間章 プロローグ 悔恨と決意
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
本章より、間章に入ります。全部で12話投稿します。
第1回目の投稿として3話投稿します。最後の3話以外は2話づつ投稿します。
本章は最後の部分以外は戦闘はございませんので、あらかじめご了承ください。
神奈川県横須賀市。
港が見える小さな公園で、1人の男がぼんやりとした表情で、ベンチに座っていた。
太陽は西に傾いている。
それでも男は動こうとしなかった。
彼は、海上自衛隊第1護衛隊群首席幕僚の緒方粂八1等海佐である。
数日前、第1護衛隊群司令の内村忠助海将補と護衛艦隊司令官の高尾悟朗海将に呼び出され、日本政府が極秘裏に進めているある計画を聞かされた。
そして、彼は1つの重要な任務が与えられた。
「新設される特務艦隊旗艦の艦長・・・」
緒方は小さくつぶやいた。
自分の後任の首席幕僚には、自衛艦隊司令部付の村主京子1等海佐が内定している。
まだ若いが、能力的には申し分ない。
緒方にとってはこの任務を受けるしか道はない。そうでなくては、自分の居場所が無い。
しかし・・・
「過去への片道切符・・・」
第2次世界大戦、そして戦後の歴史を変える為、第2次世界大戦の時代へタイムスリップする。
冗談でも笑えない。
そして、二度と元の時代に戻れない。
「陽子・・・俺はどうすればいい・・・」
この世にいない妻に問いかける。
緒方の妻、陽子は3年前に亡くなった。
陽子の死は、あまりにも突然だった。
緒方が任務で海へ出ていた時だった。急報を受け、緒方が病院へ駆けつけた時には陽子は旅立った後だった。
「お父さんは私たちの事なんて、どうでもいいのよ!!」
白い布に覆われた、妻の横たわる霊安室の前で、中学に入ったばかりの長女は、涙を流しながら、母を看取る事の出来なかった、父親を責めた。
「!!・・・違う!俺は!!俺は!!・・・?」
あの時の光景が脳裏を過ぎり、思わず叫んで、緒方は我に返った。
「・・・・・・」
いつの間にか眠っていたらしい。
周囲は夜の帳に包まれていた。
軽くため息をついて、緒方は空を見上げた。
漆黒の闇。無数の光が瞬いている。
(陽子はこの公園で、いつも星空を眺めていたな・・・)
星が1つ流れて落ちた・・・
「!!?」
人の気配を感じて、振り返った緒方は、驚きのあまり目を見開いた。
目の前には3年前と変わらない姿の妻が立っていた。
「・・・陽子・・・これは・・・?」
「あなた・・・」
「・・・陽子、俺はあの時・・・すまなかった。もっと、早く駆けつけていれば・・・」
ずっと、言えなかった言葉だった。
「いいえ、貴方はずっと自分を責めていた。それが私には辛かった・・・でも、もう苦しまないで・・・貴方が受けた任務は貴方にしか出来ない。だから・・・」
「いや、それは・・・君がいなくなって、俺まで消えたら子供たちはどうなる?俺は子供たちを傷つけた。側にいなければならない時に側にいなかった。これからの俺にできるのは、一生かけてこの償いをする事だ。たとえ嫌われ憎まれても、父親としての責任を果たす事だ」
陽子は小さく首を振った。
「それは違う。貴方の仕事はあの娘たちにとっても、誇りよ。あの娘は貴方を責めた事を悔やんでいるの。貴方が貴方のやるべき事を放棄すれば、あの娘たちはもっと傷つく・・・これから、貴方が・・・貴方たちがやろうとする事は、この国を、世界をより良い道へ導くもの。大丈夫、あの娘たちは自分の進む道を知っている。だから、貴方は後ろを振り返らずに前を見て・・・前に進んで・・・迷わないで・・・」
「はっ!?」
我に返った時、妻の姿はなかった。
あれは夢だったのか、幻だったのか。それすらわからない。
「やっぱり、ここだったか」
聞き覚えのある声。
「父さん・・・」
「まったく、特別休暇が3日も過ぎたというのに・・・家にも帰って来ないとは・・・」
父の久六だった。
元陸上自衛隊東部方面総監部の陸将補だった。
そのため、幕僚監部に顔がきき、緒方の受けた極秘任務について知っていたのだろう。
久六が来た理由はすぐ察しがついた。大方、煮え切らない態度の緒方の説得を頼まれでもしたのだろう。
「どうして、ここにいるのがわかったんだ?」
「どうせ、お前の事だ。陽子の事でずっと悔やんでいたのは知っていたからな」
「・・・・・・」
「なあ、粂八・・・」
「・・・いや、父さんの言いたい事はわかっている。陽子にも言われた・・・」
突然の息子の言葉に父は怪訝な表情を浮かべたが、すぐに得心したようにうなずいた。
「会ったのか?」
「夢か、幽霊かはわからないが・・・」
「そうか・・・」
そう言って、久六は星を見上げた。
「なら、儂が言う事はないな・・・孫たちの事は儂に任せておけ。お前はお前の思う道を行け。その前に、1度家に帰って来い。孫たちはお前の帰って来るのを待っている」
そう言って、踵を返して父は去って行った。
その後ろ姿を見送って、緒方はもう1度空を見上げた。
迷いの時は、去っていた。
間章 プロローグをお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。




