35. 複雑な心境
こんにちは!
宜しくお願いします!
この異世界でレアな種族に位置する蟲人族の仲間が出来たが、どうやらヤンデレ属性が垣間見える事に迅は頭痛を覚える。
この中でサントス社長以外では一番しっかりしてそうだっただけに、ショックも一入である。
しかも、自分にそこまで執着する理由もイマイチ理解が出来ない。
取り敢えずあまり刺激をしない事を心掛けるくらいか、と迅は考える。
「ま、まぁ落ち着けヴェルティ。 社長もそう脅してやるなって。」
そう言うのが精一杯であったが、その言葉でヴェルティはまた豹変する。
「本当ですか! 本当ですよね!? 私が欲しい、私を抱きたい自分のモノにしたいって、御主人様仰って下さいましたよね!?」
「いや、そこまでは言って無ぇ。 話が進まねぇから暫く聞き役に徹してろ。 出来ねぇなら部屋の外でバケツでも持って立ってろバカ。」
迅の言葉にハッと我に返ったヴェルティは、まるで今迄の自分は無かったかの様に凛とした姿に変貌する。
女性の恐ろしさ、特にヤンデレ属性の恐ろしさを垣間見た気分の迅であったが、努めて冷静を装う。
そんなヴェルティを他所に、迅はサントス社長へと向き直り、話を始める。
「社長。 先ずは二人の処遇だが、改めて言わせてもらうが此方で引き取らせて欲しい。 二人の戦力はアンタが推す以上のモノだったわ。 契約書があるんなら直ぐサインさせてくれ。 序でに奴隷の解除も出来るならお願いしてぇんだが、どうだ?」
迅の言葉を一頻り聞くと、サントスは返答をする。
「ありがとう御座います、サナダ様。 それでは此方に二枚書類が御座います。 お名前を記入頂きますと、正式に二人はサナダ様の奴隷となり、登録されます。 奴隷の解除で御座いますが、やめておいた方が宜しいかと思いますぞ。」
引き取る事は問題にならない様だが、奴隷解除には問題がある様である。
迅はすぐさまサントスに問う。
「社長、何で奴隷解除は止めるんだ? 何か特別な理由でもあんのかぃ?」
「二人の種族が特別なのです。 先ずは奴隷を扱う際の法について簡単にご説明させて頂きましょうか。」
そう言うと、サントスは簡潔に法律の説明をしてくれる。
曰く、
1. 他人の奴隷に干渉しない。
2. 管理奴隷を、解除された者は自由奴隷となり、管理者が決まるまでは自由だが、管理されてしまうと再度管理奴隷になる。
3. 自由奴隷の身分で一年間通すと、晴れて一般市民権を得られる。
4. 奴隷契約は首輪、刺青の何方かで奴隷と管理者を精神、魂にて結び付ける。
との事。
「で、種族が特別っつってたが、リィナやバレットが驚くくらいレアな種族だから、奴隷解除して一年間フリーで過ごす方が難しいって事でイイのか?」
そう迅がサントスに問うと、サントスは首肯する。
迅は顎に手をやり、ふむ、と呟いて暫し考えると口を開いた。
「んじゃ仕方無ぇな。 二人にゃ悪ぃけど、俺の奴隷って事で契約してくれねぇか? 悪ぃ様にゃあしねぇつもりだ。 どうだ?」
その言葉にヴェルティは再び取り乱し、控え目に部屋の隅に佇んでいた所から一気に迅の目前まで寄り、絞り出す様に言葉を吐き出す。
「ご、御主人様! 私は、このヴェルティめは御主人様へ仕えると既に誓った身で御座います! 例え火の中水の中、それこそ地獄の釜の底まででも我が身を盾としてお供させて頂く覚悟は出来ておりますっ!」
「お、おぅ、判った判った! とりあえず落ち着け、ヴェルティ! 近い、当たる!!」
「…『わざと』、と称して当たって頂いても結構で御座いますよ?」
ただでさえ近いヴェルティの顔が妖艶な笑みを浮かべながら魅力的な提案が耳に入ると、迅の顔に熱が上がってくる。
ヴェルティの両肩に手を当て、一気に押して引き離す。
「ば、バカ野郎が! うら若き乙女が碌でも無ぇ事言ってんじゃ無ぇぞ! …ったく。」
