表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/454

時間跳躍 第9章 宣戦布告

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

 聯合艦隊に組み込まれた海自の2個護衛隊群と潜水隊群は練度向上と帝国海軍との共同作戦を行えるようにするため、もっぱら大規模な演習を行った。


 演習は昼夜を問わず行われた。


 猛訓練に慣れている帝国海軍はいつもの事だと、思っていたようだが、自衛隊側はそういう訳にはいかなかった。


「旧海軍軍人はよく、こんなハードな訓練ができるな・・・月月火水なんとやらとは、よく言ったものだ・・・」


 海曹の1人が、疲れ切った顔でぼやいた。


 いくら大規模な演習だと言っても、ミサイルに限りがあるため、実弾演習は行わなかった。すべてシミュレーションで行った。


 それでもこの時代の海軍軍人たちを驚かせるには十分であった。


 特にレーダーの性能がよく、100キロ以上先の目標を捕捉している。これなら、敵航空機の索敵を回避できるだけではなく、敵の攻撃編隊を早期に発見し、迎撃できる。山本以下聯合艦隊の参謀たちがイージス護衛艦に乗艦し、その能力を視察した。


「なんという事か、これでは戦い方そのものが変わるではないか」


 宇垣が[あかぎ]のレーダースクリーンを見ながら、つぶやいた。


 これは戦史でもわかるようにアメリカ海軍が導入したレーダーにより、日本軍の夜襲はほとんどうまくいく事はなかった。レーダーで即時発見ができるため、対策する事ができる。


 護衛隊群の主な任務は対空と対潜、索敵である。


 そして、共同作戦を行うにあたり、問題になる点を次々と洗い出した。


 まず、1番の問題は相互の通信をどうするか。だったが、これはすぐに解決した。


 この時代に来たのは自衛官たちだけではない。日本政府は、民間の会社から技術者を集め、この時代に送り込んでいたのだ。


 彼らは、専用の通信機、レーダー(電探)を開発し、日本海軍に提供した。


 そして、それだけではない。


 陸軍の、新兵器に関しては現代では旧式になり廃棄された装備を提供した。61式戦車、60式装甲車等かなりの旧式ではあるが、この時代においてはかなり活躍すると期待されている。


 技術者たちの技術提供により、この時代の技術力は向上し、ドイツにも負けず劣らずのレベルまでになった。


 小銃に関しても、技術者から提供があった。


 64式7.62ミリ小銃が提供された。


 この提供により、帝国の技術者たちは、それを徹底的に分析し、独自の改良を加えた。もともと原形があったため、開発はスムーズに進み、半年後くらいには陸海軍に配備できるまでになった。


 日本も大抵の分野では諸外国をリードしている。


 だから、未来からの技術提供により、日本の軍事力は格段に進歩した。





 戦艦[長門]の会議室で山本以下その幕僚、第1航空艦隊司令長官南雲とその幕僚、第1護衛隊群司令の内村とその幕僚が詰めていた。


 堅苦しさや、ぎこちなさはすでになく、普通に打ち解けて会話ができる。長い期間、行動を共にしていたので、すでにお互いの事を理解し合っている。特に第1護衛隊群と聯合艦隊の幕僚たちとは打ち解けている。内村のランクは少将に相当する。


