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マレーの虎 第2章 パレンバン攻略 2 空挺降下作戦 後編

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 パレンバン地方には、米英蘭連合軍と、現地民から徴兵した義勇軍、支援軍として仏豪新国の3ヶ国から派遣された派遣軍が、駐屯している。


 2個機甲師団、4個歩兵師団を主力に義勇軍、派遣軍部隊が展開している。


 複数の飛行場、秘密飛行場があり、戦闘機、戦闘攻撃機部隊が配備されている。


 パシフィック・スペースアグレッサー軍と、大日本帝国軍が狙うとすれば、東南アジア最大の油田地帯であるパレンバンである事は、戦略の常識から考えて当然である。


 パレンバン守備隊の任務は、パレンバンの防衛であり、不可能であれば製油所や原油採掘施設を爆破する事である。





 連合軍の作戦を、ある程度、予想できる新世界連合軍、菊水総隊自衛隊、大日本帝国軍は、特殊作戦を行う特殊部隊を、新世界連合軍多国籍特殊作戦軍指揮下で、現地に隠密上陸、隠密空挺降下を行い、潜入させていた。


「フロッグより、指揮所。状況開始に変更は無いか?オクレ」


 多国籍特殊作戦軍指揮、監督下に置かれた特殊作戦群第1中隊第1小隊長の大崎(おおさき)志計(のぼる)1等陸尉が、無線員が携帯する大型無線機で、中隊と連絡した。


「状況開始に変更は無い。予定通り、製油所を制圧せよ」


 中隊指揮所からの連絡に、大崎は、部下たちにゴー・サインを出した。


 大崎の隣では、HK417を装備した隊員が、伏せ撃ちの姿勢で狙撃眼鏡を覗いている。


 HK417には、減音器を銃口に装着し、不可視レーザー装置等が装備されている。


「進入路を確保する」


 大崎は、そう言うと、狙撃手の肩を叩いた。


 狙撃手は、射撃許可の合図を受けると、引き金に指をかける。


 進入路に、配置されている警備兵の頭部に照準を合わせて、引き金を引く。


 減音器により、銃声は極めて小さく、自然の音でかき消され、人の耳には届かない。


 発射された弾丸は、警備兵の頭部に命中し、警備兵は、血を噴き出しながら倒れる。


「1班。前進」


 大崎が、部隊内で無線交信を行う小型携帯式無線機で、指示する。


 M4A1を装備した隊員たちが、前進する。


 深夜であるため、大崎以下全隊員たちは、暗視装置を装備している。


 隊員たちは、素早く、金網を切断し、製油所内に侵入する。


 彼らは、M4A1に減音器、照準補助器、擲弾発射器を装着している。


 隊員の個人装備は、かなりの軽装であるが、特殊訓練及び練度から判断すれば、1個班で1個中隊強に匹敵する戦闘能力を有する。


 大崎は、製油所の進入路及びその周辺を監視できる、絶好のポイントに潜み、中隊が運用する最新式の小型無人偵察機を使って、製油所の監視を行っている。


 大崎率いる小隊に与えられた任務は、パレンバン地方にある製油所の1つを、制圧する事である。


 もちろん、彼らだけでは無い。


 多国籍特殊作戦軍陸軍特殊作戦コマンドから、SAS(特殊空挺部隊)、グリーンベレー等の特殊部隊が参加し、第75レンジャー連隊1個大隊や、第1空挺団から選抜編成された臨時の特殊作戦援護隊等が、特殊作戦部隊を支援するために展開している。


 大崎は、腕時計を見る。


「まもなく、連合空挺部隊が空挺降下を開始する」


 対空砲陣地や航空施設等は深部偵察部隊が捜索、発見し、洋上にいる連合海軍艦隊総軍第3艦隊第4空母戦闘群、連合支援軍海軍空母艦隊から攻撃部隊が出撃し、爆撃している。


 無人攻撃機による予備攻撃も行われており、空挺降下を邪魔される可能性は少ない。





 製油所に潜入した特戦群第1中隊第1小隊の2個班は、4人で一組のチームを形成し、製油所で巡回している警備兵を沈黙させていく。


 コンバットナイフに持ち替え、背後から静かに近付きナイフで絶命させる。


 見張塔等で警備する警備兵には、クロスボウガンを装備し、矢を放った。


 特戦群が装備するクロスボウガンは、独自改良が行われた特殊作戦用の対人装備だ。


 古典的な武器であるが、無音、消音の武器であるため、隠密作戦時や敵に気付かれずに無力化するには、これほど適した装備は無い。


 銃火器の登場と消音技術が向上した現代では、軍隊がクロスボウガンを武器として使用する事例は減退した。


 しかし、どんなに消音技術が向上しても、完全に銃声を消す事はできない。


 銃の発射音を抑制する、減音器であるサウンド・サプレッサーは、あくまでも高音域を減少させる事を目的として、発射位置を隠蔽叉は、銃声では無いと錯覚させるレベルでしかない。


