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碧血の海 序章 シーマン・リクルートの独語

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 目に映るのは、海と空の青。


 いつもと変わらない風景のはずだった。


 だが、何かが違う。そして、彼はため息をついた。





 彼。マーティ・シモンズ2等水兵は、あの時ハルゼー率いる第2空母戦隊所属の駆逐艦に配属されていた。


「エンタープライズ」の撃沈予告を受け、マーティは他の水兵と同様に、水上警戒を行っていた。


 あの警告は、誰も本気にしていなかった。


「あれは、何だったんだ・・・」


 思わずつぶやいて、慌てて周囲を見回した。誰もいない。


 ほっとしてため息をついた。


 現在、彼らの所属する艦隊はハワイからアメリカ本土に向けて航行している軍民からなる輸送船団と合流し、その護衛をしている。


 マーティの知っている事は、ハワイが日本軍に占領された事ぐらいである。


 末端の兵士でしかない彼には詳しい事は知らされていない。部隊には箝口令が敷かれ、誰も何も語らない。


 彼は、数時間前の事を思い出していた。


 士官室に呼び出され、査問まがいの質問を受けた。





「シモンズ2等水兵、君の見た事を正直に語ってもらえるかな」


 駆逐艦艦長の隣に座っている、[エンタープライズ]に乗艦していた、何とかという参謀(名前は聞いたが忘れた)が、人形のような表情で口を開いた。


「サー、突然海面からロケットのようなものが飛び出てきて、それが海面スレスレを飛行し、この駆逐艦のすぐ真横を通り抜けて行きました・・・そして・・・そして、それが突然、[エンタープライズ]のすぐ近くで、上空に飛び上がり・・・直上から・・・」


 自分の目で見たはずなのに、信じられなかった。


 あのロケットは、まるで意思があるかのように、[エンタープライズ]目がけて飛翔していった。


「ふむ、海面から・・・見間違いではないのかね?」


 人形が、感情のこもらない声で、聞き返してきた。


「見間違いではありません!!」


 思わず大声で叫んでいた。


「あっ、も・・・申し訳ありません」


「すまない、意地悪な質問だった。しかし、確認のために必要だった、理解してほしい」


 参謀は、特に不快な表情を浮かべる事なく、淡々と語った。


「君の、証言は参考になった。しかし、この事は君の上官や同僚に話さないように。では、行ってよろしい」


 それで、マーティは解放された。


 彼自身も聞きたい事は山のようにあったのだが・・・





「おい、水兵」


 横柄な態度と声で、1人の男が声をかけてきた。


 身なりから、ハワイから避難してきた民間人だろう。輸送艦に乗り切れなかった人々も、かなりの数がいたはずだから、生き残った巡洋艦や駆逐艦等にも乗艦しているはずだ。


「お前らのせいで、俺たちは極東の猿どもに何もかも奪われたのだぞ、どうしてくれる」


 ヤケ酒でも飲んでいたのか、かなり酔っぱらっている。


 本来、アメリカ軍の軍規は厳格で、軍の艦艇に乗艦する場合は、たとえ民間人であっても、アルコールの類の持ち込みは禁止されている。今回の場合はあまりにも急だったため、そこまで、厳しくチェックできなかったのだろう。


「・・・・・・」


「大体、俺たちの税金で飯を食っているクセに、猿どもにやられて尻尾を巻いて逃げるとは・・・情けない」


「・・・・・・」


 自分たちだって、悔しいのだ。目前でみすみす旗艦を撃沈されたのだから・・・


「黙ってないで、何か言ってみろ!栄光あるアメリカ海軍はどこに消えた?猿にやられた、腰抜けどもばかりじゃないか」


 男は喚き続けている。


「そのくらいに、していただこう」


 静かだが、冷たい声が響く。


「何だとぉ?」


 いつの間にか、副長の大尉が立っていた。


「貴方の言葉をそのまま返せば、アメリカ人は猿にも劣る国民という事になるが、そう理解してよろしいか?」


「・・・・・・!!」


 酒で赤くなっていた男の顔が怒りでさらに赤くなる。


「命がけで、国民を守るために戦った兵士たちを侮辱するのが、栄光あるアメリカ国民とは考えたくないですね。かの日本人は戦地へ赴く兵士たちを支えるために、どんな苦難も耐え忍ぶと、聞いています。軍を支える国民が、一兵士に八つ当たりとは・・・それこそ情けない」


「ぐぐぐ・・・」


「・・・確かに、我々は日本軍にしてやられた。だが、この屈辱は必ず晴らす。必ず、ハワイは奪還する。そのためには、貴方がたの協力が必要なのです。どうか、理解していただきたい」


 男はまだ何か言いたそうだったが、不承不承立ち去っていった。


「・・・彼らの気持ちもわからないでもない、確かにハワイを守れなかったのは、我々の責任だ、君も嫌な思いをするかもしれないが、耐えてくれ。我々が、ハワイを取り戻すその時まで・・・」


「サー、イエス、サー!」





 しかし、この時彼らはまだ知らなかった。


[オペレーション・テンペスト]はまだ終わっていないという事を。


 太平洋側での、アメリカ軍の動きを封じるために、ハワイ占領作戦と同時に行われた、日本軍(自衛隊)のアメリカ本土に展開された、作戦がある事に・・・

 碧血の海 序章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は9月14日を予定しています。

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