日本本土防衛戦 序章 破軍星の独語 1
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
本日から第5部日本本土防衛戦篇に入りますが、同篇は5部と6部に別けて投降いたします。
日本共和区統合省防衛局統合幕僚本部第2会議室で統合幕僚本部運用行動部に所属する陸海空自衛隊の幹部たちが集まっていた。
その中には氷室匡人2等海佐の姿もあった。
彼は運用行動部第1課に所属している。
第1課は防衛計画を検討、立案する部署だ。
会議室は統合幕僚本部庁舎の中でいくつも設置され、会議室の収容人数は1つの部の定員を収容させられるパイプ椅子が設置され、会議できるよう会議机と1人1台のノートパソコンを置けるスペースと電力を確保している。
基本的に部の会議は、第1から第5まである会議室で行われる。
課の会議は、いくつも設置されている小会議室で行われる。
幕僚本部長が出席する会議は防音設備と防諜対策等のセキュリティーレベルがもっとも高い上級会議室で行われる(もちろん、それ以外の会議室もセキュリティーは万全である)。
「新世界連合情報本部からの情報が届いた。内容についてはすでに君たちも知っての通り、アメリカ軍はハワイ諸島の奪還を計画している。そのため、各地で威力偵察や挑発行為、陽動作戦等を実行又は実行準備をしている。中でもアメリカ軍は日本本土への空襲を計画しているそうだ」
運用行動部部長の神木空将補が言った。
その説明に誰も驚きの声は上げない。
それどころか当然だろう、という顔をしている。
この件については新世界連合や新世界連合軍からの情報提供が無くても、知っている事だ。
統幕本部情報部からも防衛局情報部からも報告されている。
(史実通り、アメリカ軍は空母からB-25を発艦させて、東京を空襲するのか・・・?いや、僕ならそんな単純な策は使わないな)
氷室は心中でつぶやいた。
「統幕本部情報部からの情報によればソビエト連邦社会主義共和国の極東軍に動きがあるそうだ。スターリンがいなくなったため、統合省も統合省に属する各局も日ソ不可侵条約は空中分解したと結論付けている。日本本土空襲はあらゆる方向から行われると予想される。ここで君たちの意見を聞きたい」
神木がそう言うと、運用行動部に所属する幹部自衛官たちが手を挙げた。
まず、最初に発言したのは氷室である。
彼は日本防衛の検討と作戦の立案をする役目を与えられている。
「日本本土空襲ですが、僕が思うに、本土空襲だけでは無いと考えます」
氷室の言葉に幹部自衛官たちはノートパソコンに保存されているファイルの1つを開き、日本地図を出した。
その地図には大日本帝国陸海軍の配備状況と、菊水総隊陸海空自衛隊の本土防衛を担当する師団と旅団等の配備状況が記されている。
「氷室2佐。具体的にどのような事が予想される?」
神木が聞いた。
「はい、恐らく北海道方面への侵攻が予想されます。理由は簡単ですが、ソ連の極東軍は満州を完全に占領しています。もし、現在モスクワを占領しているドイツ第3帝国の攻勢が開始された場合、ソ連全土が占領される可能性があります。その時、例え満州に退避しても、今度は中国軍とドイツ第3帝国国防軍の2つを相手にしなくてはなりません。しかし、北海道方面に侵攻し、一部の島等を占拠していればそこからドイツ第3帝国国防軍に攻撃し、弱らせる事もできますし、ドイツ国防軍も長期の行軍で、疲労が蓄積していると推測されるため、奇襲攻撃もかなりやりやすいと思われます」
氷室の発言に他の幹部自衛官も、あり得るという顔をしている。
菊水総隊の各幕僚等と違い、統幕本部の幹部自衛官たちは、全員が氷室の能力を評価している。
「なるほど。氷室2佐の意見はもっともだ。しかし、大本営の陸海軍部の連中はこのような指摘に納得しないだろうな。彼らの中には我々の存在を邪魔に思っている連中もたくさんいるし、これ以上恩を売られたくない、という輩もいる。そこで、この席を借りて、氷室2佐には、ここで完全に大日本帝国の軍人魂と頭の固い堅物連中の発言力をさらに弱らせる計画案を立案して貰った。その案はできているのだろう?」
氷室の上官である第1課課長(1佐)が聞いた。
「はい。それではみなさん、ファイルのG-1を開いてください」
氷室の言葉に会議に出席している幹部自衛官たちがファイルを開く。
10分後。
計画案を黙読した幹部自衛官たちは、氷室の恐るべき計画案を見て、うなずいた。
「ハワイ諸島の占領は、あくまでも陽動です。アメリカ合衆国は、自国の威信とプライドで躍起になって奪還しようとしています。おかげで、自身の喉元に突きつけられているナイフに気がついていません。例の救出作戦で、エクアドル政府とは密かに協力態勢を構築する事ができました。外務局も良い仕事をしてくれましたよ。エクアドルに救出作戦の協力への謝礼ということで、医薬品等の物資を輸送する事を非公式ですが、アメリカ政府に黙認させましたから・・・その中に別の物が混じっていたとしたら、どうでしょうね」
皮肉な笑みを浮かべながら、氷室は述べた。
そう、地政学的に考えればエクアドルの位置が、アメリカ合衆国にとってどんな場所を意味するのか?
ハワイなど、ただの撒き餌だ。
それに気がつく奴はいるのか?そう思って、氷室は1人の人物を思い浮かべた。
従姉の側でチョロチョロしている目障りな男だ。
あの男なら気がつくかもしれないが、所詮は一介の少尉だ。
余程、良い上官に巡り会わねば、あの男の意見は一顧もされないだろう。
その時、眼鏡をかけ直している自分に気がついた。
「・・・姉さんに言われたな・・・」
小さくつぶやいた。
(この癖は直さないといけないな)
日本本土防衛戦 序章1をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。