 いかに、音を抑制したとしても、耳ざとい人間には気付かれる。


 クロスボウガンの場合は、矢を発射する作動音程度であり、完全なる無音状態による精密射撃が可能。


 最も、射程距離で威力が変わるため、確実に対象者に致命傷を与えるには、それなりの腕が必要であるが・・・


「よし。行け」


 クロスボウガンを発射した隊員が、小型携帯無線機で、他の隊員たちに移動する事を、指示する。


 特戦群第1中隊第1小隊に所属する隊員が2名ずつに別れて、製油所警備部隊の宿舎前に配置につく。


 隊員たちが手榴弾ポーチからM26破片手榴弾と、MK3攻撃手榴弾を取り出し、安全ピン等を抜いて、一斉に宿舎内に投擲する。


 手榴弾の炸裂と同時に宿舎のドアを開けて、M4A1による連発射撃を行う。


 兵士たちは、就寝中に突然、手榴弾が炸裂し、同僚がその犠牲となっただけでは無く、出入口から自動小銃を武装した迷彩服を着た兵士たちから銃撃を受け、たちまち絶命する。


 中には、窓から脱出した兵士もいたが、配置に着いた狙撃手たちから狙撃され、逃げる事ができず、そのまま絶命した。


「フロッグより、指揮所。製油所の警備態勢は、無力化した」


 大崎が、大型携帯無線機で、本部に報告する。


「了解。引き続き、製油所の所定ポイントを押さえたまま、待機せよ。連合空挺部隊が、空挺降下を開始する。大日本帝国陸軍南方攻略軍挺進集団第1挺進団が、製油所を確保する。彼らの到着を、援護せよ」


 大崎は、空を見上げる。


 月明かりに照らされた状態で、微かに夜の闇の空を飛行する、連合輸送機部隊を確認できた。


 グリーンベレーの部隊が、連合空挺部隊の降下地点誘導を担当している。


 誘導信号による誘導で、連合輸送機部隊は、降下ポイント上空に接近する。


「恐らく・・・今頃、シンガポール、スマトラ島、バンカ島等の航空基地から、迎撃戦闘機部隊が、離陸しているだろう」


 イギリス軍やアメリカ軍等が設置した、パレンバン付近の固定式レーダー施設は、電子戦機による電子妨害と、対レーダーミサイルによる攻撃で無力化している。


 シンガポールは、シンガポールで、マレー半島を南進する、新世界連合軍連合支援軍陸軍のタイ王国陸軍、大日本帝国陸軍南方攻略軍水陸両用作戦集団からの南進に、対応しなければならない。


 さらにマレー半島には南方攻略軍から1個歩兵師団が投入され、攻勢を強めている。


 とても、こちらに増援部隊や上空援護の迎撃戦闘機は、回せないだろう。





 菊水総隊航空自衛隊第1輸送航空団第1輸送飛行群第411飛行隊は、第1空挺団第1普通科大隊と、第2普通科大隊760人を搭乗させた、C-130H群と特科大隊1個中隊、施設中隊、通信中隊等から1個小隊が装備や資材、普通科部隊が運用する車輌、重火器等を積み込んだC-2(同機の部隊は第412飛行隊)である。