 会議室には石垣、霧之、坂下の3人の姿もある。しかし、彼らは作戦に口出しする事はできない。記録、調整、助言をするだけの立場である。


 最初は聯合艦隊の幕僚と内村たちは、あまり上手く行っているとは言えなかった。


 なにしろ80年の時を隔てていきなり向かい合ったのである。当然、考えかたも違うし、女性の軍人というのは、彼らから見ればあり得ない存在だった。


 まあ、女性の衛生兵とかいうのなら、100歩譲って納得もできるが、戦闘艦の艦長や先任参謀となると、頭を抱える者が続出したほどだ。


 当の女性2人は、そんな逆風など全く気にせず自分の仕事をこなし、少しずつではあるにせよ、周囲に能力を認めさせていった。


「空母4隻、艦載機296機を載せた大攻撃隊は択捉島単冠湾に集結し、菊水総隊の第1護衛隊群の護衛のもと、太平洋を東進し、その後ハワイに向かって南進します」


 黒島が指揮棒で海図を指しながら、作戦の概要を説明した。


 ここまでの説明は戦史通りのものである。


「第1航空艦隊と第1護衛隊群が出撃してから、1日後、陸軍と陸自を乗せた輸送船団と第1艦隊が出撃します」


 黒島は出席者たちを見回した。


「ただし、ワシントンで行われている日米交渉がもし、うまくいった場合、ただちに作戦を中止、帰投してもらいます」


 黒島の言葉に第1航空艦隊の参謀たちが騒いだ。


「戦わずして、帰れというのか!?」


「部下たちが納得する訳がない」


「お待ち下さい」


 決して大きくはないが、よく通る声が響く。


「日米交渉が成立する。それは、わが日本がアメリカに対し有利になった事を意味するのではありませんか?白人優位主義を覆すのに、力では無く、外交力で勝ち取る。これ以上の勝ち方はないでしょう」


 村主であった。


 彼女の存在は、神薙と並んで山本直属の参謀たちからは、かなり高い評価を受けている。


 しかし、第1航空艦隊では必ずしもそうではない。


「どれほど、頭が良くとも所詮は女。いざ、戦争となれば及び腰になるというわけか」


 第1航空艦隊の参謀の1人が吐き捨てるようにつぶやく。


「及び腰で結構。小さな自尊心を満足させて、大局を見誤り銃後の守るべき婦女子を地獄へ突き落すような、能無しになるよりはるかにマシです」


 石垣は、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。村主の言う事は正しい、しかし、もう少しオブラートに包んだ言い方というのがあるだろう。


 1度、霧之から聞かれた事がある。村主と神薙どちらがコワいか?である。


 石垣には答えられなかった。


「もちろん、村主さんに決まっているでしょう」


 軽くウインクして、霧之はそう答えた。


 今、納得した。


 ただ、参謀たちは言われっぱなしではない。


「貴官は、我々を能無しと言うのか!?」


「身をもって国家に殉じる覚悟の帝国軍人の誇りを愚弄するのか!!」


「やめんか!!」


 山本の怒号が響く。


「国家に殉じる覚悟があるなら、国家のために、戦わずに引くというのも然り。それすら解らぬというのなら、今すぐその制服を脱げ!!」


 参謀たちが押し黙る。


「日米交渉が失敗し、開戦になった場合でも、絶対に民間人の居住区に攻撃を加えてはならん。アメリカ人もイギリス人も肌の色こそ違えども、我々と同じ人間。断じて鬼畜などでは無い!忘れるな!!」


 山本がそう言うと、椅子に腰掛けた。


「黒島君。続けてくれたまえ」


「はい」


 黒島が説明を再開した。


「まず、第1次攻撃は菊水総隊の戦闘機(F-15J改)、戦闘攻撃機(F―2改、A-10)が行います。真珠湾に停泊する太平洋艦隊、航空基地を叩きます。第1次攻撃が終了したと同時に空母4隻から発艦した第2次攻撃隊は陸軍基地等の小規模な軍事施設を叩きます」


