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じゅんびきかん

 私の本体のダンジョンは日本政府預かりとなり、色々手続きをした後、ダンジョンのある山ごと国有地となった。普通に売る五倍くらいの値段で売れた。

 そして今では、自衛隊の方々が毎日潜っている。でも、この集落に泊まる場所がないので、空き家丸ごと自衛隊が借りたり買ったりして使われていて。これを機に、集落を出ていくジジババもいる。

 私はというと、アパート『だんそん』を一時的に自衛隊に有料で貸し出している。自衛隊は何故か相場以上のお金を払ってくれるので、結構ウハウハだったり。

 集落の作りすぎた野菜も自衛官が高く買ってくれることもあって。今集落は『ダンジョンバブル』のような状況だ。なにせ、作った野菜が片っ端から売れるのだ。しかも、農協とか道の駅みたいに運んでいくガソリン代も時間もかからない。幾つかの家は失業していた親戚を呼んで放棄していた田畑を整備し直す程で。

「ダンジョンってすげー」

 私は家庭菜園のかたわら、農業初心者の手伝いをしつつ、そうつぶやくと、集落の親戚に呼ばれたという農業初心者のおっちゃんが全力で同意してきた。

 ダンジョンがひとつ、探索が始まっただけでこれだ。こんな光景が全国のダンジョン周辺で繰り広げられているのか。

 と思ったけれど、違うみたい。

「ああ、ここのダンジョンにこんなに人員が当てられているのはですね、モンスターが弱い割にドロップが美味しいんですよ」

 別に隠すことでもないからと、家族連れでこの集落に来た自衛官の男が言う。

「自衛隊は金食い虫な組織で、そんな組織が全国二百か所以上のダンジョンの管理をしている訳で。そうなるとどうしてもお金がかかります。なので、今のうちに稼げるだけ稼ごう、ということです」

「今のうちに?」

 気になる部分があったので、尋ねると。

「はい。探索の簡単で安全なダンジョンは、一年以内に民間に解放される予定です。来週、その説明会が行われますので、是非来てください」

 そうチラシを渡された。

 つまりはまあ、私のダンジョンは民間に解放される、と。

(ありがたいなあ)

 他のダンジョンは知らないけれど、私のダンジョンは人が入れば入るほど成長する。『美味しいダンジョン』が民間に解放されれば、沢山の人が来るだろう。そうしたら、ダンジョン()はますます成長出来る。本当に、ありがたい話だ。


 『87番ダンジョン民間解放に関する説明会』と、その後何度も行われた話し合いで、だいたいの集落の方針が決められた。

 まずは、自衛隊『防衛省』の下部組織として、ダンジョン探索専門の『ダンジョン庁』が出来るので、集落としてダンジョン庁の組織『探索者協会』に協力する。

 その関係で、今のうちに空き家は全て自衛隊に売却。その一軒家には、ダンジョン探索を行う一般人である『探索者』を救助するための自衛隊の組織『ダンジョン救助隊』の隊員と『探索者協会』の職員が入る。

 アパート『だんそん』は一か月単位で探索者に貸し出す形で。もっと少ない日数集落に来る探索者のために、十年単位で放棄されていた田畑を潰して専用のホテルを造る。

 そして、元から集落にいる人達は親戚や知り合いを呼んで。放棄地を再耕作して、ダンジョン探索にあたる方々へ新鮮な野菜や果物を届ける。

 国に売却した元私の山の栗園は、私が買い取り直して(!?)栗園として整備し直す。

 最後の栗園だけは訳が分からないけれど、だいたいそんな方針で決まった。今集落に残っている人達皆ダンジョンのお陰で儲かっているということもあって、集落一丸となって準備は進む。


 特に集落でトラブルが起こることもなく。ダンジョンの一般解放に必要な法案も、珍しく野党が協力的だったこともあって予定より速く進み。

 私のダンジョン発見から八か月後。説明会から半年後。私のダンジョン『87番ダンジョン』は民間に解放された。

 びっくりしたのは、自衛隊が私のダンジョンをかなり正確に調べていたことだ。しかも、その情報をマニュアル化して一部はネットに公開したということもあって、沢山の探索者が集落に集まる。

 ダンジョン産の資材を使って建てたというホテルは満室で、『だんそん』も全室埋まり。かといって駐車場はあんまりないので、車中泊は出来ないため、隣の集落の空き家を借りたという猛者も現れる。

 探索者だけで集落がパンクしている中、幾つかのマスコミが集落手前まで来ていたけれど、殺気立った探索者に追い返されたいた。

 なんでも、私のダンジョン『87番ダンジョン』は『E級ダンジョン』という、探索者協会の講習を受けた人でなければ入れないダンジョンに指定されていて。その講習の中で、彼らは実際にダンジョンに入ってモンスターを倒し、『ジョブ』を得ているのだとか。

 そんな超越者の殺気を浴びたら、いくら横暴なマスコミの人達だって、引き下がって当然だよね。

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