さはユキと似ているなんて思ってしまう。
無性に母が懐かしい。爺さんが懐かしい。私を愛してくれた人。守ってくれた人。温かい気持ちと切ない気持ちで胸が苦しくなる。
今、私の目の前には、新たに愛する人と愛してくれる人達がいる。このまま受け入れてもいいのだろうかと不安が広がる。欲してもいいのかと躊躇ってしまう。
「……あんたらも猫を娘って言うほど歳は離れてないだろ、本当に面倒みれんのか」
静かに私達を見ていたおっさんが徐に口を開いた。やはり複雑そうな、面白くなさそうな、寂しそうな表情。
思えば、この人は爺さんが死んでから私と会う度にいつもこんな顔を浮かべていた気がする。爺さんを慕って、私とよく遊んでくれた人。
店に迷惑をかけるのが嫌で必要最低限の用事でしか行かなくなってしまった。それをこの人も受け入れたから、そういう事なんだろうと思っていた。
でも、私を半魔だと言うくせに、悪い様にはしなかった。決して邪険にはしなかった。思えば何かと気にかけてくれていた――見守っていてくれたのかもしれない、この人は。
「あら、それじゃ妹でもいいですよ。こんな美人な妹が出来るなんて幸せだし、とっても大切にします」
「おぉ、それなら俺もアイさんに『お兄様』と呼んでほし――」
「お父様、お母様とわたしにお仕置きされる覚悟はありますか」
「ごめんなさい!」
「あんたらなぁ……全く。娘も親も揃って変な奴らだ。まぁ、猫を振り回すんならこれぐらい変じゃないと駄目なのかもなぁ」
私に引っ付きながら、わちゃわちゃと勝手に話し合うユキ達におっさんは大いに笑った。久しぶりに見た、爺さんが死んだ時以来見た事が無かった笑顔だった。
何でそんな嬉しそうな顔をするのか。何でユキ達に試すようなことを言ってくれたのか。そんなの――少し考えたら、分かる事で。
「あんたらになら信じて猫を任せられる気がするよ」
「おっさん…」
「猫、お前は血は繋がらなくともデュランさんの娘だった……デュランさんの弟分として、自分だってお前の事を娘みたいに思ってる。『あの時』、傍にいてやれなくてすまなかった。あれは自分の罪だ。本当にすまなかった」
「……いいよ、あれは私から離れたようなものだし。それに、おっさんのお蔭で今まで生きられてるようなもんだ。半魔相手にまともに商売してくれるのなんておっさんだけだったから、本当に助かったんだ」
おっさんが狩った獲物を正当な価格で買ってくれたから、飢えることなく生きてこれた。爺さんと共に過ごしたあの家を今まで維持できた。怪我だって治療してもらった事がある。
どれだけ私がこの人に助けてもらったのか。猫達が屯してるのも頷けるわけだ。私の猫達は決して私を害する者に懐かない。この人はずっと私の味方であり続けてくれたのだ。
こんな大切な事を今更気づくなんて遅すぎる。ユキに鈍感とよく言われるけれど今回ばかりはその通りだと思った。
「おっさん、今までありがと…その、これからも、宜しく頼む」
「おう、望むところだ」
わしゃわしゃと乱暴に頭が撫でられる。振動で傷が痛むが、嫌だとは思わない。おっさんの手は分厚くて硬くて大きい、変わらない手。昔よく撫でられていた事を思い出した。
ベッドに座った状態の私は、カインに手を握られて、レイラに肩を抱かれて、おっさんに頭を撫でられて、ユキに抱きしめられている。
ああ、全く、なんて状況だ。怪我人相手にこんなに引っ付いてくる奴らがいるのか。でも逃げられるわけがない。こんな温かな人達の手を振り払えるわけがない。
ずっと、ずっとずっとずっと、欲しくて欲しくてたまらなかった温かさがそこにはあった。
様々な躊躇いを押しのけて抱きしめてくれる人がいる。私という存在を受け入れてくれる人がいる。ずっと見守ってくれていた人がいる。
にゃぁという鳴き声に足元を見れば、何時の間に入り込んだのか足元に擦り寄る様に数匹の猫達がいて。
(ああ、そうだった、お前たちもずっと傍にいてくれたな――)
『私』を愛してくれるユキが愛しい。私を受け入れてくれたカインとレイラが、父親代わりに見守ってくれたおっさんが、常に傍にいてくれた猫達が愛しい。
この気持ちを伝えたくて、でも照れくさくて言葉にできない。尻尾もゆらゆらと落ち着かない。嬉しげに揺れてしまっている事は自覚している。
ユキに緩んだ口元を優しく指でつつかれて恥ずかしい。きっと彼女には何もかもお見通しなのだろう。私の事に関してユキは異常に鋭いのだ。
でもやられっぱなしは悔しいので、カインに手を握られていない方の腕で彼女を抱きしめる事にする。驚いた顔のあと、同じように口元が緩んだ顔をしたので満足した。
「まぁ、親の前でいちゃつく子達がいるわ!」
「うらやま、いや、けしからん…!」
「今羨ましいって言おうとしなかったか」
おっさんに冷静につっこまれるカインにレイラの冷たい眼差しが浴びせられている様子が面白くて笑ってしまう。
ユキもくすくすと同じように笑っていて、その顔を見るだけで温かいものが胸に溢れる。幸せが溢れる。愛しさが溢れる。
緩みきった顔でお互いにくすくすと笑いあっていると、それを見ていたレイラが急に真顔になった。
「……アイさん、少しお願いしたいことがあるんですけど」
「お願い?」
いきなりなんだ、と少し不安になる。その目はとても真剣で息を呑む。
「ユキはまだ12歳だから、せめて16歳になるまではあまり無理させないでくださいね?」
「………………いや、いやいやいやいやいやいや何真顔で何を言っていやそんな別に何かしたいわけじゃないっていうかいやいやいや」
「したくないんですか?」
「…いや、それは、その」
なんでいきなりレイラとユキに追いつめられてるのか。母娘こわい。カインとおっさんは目を逸らさないで助けろ、おい。
「しないしないしない、絶対しない!!」
「絶対?」
「絶対!」
「16歳まで?」
「16歳まで!」
「キスぐらいは良いわよ?」
「ありがとうございます!」
「あ、お母様、わたしからは良いですか?」
「は?」
最後の質問はちょっと待とうかユキの笑顔が怖い。レイラは「良いんじゃないかしら」とか良い笑顔で言わない。良くないから。とても良くないから。
カインとおっさんは背を向けるな、逃げるな、助けろ。
(ああ、もう全く――)
騒がしくて、振り回されて、でも温かくて、そんな事が愛しいだなんて。
「アイさん、愛してますよ」
「……………私も」
良い笑顔のユキはいつもの言葉を私に向けて。
それに対して私はユキにしか聞こえない様に小さく呟いて。
一気に耳まで真っ赤にしたユキの顔をレイラ達が驚いた顔で見ていて。
私は少し仕返しできたことに満足して、その赤い頬に軽いキスを落とした。
ユ「わたしとアイさんの仲を見守り隊が爆誕しましたね」
ア「その名前だけ聞くとすごく複雑な気分だ…」
愛しいと自覚する人とそれを見守る人達のお話し。
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