37. 契約-2
こんにちは!
宜しくお願いします!(o_ _)o))
ヴェルティに続きジャンヌも彫った。
腰、胸元ときて、ジャンヌは顔を真っ赤にしながら臍の周囲にと願い出た。
全員同じ形であったらしく、襟ぐりを引っ張らずとも露出しているヴェルティの胸元にはハートの形と何やら文字が書いてある事が判る。
この世界でもハートマークは女性に好かれているのか、と迅が生きてきた世界との違いが曖昧になってくる。
だが、サントス社長から
「あのマークは女性に人気で、吟遊詩人が伝えて流行り始めたのです。」
と聞き、恐らく自分と同じ異世界人か、と思考を巡らせる。
またの機会にメタトロンに聞こうと考えを纏め、迅はニードに向き直った。
「さて、センセー。 俺もあのマークを入れんとならんのか?」
「いいえ、サナダ様♪ マークは重要ではありませんよ。 彼女達と同じ文字さえ彫れば問題ありません。 で、出来たら同じ場所に彫れば、より強い結び付きになるのですが…。」
その言葉に、バレット・ヴェルティ・ジャンヌの三人は身を乗り出す。
ふぅ、と溜息を吐くと、迅は
「…彫れるスペースがありゃあ、同じ所に彫ってくれ。」
と言い、上着を脱ぐ。
リィナとバレットは目にしていたが、他の面子は初見である迅の上半身は、まさに刺青だらけという様相であり、各々目を見開く。
左側には鎖骨の下辺りに頭部があり、そのまま左腕に巻き付く格好で肘下まで描かれている蛇。
右側には、三角筋前部に頭部があり、そこから肘上に臀部、細い尻尾は肘下5センチ程度に一周程度巻き付かれた剣牙虎。
そして背中には、翼から尾羽根まで大きく開かれ、まさに勇壮華麗な鳳凰が描かれていた。
その刺青に周囲は、特にニードは息を飲む。
「さ、サナダ様…。 こ、この刺青は一体…?」
「すまねぇなセンセー。 若気の至りでな、ちっと派手に、な。」
「申し訳ないのですが、暫く拝見させて頂いても?」
「何か彫り師のセンセーに見られんのは恥ずかしいが、まぁイイぜ。 これもそれなりに有名なセンセーに彫ってもらったモンだしな。」
迅がそう答えると、ニードは恐ろしく真剣な目付きで細部に至るまで観察する。
恐らく自分の技術にはない彫り方なのだろうか、と迅は思考を巡らせるも聞く様な野暮はしない。
一頻り観察し納得したのか、ニードがこっちの世界に戻ってきた様に、
「申し訳御座いませんね、サナダ様。 同じ様な所に彫れそうですので、すぐ取り掛かりますね?」
と、言って三人の奴隷に彫った文字をあっという間に迅に彫り入れた。
「早ぇな、センセー。 伊達に社長お抱えじゃ無ぇな。」
「お褒めに預かりありがとうございます♪」
そう言って大きな身体を折り畳み、頭を下げる。
「あぁ、センセー。 奴隷契約じゃ無い術式で、繋げられる事は出来ねぇのか? そういう墨があるって聞いたんだが。」
迅はリィナとの話をニードに問うと、ニードは笑顔で答える。
「御座いますよ♪ そちらのエルフちゃんですよね? 任せて下さいませ。 私の知る限りの強〜い術式で縛り付けて差し上げますよ♪」
その言葉を耳にした迅は止めようと口を開いた直後、リィナの
「本当ですか!? 是非お願いします!!」
という言葉に掻き消されてしまう。
こうして、リィナと迅は左手首にぐるりと一周締結印の刺青が入る事となった。
ーーーー
ニードに別れを告げると、サントス・ゴート商会の馬車で武防具店に行き、装備を見繕う。
ヴェルティとジャンヌは自前の装備で問題無かったが、リィナとバレットと迅本人は装備が必要であった。
女性陣は女性陣に任せ、迅は色々と物色する。
当然物色の際はチートアビリティ【神眼】で鑑定する。
同じ値段でも性能や付与された能力がかなり違うのが判り、不思議に思いながら製作者の銘を探る。
すると、上質なモノは決まって同じ名前の銘が刻まれている。
「社長、この『ロンメル・ハザク』って職人は、アンタの旧知の仲の鍛冶屋かぃ?」
「いえ、この者は最近この街に来て工房を構えた駆け出しの鍛冶屋ですね。 どうかなさいましたか?」
