9. 洒落にならない?
「それでは先ず、槍の方から説明致しますね。」
とても上機嫌である。
それはもう、とても納得がいく出来で、素晴らしい物が出来たのだろう。
神様的に。
だが、こと人間的にはどうなのだろうか。
説明を聞くのが怖いが、既に相棒と言うべき愛銃の魂?がソレには入っており、捨てたり使わなかったりという選択肢は無い。
迅は腹を括って説明を促した。
「槍の銘は『神槍ブリューナク』と名付けました。 軽くて強度と粘りのある素材を使っていますので、見た目の派手さと裏腹に非常に軽いです。 しかも瞬発的な運動力で比重が変わる素材を使用していますので、突いたり払ったりした瞬間に重量や速度が力として加算され威力も抜群です! しかしながら重量が瞬発的に加算されたとて、迅さんの腕力なら思いのままかと思いますよ!」
何だか想像以上に凄そうな出来である。
しかも自分用にカスタマイズされている様である。
だが、神様の説明は此れだけで止まらない。
「槍は柄を狙った武器破壊をされ易いみたいですのでブリューナク自体に【破壊不能】アビリティを付与しています。 また、逆に【武器破壊率極大】というアビリティも付与しました! この二つの独自アビリティによってブリューナクと相対する武器は、とっても残念な事にしかならない様になります!!」
嬉々として説明をしてくれる神様だったが、本気の神器が出来てしまい迅は頭を抱えた。
今更の話だが、止めておけば良かったと後悔がある。
しかもブリューナクと呼ばれる槍は、神様の言う様に見た目にも凄まじい。
穂先には鋭い槍刃とその横にハルバードの様な斧状の刃、その対面には鎌状の刃がある。
槍刃の主張が強い為、戟との違いが判別出来るか、といった造型である。
また、刃と柄の継ぎ目が判別出来ないが、境目付近であろう部分から宝石類の様な石が邪魔にならない程度に嵌め込まれている。
恐らく何らかの効果が込められているのであろう。
更に神様はチート仕様の説明を続ける。
「向こうでの生活で何があるか判りませんので、一応保険として【体力吸収】をマスター状態で付与しています! どうですか、この仕様!!」
頭を抱えていたい仕様である。
だが貰う武器は一つではない。
一つ目でこの様に頭痛の種になっている説明である事に、迅は逃げたくなった。
ハッキリ言って人の身に余る武具である。
だが、逃げ出したりすると大事な相棒の半身が貰えない。
このジレンマに苛まれている中で、神様は満面の笑みで半身の解説を始める。
「次に弓ですね。 此方の銘は『魔弓ミストルテイン』と名付けました。 普通の矢を放つ時には【貫通性能】と【命中補正】のアビリティを付与していますので、余程そっぽ向いてない限りほぼ命中する上に、一矢で直線上の複数のターゲットに命中させる事も可能です。 まぁ命中率に関しましては迅さんのアビリティ【銃術】とリンクしている【弓術】より派生したスキルや【狙撃術】がありますので、本当に補正値程度ですね。 更にミストルテインの凄い所は、銘の魔弓という由来でもある効果ですが、魔力による矢を放つ事が出来るんです!」
神様が作ったのに魔とは此れ如何に、とツッコミを入れるつもりが、まさかの上回られる展開。
だが考え様によっては、魔力による矢は非常に便利だ。
何せ魔力さえあれば矢切れが無い。
あれば、だが。
何にせよ、此方も碌でも無い神器である。
だがこの魔弓、此れだけに止まらず。
神様の無情な宣告は更に続く。
「魔力による矢は意志によって動かせます。 つまり完全追尾弾も意のままに放つ事が可能です!」
最早言い様が無い。
この二つを手にする事で、遠近共に死角が無くなった。
元々多対一の戦いも銃と体術である程度はこなせる迅であったが、この二つにより多分だが一個中隊程度までなら余裕を持って一人で戦えそうである。
曾孫が好きだった何某無双的なゲームのキャラクターになった気分である。
迅は大きく溜息を吐き、神様を見据えるのであった。
御覧頂き、ありがとう御座いました!