貴族学校②
第14章
ワンピース姿のホーリーと、綺麗に洗ってもらったアレクサンダーは、遂に貴族学校へ到着した。
貴族学校の門番のおじさんに、アレクサンダーの馬房を案内してもらい、アレクサンダーに餌と水、魔力を与え、待つように言い聞かせる。
受付をどうにか探しだし、寮への案内は、優しそうなお姉さんが引き受けてくれた。
「ホーリー・ペーターさんね。聞いています。私がご案内します。ジェシーと呼んでください」
「あ、はい、よろしくお願いします」
「本当に、一人で来たの?」
「王都までは、数人で来ました」
「従者は?」
「いません、あのぅ‥‥驚きましたか?」
「いいえ、聞き及んでいましたから、大丈夫です」
「元魔力奴隷で没落平民、そして、最年少のホーリー・ペーターさん、これがあなたの今の身分になります。今年は、どこの領土も、平民を多く送り込んでいますが、あなたは、現在、最下層になります」
「最下層‥‥、あのぅ、寮に部屋はありますか‥‥?」
「ありますよ。部屋と呼ぶには少し問題がありますけど、その部屋を出るには、一日でも早く覚えたい魔法を覚えて、ここを出て行く努力をしなさい。今は、このような助言しか出来なくて、本当に、ごめんなさいね‥‥」
ジェシーお姉さんは、なぜか同情してくれているが、実は、ホーリーはその部屋を望んでいた。
「ここよ。広いけど、ごめんね。どこに行くにも不便な場所で、平民学生の女子寮はここの女子職員たちと同じ建物で、この階と下の階が学生たちの部屋です。そして、この部屋は、食堂には一番遠いわね」
「ここは、昔から職員専用の寮だったのですか?」
「ええ、でも、最近までは、男性職員と平民男子学生の寮だったのよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「それと、従者がいないので、クリーン魔法を覚えるまでは、自分で掃除してね」
「後、戸締りは必ずして、それと、あなたは、入学前のこな2週間で、できるだけ必要な物を購入した方がいいわよ」
「はい、それと、部屋に業者を入れる事はできますか?この状態では平民でも暮らせません」
「もちろん、貴族寮にも大勢の業者が入って、内装工事をしているわ。でも、王都の業者は高額よ」
「はい、紹介してもらってますので、大丈夫です」
「そう、水魔法を習うまでは、お風呂が大変だけど、水は、1階に井戸があるから頑張ってね」
「はい、自宅のアパートは6階で、慣れてます」
「そう、とにかく、心を強く持って、頑張るのよ!」とジェシーさんは肩を叩いた。
◇◇◇◇◇◇
ジェシーさんは、可哀そうな小動物を見るようにホーリーを見て、何度も振り返るながら戻っていった。
「想像していた通り、物置部屋だ。魔術具店のリンさんが使っていた部屋に間違いない」
プラザ町を出る日に、もう一度、リンさんのお店を訪ねると、貴族学校の話を皆にしてくれた。当時の貴族学校は、全体で、平民は2、3人しかいなくて、リンさん以外は半年、長くて1年で退学したらしい。リンさんは魔術の研究がしたかった為に、3年も通ったと、自慢げに言われた。
「卒業しなかったのですか?」と聞くと、卒業に意味はないとキッパリ告げられた。
生活魔法を覚えるまでが、地獄で、その後は、奉納して現金を稼ぎ、魔術の先生は変人で優秀だったが、何度も、貴族たちに研究結果を奪われて、悔しい思いをしたそうだ。
「奪われるとは、本当に、盗まれる事で、部屋に結界を張る魔法を覚えるまでは、ドアや床、窓、ベット、机、すべての家具に妨害魔術をひたすら仕込んだ」
「だから、あの部屋には、僕にしか発動できない魔術があるから君に教えよう」と親切に教えてもらったのだ。有料で‥‥‥
「ギルドカードを持っているね。そこに、発動の魔術を入れてあげる。金額は2金貨でどう?多分、君の境遇ならあの物置部屋だと思う、最近、平民の女子寮に変更されたからね」
(怖いくらい貴族学校の情報を持っている)
「貴族学校に詳しいのですね?」
「貴族学校は、最新の魔術具が開発されるいい場所だよ。奪われた物は取り戻さないとね」
(それって、産業スパイでは?)