「菊水部隊が先陣を切るのか?」


 南雲が質問する。


「はい。第1航空艦隊は第2次攻撃から参加します」


「しかし、得体の知れない者たちに任せて大丈夫なのか?彼らの能力がどこまであるのか未知数なのだぞ」


 南雲の言葉に第1航空艦隊の参謀たちがうなずいた。


「そこは心配しなくていい。彼らはやってくれる」


 山本が自信のある口調で言った。


 参謀たちが顔を見合わせる。


 その表情は、その根拠はなんなのか、聞きたいようだ。


 山本は苦笑を浮かべた。


「俺の勘だ。それじゃあ駄目か?」


 山本の言葉に参謀たちは再び顔を見合わせた。





「何だと!!?」


 ホワイトハウスに怒号が響き渡った。


 声の主は、フランクリン・ルーズベルト。第32代アメリカ合衆国大統領である。


「ハルノートを受け入れただと!奴ら気は確かか!?」


「は・・・はい。事実、すでに満州からの撤退を完了し、中国政府と講和と平和条約締結の交渉を進めているとの情報が、入っています」


 予想外の出来事に、彼は血走った眼を側近に向けた。


「奴らが、これを受け入れる訳がない。自暴自棄になって戦争を仕掛けて来る筈だと言ったのは君たちだろう」


「た・・・確かにそうです・・・こんな、長い年月をかけて苦労して獲得した植民地をあっさりと放棄するなど・・・とち狂ったとしか・・・」


 側近は、額の汗をハンカチで拭いながら、しどろもどろに答える。


「ううむ~、ところで中国政府はどうなのだ?」


 ルーズベルトとしては、交渉を蹴って欲しいというのが本音だ。


「それが・・・満州が返還された事で、進んで交渉に応じているとか・・・」


「あの、強欲民族がぁ!!だから、黄色人種は信用ならんのだ!!」


 こめかみに、青筋を立てて怒鳴り続ける。


 これでは、アメリカが正義の名の元にファシズムと共産主義を打倒し、ヨーロッパ諸国に代わって、新秩序を打ち立てるというシナリオが根底から崩れてしまうではないか。


 イライラとした表情で、ルーズベルトは執務室の中を歩き回った。


「そうだ、満州国の傀儡皇帝はどうなる?」


「それについても、日本より、皇帝の安全面での保護を中国政府に求めているそうです。もし、難しいようなら、皇弟が明治天皇の親戚筋の女性の婿という立場ですので、皇室の一員として迎え入れる用意があると・・・」


「ぬぬぬぬ~」


「その上・・・」


 言いかけて、側近は口ごもった。これ以上、大統領の八つ当たりを受けるのは、精神衛生上よくない。


「何だ、途中で止めるな」


「・・・日本の情報で、満州に油田があると・・・伝えられたとか・・・」


「馬鹿な!?」


「いえ、確かな情報筋で、日本は満州鉄道の権益の全権放棄と、油田の開発の協力を和平の条件として申し出ているとか・・・中国政府はそれだけで有頂天になっているとか・・・」


「もういい・・・1人にしてくれ」


 これ以上、聞いていたら心臓がどうにかなってしまいそうだ。


 史実では、ルーズベルトは1945年4月11日に脳卒中で死去する事になるが、今の彼は知る由もない。





 それを、知っている者が悪意を持って死期が早まるように、仕向けているように見える。


 成人病というものは、ある日突然発症するものではない。遺伝もあるが、大抵は長年の不健康な生活習慣や過剰なストレスがじわじわと影響する。


「フッフッフッ・・・サスペンスドラマ・・・愛が殺意に変わる時、病死に仕組まれた巧妙な殺人計画・・・なんてね」


「何ですか、それ?」


 悪魔のような、不気味な微笑を浮かべた霧之に、全力で引きながら石垣が尋ねたのはここだけの話だ。


 それだけでなく。


「ねえ、呪いの藁人形って、効果あると思う?」


 真顔で聞かれた時には、本当に参った。


 この女性は、戦略より謀略に長けている。


 坂下以下3名は、あくまでもオブザーバーである。そのかわり、政府、軍を問わず要請を受ければ助言をする事ができる。


 霧之は主に大日本帝国の外交官に様々な助言をしているが、助言というより悪知恵を授けていると思える所が多々ある。


 それに加えて、日本政府から派遣されて来た人々。


 彼らは、外務省と内閣調査室出身の、外交官と諜報員が主となっている。


 それが、大日本帝国の交渉団に紛れて、渡米している。


 当時、アメリカは大日本帝国が駐米大使館に向けて打電している、暗号を解読していたので、それを逆用し偽情報を流したりと地味な嫌がらせをして、アメリカ側を混乱させたりしている。





 それはさておき、日本に突き付けられたハルノートだが、あまりにもあんまりな内容である。


 当時の世界情勢なら、仕方ないとはいえ、もしアメリカがそれを突き付けられたらどうであろう。


 例えるなら、アメリカ大陸の住民は、インディアン。ネイティブアメリカンなのだから、貴方がた白人は祖国であるヨーロッパに、その身1つで帰りなさい等と言うようなものである。


