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やらかしとえいきょー

 アメリカがやらかした。

 無事『氾濫』を制圧した『黄金の涙ダンジョン』の内部で、『MOAB』とかいうなんか凄い爆弾を改造したものを爆発させた。

 そしたら案の定『氾濫』が再発して。『黄金の涙ダンジョン』のあるジョージア州だけでなく、フロリダ州、サウスカロライナ州、アラバマ州まで『氾濫』を起こしたモンスターの手に落ち。今もその『氾濫』は拡大を続けているらしい。

 死傷者と難民は増加を続ける一方で、アメリカの経済も産業もガッタガタなんだとか。

 MOABが何の略称かは知らないけど、かなり破壊力の凄い爆弾らしい。ダンジョンが自己防衛として『氾濫』を起こすのも当然だ。


 問題は、その影響を日本がもろに受けていて。生活にかなり被害が出ていることだろう。


「……そういう訳で来月から電気代、水道代、ガス代が上がります」

「まあ仕方ないよな」

 私の説明を受けた田中さんは肩を落とした。

「タンカーが動かないんじゃあどうしようもない」


 インド洋の海底にあった複数のダンジョンで『氾濫』が起こったらしく。アメリカの混乱もあって、しばらく日本にタンカーは来られないそうな。

 ニュースだと、北樺太からタンカーを持ってきたり、パイプラインを引いてくる計画もあったらしいけれど、これもロシアの混乱があって断念。

 という訳で、日本国内の原油価格は高騰。ガソリンも軽油も灯油も配給制になって。当然電気代も上がることに。

 電気代の値上がりに従って水道代も値上げ。

 ガスに関しては、ダンジョンから得られるとかで、配給制になるまでは追い込まれていないけれどやっぱり値上げ。

 その値上げのお知らせを、『だんそん』の方々に書面で知らせて。念押しも兼ねて、『だんそん』に帰って来ている間に、こうして一人一人知らせて回っている訳だ。

 食品の配給の話は、今のところないみたいだけれど。既にかなり値上がりしていて。この間街にトイレットペーパーを買いに行ったら棚が空っぽでびっくりした。

 その翌日ニュースで見たけれど、原料と電力の不足であまり生産出来ていないのだとか。


「ここのダンジョン、泥炭掘れるからそれで発電したら電気代下がりそうなモンだがなあ」

 田中さんは苦笑する。

「電力不足はここだけじゃないですからね」

「それもそうだな。しかし、」

 田中さんは残念そうにため息をついて、言った。

「畑さんとこのウイスキー、この調子だと飲めなさそうだな」


 畑さんは『ここのダンジョン()』解放初日に、泥炭に興奮していた人だ。

 彼の所属している会社は、政府の協力も得て、元私の山なここのダンジョンの近くに小さなウイスキーの蒸留場を建てていたんだけれど。工事自体は終わっているけれど、この物価高騰で肝心のウイスキーの原料が手に入らなくて、ウイスキーを作ることが出来ないらしい。


 心底残念そうな田中さんに、私は思い付きをそのまま口にする。

「確かウイスキーって、大麦から作るんですよね?」

「ん? ああ。あとライ麦とかトウモロコシからも作れるらしいな」

「なら、ここのダンジョンの第三層と第四層に大麦生えてるらしいから、それ刈ってきて作ってみたら良さそうですよね」

 すると田中さんは目を見開いた。

「……そう、そうだな。確か第一層には、綺麗な水が湧く場所もあった。いけそうだな」

「ですよね?」

「早速畑さんに言ってくる。大家さんも一緒にどうだ?」

「一緒します。畑さん落ち込んでましたし」


 ということで、畑さんのいる『豊穣の森蒸留場』の事務所にやって来た。

「ああ。大家さんと田中さんですか。どうしましたか?」

 畑さんの表情は憔悴しきっていて、かなり心配だ。

「ああ。大家さんが良いアイデアを思い付いてな」

「アイデア?」

「はい。ダンジョンに、大麦も水もありますよね? それを使ってウイスキーを作ったらどうかな、って。樽も、沢山木の種類あるし、いけるんじゃないかなあ……?」

 すると畑さんは血走った目をひん剥いて、私の両肩を掴んで揺らし始めた。

「その手があった! ありがとう大家さん! これで我が社は救われる!!」

 ハッハー! と笑い声を上げて、畑さんは事務所の奥に走って行った。早速電話をかけているみたいだ。

「……畑さん元気になりましたね」

「……そうだな。だが、探索者が泊まる建物はどうするつもりだ?」

「協会さんが二棟、六十人入るアパートを建ててますけど、足りますかね?」

「あの工事か。……六十人では無理だと思う」

「自治会の方でもアパート増やせないか、って話はしてるんですけど。最近の色々値上がりで諦めたんですよね」

「……あれもこれも値上がりのせい、か」

「ですね」

 田中さんは深々とため息をはく。

「……午後からダンジョン潜るかあ」

「無理しないでくださいよ?」

 そこだけは何重にも注意しておいて欲しいので、私は念押しするように言う。

「泥炭掘りくらいしかしないから大丈夫だ」

「ならいいですけど」


 こうして、畑さんの所属する会社『トリトリー』は『ダンジョンウイスキー』に向けて再出発したのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >『MOAB』とかいうなんか凄い爆弾を改造したものを爆発させた。 1トンもある奴持ち込めるんだ 大麦や泥炭がウィスキー作れるぐらい持ち出しているからな
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