「君は、その年で魔力も多いから、色々な魔術具が同時に使える、それに、お金もある。いいお客さんだ。通信魔術具で貴族院の事を教えてくれれば、マージンも出すよ」
「この店との通信魔術具ですか?」
「あの部屋専用のだ。男子たちとは、2回生になると、学校指定の通信魔術具で話せる、魔力が必要だがね」
「そうですね、移転魔術も使える様になったら、魔術具を送って頂けますか?」
「ああ、君がしっかり魔術を覚えれば、あの部屋限定に、送る事が出来る」
魔術を学べばの話だが、必要だと思い「2金貨でお願いします」と告げた。
周りの大人も、子供達も驚いていたが、これから必要な物が2金貨でゲットできて、うれしい~~!
「さてと、掃除は、この魔術具にお願いして、アレクサンダーの馬房にある箱馬車から、荷物を移転しなくては、布団がなくては寝られない。実は、もう寝たいのだ」
その日は、結局、持参のお弁当を食べて、朝まで、床に引いた布団で寝た。ベットも机もない物置部屋って、本当だったよ。リンさん!
◇◇◇◇◇◇
次の日の朝、部屋のドアフォンから、業者の到着の知らせが流れた。これは、便利な魔術具だ。グリークさん一行は、アレクサンダーの馬房に向かってもらって、荷物を移転させた。
「は~~、こんな移動魔法陣は、初めて見た」と、リンさんの移動魔法陣に、王都の人足たちも驚いていた。
実は、この人足たち、水瓶水道を覚える為に、ここに来ていて、実は、無料なのだ。グリークさんの王都への出張も、水瓶水道の普及の為で、お互いウインウインの関係と言ってもいい。
「やはり、リンさんの部屋でした」
「物置部屋だったの?」とシママは聞く
「そう、受付のお姉さんに、あなたは最下層ですって、思いっきり言われた」
「ハハハハハ、でも、良かったね。これで心配しないで町に帰れるよ」
「でも、昨日は、床で寝たんですよ。ベットは必ず作って下さいね」
「ああ、あの変わったベットでいいのだろう?」
「動くテーブルもお願いしますね」
「ものぐさ過ぎるが、体力がないからな。では、取り掛かりましょう!」
◇◇◇◇◇◇
床は、魔法陣が仕込まれているので、張り替えれれない為に、フカフカのカーペットが必要になった。
ベットとサイドテーブル、病院で見かける動くテーブルも作ってもらって、本棚は壁にそのまま作り付けでお願いした。お風呂の他にキッチンも常設して、そこには魔法陣をプラスした水瓶水道を設置した。
ここが最上階の角で良かったと、心から思った。
「しかし、ここは、暖かいな」とシママが言う。
「敷地内は、すべて一定の気温が保たれているらしいよ」
「すごいな」
「王都ですからね」
「王様の都で、大勢のお貴族様が居るんだ。当然だろう」
徐々に、家具が出来上がって来ると、あまりにも素敵な部屋になり過ぎなように思える。
「最下層の部屋に見える?」
「いや、見えないが、お貴族様の部屋にも見えない」と王都の人足たちは言う。
「つい立って、わかりますか?入口から中が見えない様にする物なのですが‥‥」
「ああ、板を立てるって事か?」
「そうです。なんでもいいので、3枚くらい作って頂けますか?」
人足の仕事は、物凄く早くて、3日間で終了した。
「ソファや諸々は、自分で買いに行きます。学校の人にも、物を揃えるにはこの2週間しかないと、助言されました」
「本当に、大丈夫か?平民の部屋にしては凄すぎるぞ。王都の人足たちも、満足して帰った程だ」
「だ、大丈夫ですよ。最下層の部屋に来る学生はいませんから‥‥、多分」
一抹の不安を残し、グリークさんとシママは、王都を出発して戻って行った。また、数か月後に会えるとわかっていても、不安な表情は隠しきれなかった。
部屋は、ほぼ完成して、大きい買い物は、ソファとカーペット、小物はたくさんあるが、まだ、1週間位は時間があるので、何とかなるだろうと思っている。冷蔵庫があれば欲しかったが、氷室は、氷魔法が使えないと売ってもらいないようだ。
仕方がないので、食堂に行く事にした。初めての食堂だが、ギルドカード払いが可能で驚いた。
他の平民の学生は、どうするのだろうか?と考えながら会計の列に並んでいると、メイド服の女性に、睨まれた、その後、ギルドカードで決算した後は、睨みが驚きに変化していた。不思議だ!!
王都で役立つアイテムは、貴族学校の入学許可証とギルドカードだと思いながら、その夜は、快適に眠った。