「あぁ。 工房は判るか? 会って話してぇんだ。」
その言葉にサントスの目が光る。
「勿論で御座います! さぁ、行きましょう! パーティの方々は此方で待っていてもらえば宜しいでしょう。 さぁサナダ様、馬車へ!」
迅は半ば強引に馬車へと詰め込まれる。
サントスは店員へ何やら話をしている。
恐らくリィナ達四人を留め置く様に言っているのだろう。
店員の態度を見るに、四人の立場をかなり話を盛って話した様子である。
「工房はすぐ近くです。 さぁ、向かいましょう!」
そう言ってサントスは馬車を走らせた。
すぐ近く、と言う通り、馬車で五分程度で目的地に到着する。
正直馬車は不要であったのでは?と迅は考えるも、サントスの馬鹿正直な気遣いを無碍には出来ない。
馬車を降りて目の前の工房のドアをノックし、開ける。
「あー、すんません。 ロンメルさんの工房ってーのは、此処で合ってんのかな?」
大きな音がする工房に響く様、努めて大きな声で尋ねる。
すると、金属音が止んで奥から若い女性が出てきた。
「はい、私がロンメルです。 えっと…、何かご入り用でしょうか?」
「俺はジン・サナダっつー駆け出しの冒険者だ。 サントス社長んトコの店でアンタの作ったモンを見せてもらった。 理解出来ねぇ程安い値段で、とんでも無ぇ掘り出しモンが売られてて製作者のトコを紹介して貰って今に至るんだ。」
「 え…っと、貴方はあの価値が判る、と?」
「多分な。 駆け出しだから買い叩かれてんだろうが、あんな上質なモンは装備着けてる冒険者見た限りじゃ、少なくともこの街には無ぇ。 忙しいトコ悪ぃんだけどよ、防具を作っちゃくれねぇか?」
迅の言葉にロンメルは見る見るうちに笑顔になる。
「ええ、任せて! どんな防具が欲しいの!? 何を付与して欲しい!? 予算は??」
「ハシャギ過ぎだろ。 動き易くて軽い防具を作ってくれや。 出来れば2セットくれ。」
「判ったわ。 すぐ製作に取り掛かるわね! でも、どうして2セットも?」
「Aランカーが装備してる防具ってなると引く手数多になるだろ。 同じ装備を社長んトコに人形にでも装備させて飾っときゃ客はバカスカ来る可能性がある。 そうなりゃアンタも社長も儲けられる。 違うか?」
その言葉にサントスは涙を流しながら震える。
「さ、サナダ様…っ! それ程までにお世話を…っ! ロンメル殿、是非お願いします! 何なら私の商会と専属契約を結んで頂けませんか!?」
「え? え!? ち、ちょっと待って下さいよ社長さん! え、何!? どうなってんの!? ちょっと、サナダの兄さん! どうなってんのさ!! って言うか、アンタAランカーなの!?」
「知るか。 お互い儲けられるんならイイじゃねぇか。 社長も後で文書で契約しとけよ?」
「勿論で御座います! サナダ様、何から何まで、本当にありがとう御座います!!」
「いいって! ロンメルちゃんっつったか。 装備の方は出来るだけ早く頼まぁ。 出来たら社長んトコに伝えてくれ。」
「いやいやいや! 出来たらすぐ持って行くよ! 何処に居るのよ、サナダの兄さん!」
「社長んトコの宿屋を暫く拠点にしてる。 一週間くらいだと思うが。」
「判ったわ! オーダー通りの装備で素材に拘り無ければ三日で作るよ!」
「素材やらはよく判らんからな。 任せるわ。 予算はそれなりにあっから、適当な素材でイイ物作ってくれな。」
「任せといて! じゃあすぐ取り掛かるよ! ありがとね、サナダの兄さん!!」
おう、と迅は答えてサントスと共に工房を出た。
サントス社長は未だ涙が止まらない。
少し考え過ぎじゃないだろうか、と迅は心配するも、サントス社長としてはそうでは無い様子である。
しきりに「神のお導き」だの「今世の運を目一杯使った」だのと言っている始末である。
迅は大きく溜息を吐くと、馬車の御者に言って元の武防具屋へと戻ってもらう事にした。
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