表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/54

第34話「田舎は人の噂で10年持たせる」

【前回までのあらすじ】

お姉ちゃんのバカ、もう知らない!

□エルフの村3丁目□



プリン「はぁ、はぁ……あの子、一体どこへ行ったの?」



???「あら、リンちゃん?どうしたの、朝早くからそんなに急いで」



プリン「あ、アナタは……」




プリン「噂好きの隣のおばさん!」



隣おば「噂は聞いているわ。森外(そと)で人間の男の人と結婚したんだって?」



プリン「やっぱりもう噂は広まっちゃってたか……おばさん、それ誤解なんでスよ」



隣おば「そうなの?じゃあ、大商人の御曹司と大恋愛の末に駆け落ちして、追手から逃げるように世界各地を転々としていたけど、ついに男の子を(こさ)えちゃって、逃げるようにこの村に帰ってきたっていうのも……違うの?」



プリン「事実無根(フィクション)でス。新しい話が作られちゃってるじゃないでスか……」



隣おば「そうなの?リンちゃんと仲が良かったミーちゃんから聞いたから……ミーちゃんには後で言っておくわね」



プリン「なるほど、アイツか」



隣おば「あら、ゴブリンみたいな顔になってるわよ?」



プリン「いや、なんでも無いでス。ところで、私の妹を見ませんでシた?」



隣おば「ルンちゃんのこと?それなら、さっきそこの角を曲がっていったわよ?」



プリン「あ、そうなんでスね!ありがとうございます!」



隣おば「なあに?またルンちゃんが怒られて家出したの?」



プリン「まぁ、そんなとこでス……それじゃあ、ここら辺で」



隣おば「はいはい、それじゃ急がないとね。あの子、リンちゃんに会えること、すごく楽しみにしていたみたいだから」



プリン「え?そうなんスか?」



隣おば「だって、あの子が生まれた時、アナタもう森外に出てたじゃない?だからなのか、すごい憧れてるらしいって、ミーちゃんが」



プリン「……ふぅん」



プリン「あ、そうだ。この後ミーちゃんに会うなら、一つ伝言いいスか?」



隣おば「いいわよ?ちょうどこれからパンを貰いに行くところだから。どういう伝言?」



プリン「『覚悟しとけよ?』」





□エルフの村8丁目□



プリン「ここまで来ても居ない……あの子、一体どこまで行ったの?」



???「あらアナタ、リンちゃんじゃない。どうしたの」



プリン「あ、アナタは……」





プリン「"男女の噂が三度の飯"おばさん!」



飯おば「噂は聞いているわ。森外(そと)で人間の男を手篭めにしてきたんだって?」



プリン「だから誤解だって!そして柔らかい表現を心がけろ!」



飯おば「恥ずかしがらなくてもいいわよ。人間の男なんてね、アンタくらい若いエルフがちょいと■■■■(やさしさ)(した)から×××(いろけ)を垣間見せれば、簡単に籠絡出来んだから」



