26. 奴隷市場
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奴隷というモノは、迅が生きてきた世界で関わる事は無かった。
自身が戦火に身を投じている時、他所ではそういった制度があったか無かったかという論争が死ぬ間際まであったのは記憶にある。
だが、売買される人間という意味での奴隷は海外のニュースやラノベでしか知らなかった。
顔が険しくなった迅に気付いたのか、サントスが声を掛ける。
「サナダ様、御安心下さい。 当社は奴隷に対して不当な扱いは一切しておらず、不当な扱いをする主人から買い戻す事もあります。 奴隷という響きは嫌な響きで御座いますが、其々が『主人の奴隷で良かった』と思える様に手引きしながら商いをさせて頂いております。」
「いや、社長の事だから疑ったり訝しんでるワケじゃねぇんだ。 ちょっとした都合でな、あまり馴染みが無くてよ。 気にしねぇでくれ。」
この男に頼んで良かったと迅は心底思った。
このサントスという男は商売人なれど、誠実さと人情味をモットーに商いをやっている様子だ。
にも関わらずしっかりとした黒字経営をやっていけている点を省みるに、相当な傑物だと判断した。
人を見る目はそれなりにあると自負している迅だが、今日ばかりは自身の人生に感謝する。
「では、メイドから面談をお願い致します。」
応接室に通された迅達は、サントスの言葉を皮切りに数人のメイドと面談を行なった。
どのメイドも欠点らしい欠点が見つからない。
恐らく相当腕の良いメイドばかりなのだろう。
選ぶのには一苦労の為、一つフィルターを入れる事にした。
「社長。 戦闘技術があり、Cランカー以上の実力である娘に絞ってくれねぇか?」
「サナダ様。 その条件ですと、ほぼ全員が通過致しますね。 Bランカーですともっと絞られますが…?」
圧倒的人材。
サントス商会の底力と言うか、本当に見る目がある傑物の様だ。
サントスの提案通り、Bランカーに絞って再度面談をさせてもらう。
一通り面談を終え、リィナとバレットに相談するも、
「女性を雇うのに、私達の意見は不要でしょ?」
「主は少し我々の感情を読む努力をしろ。」
と、取り付く島も無い。
なので、迅の好みで選ぶ事とした。
一人は燃える様な橙色の髪の毛に、同じ色の瞳。
肩上までで切り揃えたストレートな髪と恐らく迅の鳩尾辺りまでと非常に低い身長が印象的な、所謂『可愛い』ドワーフ族。
もう一人は、キラキラ光る白銀の髪に少し黄色掛かった色の瞳、腰の上まであるロングヘアの、所謂『美人』な狐の獣人族。
二人は揃って斧と弓と魔法、剣と魔法の心得があるらしく、家を空けている間の警備にも充分な戦力である様だ。
続けて冒険者の紹介をしてもらう。
してもらったのだが、違和感があった。
全員の経歴書を捲って捲ってとして、一つ気付いた。
「社長。 事情は何も言ってなかったんだが、何で全員女なんだよ?」
「おや、男性でも良かったのですか?」
「いや、一応意向通りではあるけどよ…。 しかしこう露骨に女ばっか、しかもBランカーで丁寧に揃えてくれるたぁ…。」
「お客様の手の届かない所へ手を届けるのが我が社のモットーでして。」
素晴らしい。
なら、もうアレだ。
リィナやバレットの刺す様な視線は無視して、この中から決めよう。
基本的にはリィナの為でもある女性縛りなのだが、彼女にはそれを理解している素振りは無い。
何故俺がお前らにそんなジト目で見られる事になるんだ、と心中で毒づく迅であった。
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