表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/454

間章 プロローグ 悔恨と決意

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 本章より、間章に入ります。全部で12話投稿します。

 第1回目の投稿として3話投稿します。最後の3話以外は2話づつ投稿します。

 本章は最後の部分以外は戦闘はございませんので、あらかじめご了承ください。

 神奈川県横須賀市。


 港が見える小さな公園で、1人の男がぼんやりとした表情で、ベンチに座っていた。


 太陽は西に傾いている。


 それでも男は動こうとしなかった。





 彼は、海上自衛隊第1護衛隊群首席幕僚の緒方粂八(おがたくめはち)1等海佐である。


 数日前、第1護衛隊群司令の内村(うちむら)(ただ)(すけ)海将補と護衛艦隊司令官の高尾(たかお)()(ろう)海将に呼び出され、日本政府が極秘裏に進めているある計画を聞かされた。


 そして、彼は1つの重要な任務が与えられた。


「新設される特務艦隊旗艦の艦長・・・」


 緒方は小さくつぶやいた。


 自分の後任の首席幕僚には、自衛艦隊司令部付の村主(すぐり)京子(きょうこ)1等海佐が内定している。


 まだ若いが、能力的には申し分ない。


 緒方にとってはこの任務を受けるしか道はない。そうでなくては、自分の居場所が無い。


 しかし・・・


「過去への片道切符・・・」


 第2次世界大戦、そして戦後の歴史を変える為、第2次世界大戦の時代へタイムスリップする。


 冗談でも笑えない。


 そして、二度と元の時代に戻れない。


陽子(ようこ)・・・俺はどうすればいい・・・」


 この世にいない妻に問いかける。


 緒方の妻、陽子は3年前に亡くなった。


 陽子の死は、あまりにも突然だった。


 緒方が任務で海へ出ていた時だった。急報を受け、緒方が病院へ駆けつけた時には陽子は旅立った後だった。


「お父さんは私たちの事なんて、どうでもいいのよ!!」


 白い布に覆われた、妻の横たわる霊安室の前で、中学に入ったばかりの長女は、涙を流しながら、母を看取る事の出来なかった、父親を責めた。





「!!・・・違う!俺は!!俺は!!・・・?」


 あの時の光景が脳裏を過ぎり、思わず叫んで、緒方は我に返った。


「・・・・・・」


 いつの間にか眠っていたらしい。


 周囲は夜の帳に包まれていた。


 軽くため息をついて、緒方は空を見上げた。


 漆黒の闇。無数の光が瞬いている。


(陽子はこの公園で、いつも星空を眺めていたな・・・)


 星が1つ流れて落ちた・・・





「!!?」


 人の気配を感じて、振り返った緒方は、驚きのあまり目を見開いた。



 


 目の前には3年前と変わらない姿の妻が立っていた。


「・・・陽子・・・これは・・・?」


「あなた・・・」


「・・・陽子、俺はあの時・・・すまなかった。もっと、早く駆けつけていれば・・・」


 ずっと、言えなかった言葉だった。


「いいえ、貴方はずっと自分を責めていた。それが私には辛かった・・・でも、もう苦しまないで・・・貴方が受けた任務は貴方にしか出来ない。だから・・・」


「いや、それは・・・君がいなくなって、俺まで消えたら子供たちはどうなる?俺は子供たちを傷つけた。側にいなければならない時に側にいなかった。これからの俺にできるのは、一生かけてこの償いをする事だ。たとえ嫌われ憎まれても、父親としての責任を果たす事だ」


 陽子は小さく首を振った。


「それは違う。貴方の仕事はあの娘たちにとっても、誇りよ。あの娘は貴方を責めた事を悔やんでいるの。貴方が貴方のやるべき事を放棄すれば、あの娘たちはもっと傷つく・・・これから、貴方が・・・貴方たちがやろうとする事は、この国を、世界をより良い道へ導くもの。大丈夫、あの娘たちは自分の進む道を知っている。だから、貴方は後ろを振り返らずに前を見て・・・前に進んで・・・迷わないで・・・」





「はっ!?」


 我に返った時、妻の姿はなかった。


 あれは夢だったのか、幻だったのか。それすらわからない。


「やっぱり、ここだったか」


 聞き覚えのある声。


「父さん・・・」


「まったく、特別休暇が3日も過ぎたというのに・・・家にも帰って来ないとは・・・」


 父の久六(きゅうろく)だった。


 元陸上自衛隊東部方面総監部の陸将補だった。


 そのため、幕僚監部に顔がきき、緒方の受けた極秘任務について知っていたのだろう。


 久六が来た理由はすぐ察しがついた。大方、煮え切らない態度の緒方の説得を頼まれでもしたのだろう。


「どうして、ここにいるのがわかったんだ?」


「どうせ、お前の事だ。陽子の事でずっと悔やんでいたのは知っていたからな」


「・・・・・・」


「なあ、粂八・・・」


「・・・いや、父さんの言いたい事はわかっている。陽子にも言われた・・・」


 突然の息子の言葉に父は怪訝な表情を浮かべたが、すぐに得心したようにうなずいた。


「会ったのか?」


「夢か、幽霊かはわからないが・・・」


「そうか・・・」


 そう言って、久六は星を見上げた。


「なら、儂が言う事はないな・・・孫たちの事は儂に任せておけ。お前はお前の思う道を行け。その前に、1度家に帰って来い。孫たちはお前の帰って来るのを待っている」


 そう言って、踵を返して父は去って行った。





 その後ろ姿を見送って、緒方はもう1度空を見上げた。


 迷いの時は、去っていた。

 間章 プロローグをお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