プリン「おい、そのオブラートの下に何隠してんだ?」



飯おば「しかし、アンタが人間の男なんて意外だね。あたしゃてっきりハーフリングとかレプラコーンあたりを狙ってるもんだと思ってたよ」



プリン「いや、だから店長とはそんな……」



プリン「……なんで、そう思ったんスか?」



飯おば「だってアンタちっちゃい男の子が好きなんだろ?」



プリン「……ソンナコトナイデすヨ?」



飯おば「ありゃ、あたしの見当違いだったかね?けどアンタ、昔小さい子の面倒をよく見てくれてただろ?」



プリン「えぇ、まぁ……村の仕事の一環でスけど」



飯おば「その時のアンタの目が獲物を狙……プリン「あ!あー!!そういえば私、妹のルンちゃんを探してるんでスよ!家から逃げちゃって……おばさん、見ました!!?」



飯おば「ルン?そういや、さっき中央広場の方に走ってくのを見たね」



プリン「ありがとうございます!それじゃ私はこれで!!」



飯おば「あいあい。どうせあの子がまたランさんに悪戯でもしたんだろう?ちゃんと叱ってやんなよ」



プリン「叱る?」



飯おば「そら、妹が悪さしたなら姉が叱ってやんなきゃ」



プリン「……まぁ、そうスね」



飯おば「あ、そうだ。手篭めにしたのはあの黒髪の坊……ありゃ、行っちまった」




□エルフの村中央広場□




プリン「はぁ、はぁ。広場に来ても、どこにも居ない……つーか、これだけ村を走り回るとか、子どもの体力やべぇ」



???「あれ、そこに居るのは、リンか?」



プリン「あ、アナタは……」




プリン「噂話の時だけ聴力が良くなる耳を持つ長老(ババさま)!」



婆長老「都合の悪い話は聞こえんのでな」



プリン「都合のいい耳でスね」



婆長老「ところで、村で君等夫婦の挙式をしようと思っとるんだが……」



プリン「まるで峠を攻めてるような話の持っていき方」



プリン「長老、それウソです。ウチはまだ誰とも契ってません」



婆長老「ほっほ、心配せんでもよい。確かに最近の若い子らは結婚式など要らぬと言うが、あれはあれでいいもんじゃ。ズルズルと関係を続けるより、いい『契機』があったほうが夫婦も長続きしやすいというもんじゃで」



プリン「話を聞けよ」



婆長老「それにな、そういう式を挙げるとなると、酒を飲めるでな。結婚式の日は狩りも中止じゃでな、男連中も村に戻ってきて皆で馬鹿騒ぎじゃ」



プリン「ヒトの結婚を酒盛りの言い訳に使うな」



婆長老「いやいや、これはお主の家のためでもあるのじゃ」



プリン「そうなの?」



婆長老「家庭に久しぶりに亭主が帰ってくるじゃろ?」



プリン「うん」



婆長老「お酒も入って夫婦の気分も良くなるじゃろ?」



プリン「うん」



婆長老「宿屋が儲かる」



プリン「老婆とか関係なくぶっ飛ばしてやろうか」



婆長老「そんな楽しい結婚式を明日にでも……おっとこれはサプライズの予定じゃった」



プリン「分かりました。今日中に村を出ていけばいいってことスね」



プリン「ところで、ルンを見ませんでシた?なんか、家出しちゃって」



婆長老「『ところで』からの話の展開がヘアピンカーブじゃのう」



プリン「ウチの話聞こえてたんじゃねぇかよ」



婆長老「ルンなら、大樹の方に居ったぞ」



プリン「まさか知っているとは」



婆長老「すごく寂しそうな顔をしておった。何があったかは知らんが、(はよ)う行ってやるといい」



プリン「あぁ、はい……ありがとうございます。そうですね、急がなきゃ」



婆長老「あと、お主の父親が見知らぬ男と二人で、酒場の前で死にかけとった」



婆長老「二日酔いで苦しそうな顔をしておった。早う行ってやると……」



プリン「アイツらはそんなのじゃ死なないので大丈夫でス」



婆長老「……信頼が厚いのう」






□大樹□



 ルン「…………」



 ルン「はぁ、何やってるんだろ。せっかく、お姉ちゃんと会えたのに……」



 ルン「……私、嫌われちゃったかな」ぐすっ



???「はぁ、はぁ……やっと見つけた」



 ルン「……あ!」





 ルン「お姉ちゃん!」



プリン「結局、村中探し回ったちゃった……はぁ」



プリン「さ、家に帰るよ。"ルン"」

Tips49:噂好きの隣のおばさん(隣おば)……趣味が井戸端会議な普遍的なおばさん。精神はおばさんだが、見た目は黒髪ロングの美しーいエルフである。しかし、それが作中で活かされることはない。



Tips50:"男女の噂が三度の飯"おばさん(飯おば)……男女の噂話をエネルギーに変換する高等魔法により、食事が不要になったという噂のあるおばさん。好きな食べ物はキノコ。心は場末のスナックに居るようなスレたおばさんだが、見た目は金髪の美女エルフ。だからどうというということはない。



Tips51:噂話の時だけ聴力が良くなる耳を持つ長老(婆長老)……政治家にとっての重要スキルを持つ老婆。基本的に人の話を聞いていないが、それが年齢からくるボケなのかワザとなのかは闇の中。こちらも例のごとく、心はクソババア、見た目は銀髪狐耳のじゃロリだが、それももうどうでもいいことなのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