柔らかそうな厚めの唇を尖らせたヴェルティは、「はい、申し訳ありません」と言ってはいるが反省した様子は微塵も見られない。
再犯の可能性大と見た迅は、ヴェルティを引き取る事に少々後悔するも、戦力面では大きな力である。
自身が何とかすれば良いだけの話、と即座に切り替えるとジャンヌの方を見遣る。
「ジャンヌ。 お前さんはどうだ?」
声が掛かったジャンヌは龍人族の腕力を駆使してヴェルティを押し退けると、迅の手を両手に持ち自身の胸に抱き込む様に押し当て話し始める。
「御主人。 アタシゃハッキリ言って初見ではアンタみたいなガキのお守りなんざウンザリだと感じてた。 だが拳を、獲物を交わして判った。 アンタは最高の武人であり、奴隷身分に落ちたとは言え、龍人族当代最狂とまで言われた『暴虐龍の落とし子』であるアタシを従える権利・価値、そして実力があるってね。アタシの方こそ頭を下げてお願いしたいくらいさ。 御主人、アタシもヴェルティ共々、地獄の釜の底まで存分にこの腕を振るわせてくれ。」
「わ、判ったからよぉ、手を離せ! ガッツリと当たってんだよ!!」
「煩いねぇ! 当ててんだよ、バカ御主人!!」
「ど、どっちがバカだ! 了承なら了承でイイから、は、な、せ!!」
そう言って迅はジャンヌの谷間で、彼女の両手にてロックされた挙句押し込まれた右手を勢い良く引き抜く。
「よし、バカ共。 今日から俺の奴隷な! 勝手な真似もバカな事も禁止だ! ったく…。」
何という挨拶だ、と自身の狼狽振りに頭を抱えたくなる迅であったが、サントスに渡された書類に目を遣り、即座にリィナを手招きにて呼ぶ。
不満が服を着て歩いている様子のリィナが迅に近寄ると、呼ばれた理由を問う。
「…何ですか、エッチなジンさん。」
「お前…、何つー言い草だテメェこの野郎! どれもこれも俺の意思でやってるワケじゃ無ぇだろ!!」
「…バカ。 それで、役立たずの私に何か用ですか?」
リィナの言葉に迅の表情が一変する。
部屋の空気すらも一瞬にて変わり、周りの者も一瞬身震いをする。
「オイ、リィナ。 自分で自分をそうやって卑下するんじゃ無ぇ。 俺は役立たずと共に冒険する気は無ぇ。 お前にはお前なりの、俺には俺なりの価値がある。 自分で今の現状を見下して未来に蓋をするな。」
迅の只事では無い雰囲気を察したリィナだが、それでも食い下がる。
「だって…、私なんて要らないくらいのメンバーばかりじゃないですか! 私に何が出来るって言うんですか!? 私の役割なんて、この中には…。」
そこまで言うとリィナの眼から涙が溢れ落ちる。
だがそれでも意思の強さは眼に宿っている。
ただ辛い・寂しいだけでは無く、しっかりと悔しさを滲ませている事を理解した迅は表情を緩め、リィナの質問に答える前にサントス以外の三人に質問する。
「こん中で魔法を使えるヤツは?」
するとジャンヌが手を挙げるも、
「初級のバフ系しか使えないけどね。」
と、答えた。
迅はその答えを聞き、リィナに向き直る。
「リィナ。 お前は偉大なエルフの一族で、魔法に関しては一日の長があるんじゃ無ぇのか? パーティに魔法は必要不可欠なんだ。 お前の役割は此処に確かにある。」
「…もっと別の凄い魔法使いだって、居るじゃないですか。」
「バカか。 お前の為にメンバー全員を女にしたんだぞ? 凄い魔法使いが出てきました、はいサヨナラなんて事するくらいなら、最初からそんな配慮するか? お前(の将来性や思い切り、魔法)が必要だ。」
その言葉にリィナは声を上げて泣き始めた。
傍にバレットが寄り添い、胸に抱き寄せて頭を撫でる。
だが、その目は迅を睨んでいる。
何故睨まれんといかんのだ?と迅は心中で毒付くが、泣かせたのは自分である為、保護者の怒りを一手に引き受ける事にした。
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