12
それから。
ルイはよく遊びに来るようになった。
最初は月に一度。
次は二度。
気付けば当たり前のように屋敷へ現れる。
私は知っている。
これは好感度イベントである。
幼少期交流。
親密度上昇。
乙女ゲームのお約束だ。
間違いない。
そんなある日。
私は重大な問題を発見した。
「ルイ」
「何でしょう」
私は固まった。
「今よ」
「はい?」
「今の」
「今のですか?」
私は机を叩いた。
「それ!」
ルイが瞬きをする。
「何でしょう」
「だからそれ!」
父様が嫌な予感を察知した顔をした。
私は立ち上がる。
そして高らかに宣言した。
「友達なんだから敬語禁止です!」
応接室が静まり返った。
父様が目を閉じた。
母様が顔を覆った。
護衛が固まった。
ルイだけが首を傾げる。
「友達なんですか?」
「友達よ」
私は即答した。
「幼馴染だし」
まだ出会って数ヶ月である。
「そうなんだ」
「そうなの」
私は大きく頷く。
「だから敬語やめましょう」
ルイは少し考えた。
本当に少しだけ。
そして。
「分かった」
全員が固まった。
私も固まった。
「え?」
「やめればいいんだよね」
「そんな簡単に?」
「うん」
私は感動した。
なんて柔軟な攻略対象だろう。
やはり当たり枠。
「じゃあ言ってみて」
「何を?」
「リリア」
「うん!」
「今日も元気だね」
私は勢いよく立ち上がった。
「完璧よ!!」
護衛が後ろでよろめいた。
父様はもう何も言わなかった。
ただ遠い目をしていた。
その日。
リリアは友達認定した相手に敬語をやめさせた。
そして父様は。
娘の行動に慣れ始めている自分に気付いてしまった。




