表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/454

日本本土防衛戦 序章 破軍星の独語 2

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 東京府を含む関東地区の政経中枢の防衛と警備等を担当する独立した自衛隊組織である破軍集団司令部要員が、生活する官舎の高級幹部たちが利用する階で破軍集団司令官である國仙正春(こくせんまさはる)陸将はいつもの起床時間に目を覚ました。


 官舎の高級幹部専用が使用する部屋と言っても、すごいものでは無い。


 現代の日本のビジネスホテルの一般客室と変わらない。


 寝室の広さはビジネスホテルよりも小さく、シングルベッドと飲み物や間食を入れておくぐらいの小型の冷蔵庫、小型のテレビ、本棚、固定電話が設置されているだけだ。


 部屋にはトイレと風呂場があり、後は私的な会談用の小さな応接室がある。


 國仙も破軍集団司令官である以上、官舎に戻れる事はなかなか無い。


 彼はいつものように運動着に着替えると、部屋を出て、エレベーターを使わず、階段を使って最上階から、1階に降りる。


 1階は主に食堂と千代田駐屯地業務隊から派遣された分遣隊の受付等がある。


 破軍集団司令部は、宮城に隣接する地区を買取り、千代田駐屯地を開設した(駐屯地呼称は陸自であり、海自と空自は基地と呼称している)。


 官舎の管理や業務は千代田駐屯地(基地)の業務隊が兼任しているが、官舎敷地内の警備は日本共和区で本社を置く警備会社の警備員たちが担当している。


 國仙は敷地内一杯を使って、ジョギングを行う。


 早朝でもあり、官舎に帰宅した破軍集団司令部要員たちも、朝のランニングを行っている。


「「「おはようございます。司令官」」」


 次々と自分よりもはるかに若い幹部たちが國仙を追い抜きながら、朝の挨拶を行う。


 50代後半であるから、20代、30代の若い自衛官たちに追い抜かれるのは年齢的にも体力的にも仕方が無いが、あまり納得できるものでも無い。


 それに、自分に気を遣ってか、ゆっくりとしたペースで走る者もいる。


 それも、納得できるものではなかった。


 1時間程走ると、春の季節を迎える3月の気候でも汗が流れる。


 汗拭きタオルで額と首の汗を拭う。


「司令官。年だと認めてしまいますと、いっきに体力が低下しますよ」


 國仙の腹心の部下であり、破軍集団司令官付先任上級曹長の(わた)()満徳(みつのり)准陸尉が氷の入った袋を太股に当てながら、言った。


「頭では認めていないつもりだがな・・・」


 國仙は薄く笑みを浮かべながら、答えた。





 官舎に戻った破軍集団司令部要員は、破軍集団司令部所有の人員輸送車に乗り込み、千代田駐屯地まで送迎される。


 國仙と破軍集団司令部に所属する陸海空自衛隊の総監である3人の将は公用車で送迎される事になっている。


 ちなみに人員輸送車及び公用車の利用は公務でも給料から天引きされるし、私的利用の場合は一般のタクシー料金やバス運賃と同様だ(幹部のみ)。


 宮城が目に入る場所に破軍集団司令部がある千代田駐屯地がある(ただし、駐屯地又は基地として扱われているが、規模は分屯地又は分屯基地ぐらいの規模であり、あまり大きくない)。


 駐屯地の正門に警衛隊の隊員は迷彩服3型で防弾チョッキ3型を着込み、完全装備姿の警衛隊員が目出し帽を被り、素顔が見えないように立っている。


 國仙の乗った公用車が正門を通過する際に警衛隊詰所にいる隊員の一部を除き、ほとんどの隊員が89式5.56ミリ小銃(銃剣を装着した状態)を持って、捧げ銃の姿勢をとる。


「後、数日で正月(まさつき)雪乃(ゆきの)さんの命日か・・・」


 國仙はつぶやいた。


 彼の口からこぼれた2人の名は、國仙の1人息子である國仙正月と息子の嫁である國仙(旧姓は遠坂)雪乃だ。


 2人は医者であり、東アフリカの某国で発生した大規模紛争の際に国連の医師団として紛争地域で医療活動を行っていた。


 しかし、ある日、武装グループの襲撃を受け、2人は殺害された。


(早いものだ・・・)


 國仙は目を閉じた。


 彼は一度もあの日の事を忘れた事は無い。


 恐らく、人生でもっとも辛い日だった、と言う者がいつの世にもいるが、彼の事を知れば、世間の人は簡単に言えなくなるだろう。





 その時、國仙はPKO活動で、その国の隣国にいた。


 国連の医師団から武装グループに襲撃されているとの連絡を受け、救援要請を受諾し駆けつけ警護の準備を整えていた。


 しかし、その国との交渉に当たっていた外務省から、自衛隊機の領空侵入を却下された、と通達され、出撃できなかった。


 結局、現地の警察隊が駆けつけた時には、すでに手遅れだった。


(あの時、自分が命令違反を犯してでも救援隊を出動させていれば・・・)


 國仙の心には、悔やんでも悔やみ切れない痛みが刻まれている。


 息子と嫁は、一緒に医療活動をしていた人々と同じく、戦火に追われ傷つき苦しむ人々を助けたかっただけなのに・・・


 だが、世界は狂っている。


 優しい心を持った人々を否定するほどに・・・


 だから、國仙はここにいる。


 歪みきった世界を正すために。


 どんな、非道な手段を使っても、優しい未来を創るために。


 それが、息子や嫁、それ以外の失われた命に対する彼なりの償いだった。

 日本本土防衛戦 序章2をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回からは2話づつ投降いたします。次話は7月26日を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