 そこまでいかなくとも、ワシントンが建国宣言をした時と同じ領土に戻せと言うようなものだ。


 当然、激怒するだろう。


 それは、イギリス、オランダとて同じである。対外戦争を続けて、国民の血を流し苦労して手に入れたアジアの植民地を、無条件で放棄せよと言われて「はい」と言う者はいない。


 個人レベルならこんな自分にできない事を、他人に強要する無理を言う人間は袋叩きにされるだろうが、国家間ならそれがまかり通ってしまうのが世の常だ。


「結局、どこの世界も同じ事の繰り返し・・・つまらんな」


 ダニエル、ザムエル両人に言わせれば、1言で終わってしまう。


 彼らは期待している。つまらない世界の記録を変えてくれる存在に・・・





 その、ルーズベルトの血圧を更に上昇させる事態が起こった。


 1941年6月22日、突如ドイツがソ連に侵攻を開始したのだ。


 ただでさえ、欧州はヒトラー率いるナチス・ドイツが破竹の勢いで勢力を拡大している。


 アメリカは同盟国のイギリスに対し、物資を大量に送り、援助をしているが、ヨーロッパ戦線へのアメリカ軍の参戦の要請が悲鳴混じりで来ているが、アメリカ国民は反戦気運が強い。


いかに大統領といえども、国民の声を無視はできない。


何しろ、ルーズベルトは大統領選の選挙公約で、大戦には介入しないと明言して大統領に選ばれたのだ。それを違える訳にはいかない。


 その国民感情に火をつけるための、日独伊三国同盟だったのだが、日本があっさり破棄したため不発に終わってしまった。


 東アジアの紛争も、日本の満州撤退によって、中国に手の平を返されてしまった。


 すでに両国は平和条約と不可侵条約を締結したそうだ。


 その上、ソ連とも条約締結に動いているらしい。


 さらに不気味なのが、日本海軍の動きだ。


 ほとんど、実戦さながらの演習をしょっちゅう行っているらしい。


 それを、遠巻きに見た民間の輸送船からの報告で、奇妙な巡洋艦と駆逐艦を見かけたそうだ。


 その巡洋艦と駆逐艦はただ、その演習海域をウロウロするだけで1度も砲撃をしないという。それに兵装も極めて貧弱で、とても軍艦には見えないという。


 その件は、取るに足りないと切り捨てた。


 太平洋艦隊が有るかぎり何の憂いもない。


 和平交渉に関してはノラリクラリと躱して、経済制裁を続けているものの、中国が裏切って、制裁を解除したため、あまり意味がなくなってしまった。


 そんな折、日本から強硬な最後通牒ともとれる通告が突きつけられた。





「我々、大日本帝国は貴国、アメリカ合衆国に対し、最大限の誠意と努力をもって対応していたが、貴国の不誠実な対応に甚だ、失望を感じる。最早これ以上の交渉に発展を望まぬと判断し、最後の手段を取るものとする。我が国は、すでに日独伊三国同盟の破棄と中国大陸からの撤退を完了し、朝鮮半島、台湾の独立も準備中であるが、これ以降の条件の履行は、米、英、蘭の以下の条件の履行をもって行うものとする



1、米、英、蘭の大日本帝国に対する、経済制裁の即時解除。

2、米、英、蘭のアジア方面の植民地からの即時全面撤退と、独立の容認。

3、上記三国との平和条約と不可侵条約の締結。





以上の条件の回答期限を日本時間1941年12月8日午前0時とし、回答無き場合、全アジア解放の名のもとに、米、英、蘭に対し宣戦を布告するものとする」





 この通告は、各国政府に直接通達したのは当然として、ラジオを通じてアジア全土に放送するという、周到さであった。


 ルーズベルトの怒りが頂点に達したのは言うまでもない。


 悪逆な覇権国家に対し宣戦を布告し、正義を示すのは、アメリカのはずだった。


 さらに、神経を逆なでするような、勧告が届いた。


 曰く、ハワイ諸島の全島民は、現地時間1941年12月7日までに、アメリカ本土に避難するように勧告する、である。





 1941年11月26日、聯合艦隊は択捉島単冠湾を出港した。


 目的地はハワイ、パールハーバーである。

 時間跳躍 第9章をお読みいただき、ありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は8月3日までを予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