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4月22日電子配信開始 私を捨てたはずの子爵令息の激重愛に囚われていますもう一度あなたと?  作者: キムラましゅろう


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魔力継承の立会人

「え?わたしが魔力継承の立会人をですか?」


わたしはその事を直属の上司であるオリバー・デビス氏のオフィスで聞かされた。


「そう。キミもそろそろ、こういう案件を一人でこなせるだろうと判断しての事なんだが、どうする?やるかい?」


「やります!是非やらせて下さい!」


わたしは少々食いつき気味に、いやかなりガッツいてデビス氏に返事した。


なんと言っても魔力継承の立会人は、わたしが魔法書士を目指したきっかけになったものだ。


それをとうとう任せて貰える……!


そりゃ~嬉しくてガッツいちゃうでしょうよ。


全力で挑んで成功させて、ワルターが帰って来たら話してあげよう。



わたしは必要書類の確認と、契約魔法と誓約魔法に不備はないかをチェックして、まずは事前の打ち合わせの為に魔力継承を行うブノワ男爵家を訪れた。


ブノワ家はそれなりの歴史はあるが領地を持たない所謂(いわゆる)宮廷貴族の家柄だ。


現ブノワ男爵(42)と奥さま、そして一人息子のシャルル君(12)の3人家族で、今回、ブノワ男爵が息子のシャルルくんに魔力を継承したいとの申し入れが魔法省に入ったのだ。


事前に今日、打ち合わせに行くと先触れを出していたので訪問すると直ぐに応接間に通され、ブノワ男爵とシャルル君、そして……誰だろう、

とても背が高くて綺麗な女性(ひと)が部屋に入って来た。



「やぁご苦労様。わたしがブノワ男爵ディディエだ。この度はどうかよろしく頼む」


ブノワ男爵に差し出された手を握り返し、わたしは挨拶をする。


「はじめまして。魔法省法務局書士課の魔法書士、シリス=クレマンです。こちらこそどうぞよろしくお願いします」


「こんなに若いお嬢さんが立会人とは。いやはや、時代も変わりましたなぁ。女性だから否というつもりはありませんが、今回の立ち会いの仕事、お任せして大丈夫なのですね?」