 第1輸送飛行群に所属する輸送機の空中給油を行うため、KC-130Hが随行している。


「機長。降下ポイントまで、10分です」


 先導機を操縦する副操縦士が、報告する。


「了解」


 機長は短く返答し、各機に連絡した。


 先導機は、第411飛行隊C-130H部隊の隊長機であり、機長は、飛行隊長も兼務している。


 だが・・・降下ポイント付近まで接近した時、猛烈な対空砲による攻撃を受けた。


「何だ!?」


 先導機を操縦する機長が、予想もしていない強力な対空砲火に、驚いた。


「これ程の対空砲が、配備されている報告は、ありません!」


「連合輸送機部隊に告ぐ!パレンバン守備隊の高射部隊に、ドイツ第3帝国国防軍の88ミリ自走高射砲が、配備されていたそうだ。各機、間隔を空けて、作戦を遂行せよ!」


 自衛隊、朱蒙軍、新世界連合軍連合空軍等の航空部隊を指揮する早期警戒管制機から、緊急連絡を受けた。


「ドイツ国防軍が、東南アジアに到着するのは、予定では、ずっと先だったはずでは!?」


 副操縦士が、対空砲火で機体が激しく揺れるのを制御しながら、叫ぶ。


「そんな事、俺が知るか!!連中に聞け!!」


 機長は、対空砲火をすり抜けながら、降下ポイント上空に接近する。


 連合海軍艦隊総軍第3艦隊第4空母戦闘群や、連合支援軍海軍大連艦隊が、高射砲や飛行場等の空爆を行い、大日本帝国空軍の爆撃機や、海軍聯合艦隊第2航空艦隊第2航空戦隊空母[翔鶴]、[瑞鶴]の2隻を基幹とする艦隊からも、艦載機による航空攻撃を行い、制空権の確保は、万全のはずだった。


(・・・やられた後に、新たなる高射部隊が現れたのか・・・)


 機長としては、それ以上の予想はできなかった。


 それに、今はそれどころでは無い。


「各機へ、怯まず、そのまま輸送任務を遂行せよ!上空には、連合空軍のE-8が展開している。対空砲火の威力は高いが、数は少ない。すぐに駆逐される」


 先導機の機長は、隊長として各機に告げた。


 彼の言った通り、対地版の早期警戒管制機であるE-8B[ジョイントスターズ]が展開しており、対地レーダーで高射砲の発射位置や移動式の自走高射砲の位置を特定すると、攻撃部隊に正確な位置情報を転送し、航空攻撃を行わせた。


 援護機として連合空軍からカナダ空軍のCF-18A[ホーネット]と、シンガポール空軍のF-15SGが、対地兵装で展開しているため、正確な位置情報がわかれば、正確無比の航空攻撃が可能である。


 むろん、無人攻撃機RQ-1[プレデター]からも、ヘルファイア・ミサイルやスマート爆弾による航空攻撃が実施されている。


 だが、それでも、対空砲火は絶える事は無かった。


「ある程度は・・・予想されていたとは言え・・・88ミリ対航空機砲とは・・・」


 ドイツ第3帝国国防軍が、陸海空軍で運用する多用途砲である88ミリ対航空機砲は、第2次世界大戦初期から戦場の主力として、ヨーロッパ戦線で猛威を振るった。


 大戦初期では、88ミリ対航空機砲の対空目標への有効射程は、7500メートル程度であったが、報告では、改良が重ねられ、対空目標への有効射程は、1万メートルまで延長された。


威力も格段に向上し、ドイツ第3帝国本国及びヨーロッパでの重要な防衛拠点である、ポーランド、スペイン、イタリアに配備されている事は、防衛駐在官(1佐叉は2佐)からの報告を受けている。





 連合空挺部隊を搭乗させた戦術輸送機のパイロットたちが、対空砲火の中を奮戦している頃、兵員室にいる空挺隊員たちは、降下開始の合図を、待っていた。


 彼らにとっては、1秒が1時間に感じられる長い時間だ。


「降下5分前!降下準備!」


 先任指揮官が叫ぶ。


 C-130Hに搭乗する第1空挺団の普通科隊員たちが、降下準備にとりかかる。


 対空砲火を受けながら、他の輸送機からも落下傘降下が開始されている。


 中には、対空砲弾が被弾する機もあった。


「降下!!降下!!」


 合図により、第1空挺団の普通科部隊が、落下傘降下を開始する。





 第1空挺団第1普通科大隊第3中隊に所属するこう野弘彌(のひろや)2等陸尉は、落下傘降下で地面に着地した。


 降下前、彼が搭乗するC-130Hは、被弾し、コントロール不能になった一式戦術輸送機と接触し、墜落しつつあるC-130Hから脱出するように落下傘降下した。


 第1空挺団予備隊員を管理している空挺教育隊に所属していたが、作戦開始直前に第1普通科大隊第3中隊係幹部の1人がデング熱に感染したため、部隊を離れた。欠員者が出た事により、神野が補充幹部として配属された。