予想はしていた反応なのでわたしは誠実に、そしてありのままの自然体の自分を心掛けて返事をした。


「もちろんです。今まで沢山学んで来ました。

それに実際に魔力継承も何度も見ています。

どうかお任せ下さい」


わたしのこの対応がブノワ男爵を満足させるものだったのだろう、ブノワ男爵は笑顔で頷いてくれた。


その日は魔力継承の流れを説明し、幾つかの確認をした。



継承する魔力の性質、そして量だ。

全魔力を継承するのかほんの一部を継承するのか。

それにより魔法によって作成する書類が変わってくる。


ブノワ男爵の話では継承する魔力はほぼ全部。

王宮魔術師を目指すシャルル君のために魔力を受け渡したいとの事だった。


なんだかワルターの時に似てる。

魔術騎士になりたいという孫のために、先先代のブライス子爵が彼に全魔力を継承させたのだ。


そんな事を思い出し、懐かしさを感じていると、

ふとシャルル君の側に座っている背の高い女の人と目が合った。

わたしは尋ねてみる事にした。


「あの……そちらの方は?」


わたしの問いにブノワ男爵が答えてくれる。


「あぁ、彼女はシャルルの家庭教師のシエンヌ・カニスだ。我が家に住み込みで働いて貰っている」


「そうなのですね。カニスさん、魔力継承は一世一代の儀式です。シャルル君のサポートをよろしくお願いします」


わたしが軽く会釈をしながらそう言うと、シエンヌさんはふわりと微笑まれた。


「了解です。どうか私の事はシエンヌとお呼び下さい。同じ働く女性同士、仲良くして下さると嬉しいです」


シエンヌさんは男性顔負けの長身で、舞台俳優みたいに美しい方だった。


その後も諸々の打ち合わせをして、今日のところはお終いとなった。


玄関までメイドさんではなくシエンヌさんが送ってくれる。


「シエンヌさんはシャルル君の家庭教師を長くされてるんですか?」


「いいえ。実は私もつい最近こちらで雇って頂いたんです。でも私に手伝える事があるならなんでも言って下さいね」


「ありがとうございます」


そうお礼を言い、わたしはブノワ家を後にした。

でも……なにか引っかかる。

シエンヌさんのあの目、何故か気になるのよね。

それに背の高い女性……。

魔力・魔術売買のどの報告書にも必ず記載してあった。

『背の高い女性に声をかけられたと』

証拠も無しに決めつけるのは良くないが、わたしはその事を一応上司のデビス氏に報告しておいた。


デビス氏から上に伝えてくれるらしい。


今回の魔力継承の儀、何事も起きなければいいんだけど……。



だけどやはり、事はそうすんなりとは進まなかった。


継承の儀の三日前になって突然、ブノワ氏が継承する魔力を全てではなく一部にすると言って来たのだ。


何故そんな急に変更を?


王宮魔術師になりたいシャルル君の夢を応援したいんじゃなかったの?



………これはなんかあるわね。


わたしは急いでブノワ男爵家へと向かった。

どうせ渡さなくてはならない書類もある。



玄関のチャイムを鳴らし、訪を告げると出て来たのはあの背の高い女性家庭教師のシエンヌさんだった。


「……ブノワ男爵にお目にかかりたいのですが」


わたしが言うとシエンヌさんは少し困ったような顔をした。


「旦那さまは只今、お留守にされています。また日を改めて訪問して下さいますか?」


「……ではシャルル君に会わせて下さい」


「何故ですか?」


「継承される魔力が減って、シャルルくんはガッカリしているのではないかと心配になりまして」


「坊ちゃまは大変聡明なお子様です。ちゃんと理解しておられますので大丈夫です」


「それを確認させてくださいと申し上げてるんです。継承される側の人間の意志確認も、魔法書士の仕事の一つです」


「……しつこい方ですね……」


シエンヌさんの声のトーンが少し下がったように感じた時、彼女の後ろから子どもの声が聞こえた。


「もしかして魔法書士のお姉さん?」


シャルル君だった。


わたしは非礼とわかりつつも、背の高いシエンヌさんの脇を潜り抜け、シャルル君の元へと踏み込んだ。


「あ、コラ」

シエンヌさんが思わずといった感じで声を出す。

わたしはそれに構わずシャルル君に挨拶をした。


「そうよ、覚えていてくれたのね。シリス・クレマンです、こんにちはシャルル君」


「こんにちはシリスさん」


「シャルル君、大丈夫?貰える魔力が減って、残念に思ってるんじゃない?」


わたしがそう尋ねると、シャルル君は少し悲しそうにしながら言った。


「うん……でもしょうがないよ。僕んち、貧乏だから……」


「シャルル坊ちゃん」


それ以上は何も言わせないとばかりにシエンヌさんが遮った。

そしてわたしに向かって言う。


「これ以上は困ります。どうぞお引き取りください」


「……わかりました。ではこのお持ちした魔力継承の変更手続きの書類をブノワ男爵にお渡し願えますか?」


「承りました。さ、今から魔法省に帰るのでは遅くなってしまいます。早くお戻りください」


そう言って、シエンヌさんはさっさと扉を閉めてしまった。



ぬぬぬ……。これは何かある。

やっぱり魔力売買が絡んでるんじゃないかしら。


あぁ~!こんな時ワルターに相談出来たらなぁ…。

そう思いながらわたしは魔法省へと戻った。


すると玄関ロビーで思いがけない人から声を掛けられる。


ワルターと同じく元王太子殿下に苦言を呈したが為に魅了に掛けられた人物、ロラン・スミスさんが、ワルターからの手紙を携えてわたしに会いに来たのだった。













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