 神野は、装備を確認する。


「くそぉぉぉ!!」


 装備品の、ほとんどを紛失していた。


 89式5.56ミリ小銃折曲式銃床、空挺用背嚢を降下時に紛失した。


 神野が現在、無事に所持しているのは、水筒、医療キット、雑嚢、コンバットナイフ、9ミリ機関拳銃のみである。


 9ミリ機関拳銃の予備弾倉は、防弾チョッキ3型の弾倉入れに入っている、分だけである。


「まったく、こんな戦場のど真ん中で、装備を紛失させるとは・・・最悪だ」


 自衛隊では・・・装備を紛失させる事は、許されない。


 恐怖の始末書地獄・・・


 その光景を想像して、神野は怯えた。


 しかし・・・


「まあ、最も、こんな熱帯で、敵の庭のような場所だ。始末書・・・では、済まないな」


 始末書が書けるという事は、自分が無事に生きて帰れたという証明である。


 神野としては、始末書に怯えていた時の自分が、どんなに平和ボケだったか理解した。


 もしも、この状態で味方部隊と合流できず、熱帯地域で遭難すれば、脱水症状等の病で命は無い。


 敵部隊と遭遇しても、運が良ければ捕虜、悪ければ死だ。


 その時、近くから物音がした。


「誰だ!?」


 神野は、9ミリ機関拳銃を構えた。


「待て!友軍だ!!」


 神野の目の前に、5人の迷彩服を着た兵士たちが、姿を現した。


 いや、2人は第1空挺団の隊員だ。


「朱蒙軍統合特殊作戦軍第21空輸特殊作戦旅団第23大隊第1中隊第2小隊長の、路相奉(ノサンテ)中尉だ」


 彼は、官姓名を名乗りながら、K2の銃口を下げた。


「菊水総隊陸上自衛隊第1空挺団第1普通科大隊第3中隊本部の、神野弘彌2等陸尉だ」


 神野も、9ミリ機関拳銃の銃口を下げた。


「良かった。俺だけ孤立したと、思ったよ」


「お互い様だ。こいつらも別の部隊だ。こっちの第1空挺団の隊員たちは、途中で合流した」


 聞けば、彼らは搭乗していた機が、対空砲火で被弾叉は被弾した友軍機との空中衝突回避で、降下地点から大きくそれた状態で、自分たちを空挺降下させてしまったそうだ。


「空から、地上に見た時、墜落した輸送機が確認できた。遠くは無いと思うが、運が良ければ、墜落機に使える通信機が、あるかもしれない」


 神野は、落下傘で降下中の事を思い出しながら、告げた。


「なるほど、しかし、誰が通信機を使う?通信兵科の者でなければ、使えない可能性がある」


「それなら、自分が使えます」


 非装備の隊員が、手を挙げた。


「自分は、第1空挺団第1普通科大隊中隊付の通信科隊員です。使える通信機があれば、通信は可能です」


 どうやら彼も、落下傘降下時に個人装備のほとんどを、紛失したようだ。


 神野や路以下、まともに個人携行装備を持っているのは、1人だけである。


 他は、拳銃や手榴弾だけである。


「・・・敵地で友軍に出会えたのは幸運だが・・・前途多難だな・・・」


 自分たちの装備を確認して、神野は少し暗い気持ちになる。


「なあに、最悪、貴官の国のアクションゲームと、同じ手段を取る。という手もあるぞ・・・『現地で調達』だ。あのゲームは、最高だ!!」


 路が、明るく戯けた口調で、語った。


 それに、神野も乗った。


「・・・え!?マジ?俺も、あのゲームのファンなんだ!子供の頃、親父が、あのゲームにメチャクチャはまってて、何度もリプレイするのを見て、俺も、やってみたら・・・すっかり、はまっちまった。やっぱり1が最高だな」


「・・・俺は3が良い」


 本来なら、こんな状況下で話す話題ではない。


 しかし、敵地で孤立。味方は5人。


 この窮地を脱し、本隊と合流するには、冷静な判断と行動が必要。


 そう、神野は思った。


「確かに・・・俺たちの戦場を考えれば、1の知識は参考にならないなぁ」


「そうだろうな。ジャングルは、身を隠す場所も多いが、逆に見つかりやすい」


「しかも敵は、人間だけでは無く、動物や昆虫も敵だ」


「だな。しかし、元来、動物も昆虫も平和主義者だ。俺たちが敵では無い事を理解させ、敵兵が住処を荒らす外敵と認識させれば、俺たちの味方になる」


「・・・すみません。サバイバルをする気満々にしか聞こえないのですが・・・」


 短い会話だったが、5人の内に漂う空気が、少し変わった。

 

「よし!5人全員、欠ける事無く、本隊と合流する!」


「「「了解!!」」」


 神野の言葉に、全員が声を上げる。

 マレーの虎 第2章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますがご了承ください。

 来週はお盆休み頂きたく、思います。

 次回の投稿は8月21日を予定しています。

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